2019年激変する世界と日本の針路
この講義シリーズは第2話まで
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
イギリスの合意なき離脱は、世界経済危機をもたらしうる
2019年激変する世界と日本の針路(6)BREXITの行方
政治と経済
島田晴雄(慶應義塾大学名誉教授/テンミニッツ・アカデミー副座長)
アイルランド問題を解決するためメイ首相は案を出したが、それは非現実的なものであった。メイ内閣の中から次々と閣僚が辞める事態となっているが、メイ首相の意思は固い。このまま「合意なき離脱」になれば、致命的な世界経済危機になる可能性がある、と島田氏は警告する。(2019年1月28日開催島田塾会長講演「激変する世界と日本の針路」より、全14話中第6話)
時間:7分38秒
収録日:2019年1月28日
追加日:2019年5月15日
カテゴリー:
≪全文≫

●チェッカーズ案は非現実的


 結局EUはしばらくの間、北アイルランドをEUに残しておけば国境がないのと同じだと言いました。北アイルランドをEUに残すということは、イギリスの一部がEUに残ってしまうということだから、何のためのBREXITかということになります。BREXITはイギリスの主権をEUに対して取り戻すという理由で進めています。ですから、離脱強硬派といわれる人にとってはふざけるなということで、その提案は否定されました。

 結局、テリーザ・メイ首相は困ってしまい、2018年の7月にチェッカーズ(Chequers)という自身の別荘でレポートを書いて、それを内閣の人たちに見せて説明しました。一応皆、許可したのですが、これはチェッカーズ案(Chequers Plan)というものです。

 何かというと、モノの取引については全部自由、サービスは禁止というものです。サービスはイギリスが強いので、イギリスの自由にやらせてほしい、ということです。アイルランドはどうするかというと、超ITでやるというのです。それは要するに、人にもモノにもチップを埋め込むということでしょうか。そうすると、行先が分かるという夢物語のような話ですが、EUの人たちの失笑を買うどころか、彼らの怒りを買ってしまったそうです。

 オーストリアのザルツブルクで準備会をやった時、メイ氏は一日遅れでやって来たこともあり、厳しい批判を浴びることになりました。

 そうしたら、メイ氏は怒ってしまいました。彼女は気が強いことに、「あなたたちは自分が書いたこのレポートをきちんと見ず、しかも代替案もなしに、こんなものは役に立たず40日たったら出直して来いとは何と失礼な。私はこれまで、あなたたちと何百日も付き合ってきたけれど、たった一つの言葉が私の頭の中にあります。それは“リスペクト”という言葉です。私は“リスペクト”を持ってEUの代表に付き合ってきました。あなたたちも私に“リスペクト”を持ちなさい」と言って帰ったのです。

 こういう話がフィナンシャルタイムズを読んでいると、全部書いてあります。


●メイ内閣の閣僚が辞任し計画を練り直す


 そして、これでは終わりませんでした。それを出した途端にとんでもないことが起きたのです。閣内が一応理解したと言っていたはずなのに、2日たった夜中に、デイビッド・デイビス氏という離脱交渉担当者が辞めると言ったのです。彼は2016年のメイ内閣...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「政治と経済」でまず見るべき講義シリーズ
中国共産党と人権問題(1)中国共産党の思惑と歴史的背景
深刻化する中国の人権問題…中国共産党の思惑と人権の本質
橋爪大三郎
岸信介と日本の戦前・戦後(1)毀誉褒貶相半ばする政治家
「昭和の妖怪」岸信介の知られざる実像を検証する
井上正也
日本の財政政策の効果を評価する(1)「高齢化」による効果の低下
高齢化で財政政策の有効性が低下…財政乗数に与える影響
宮本弘曉
外交とは何か~不戦不敗の要諦を問う(1)著書『外交とは何か』に込めた思い
外交とは何か…いかに軍事・内政と連動し国益を最大化するか
小原雅博
トランプ政権と「一寸先は闇」の国際秩序(1)国際秩序の転換点と既存秩序の崩壊
経済秩序や普遍的価値観を破壊し、軍事力行使も辞さぬ米国
佐橋亮
マルクス入門と資本主義の未来(1)マルクスとはどんな人物なのか
マルクスを理解するための4つの重要ポイント
橋爪大三郎

人気の講義ランキングTOP10
ショパンの音楽とポーランド(1)ショパンの生涯
ショパン…ピアノのことを知り尽くした作曲家の波乱の人生
江崎昌子
習近平中国の真実…米中関係・台湾問題(6)習近平のレガシー
国力がピークアウトする中国…習近平のレガシーとは?
垂秀夫
クーデターの条件~台湾を事例に考える(5)世直しクーデターとその成功条件
歴史のif…2.26事件はなぜ成功しなかったのか
上杉勇司
学力喪失の危機~言語習得と理解の本質(1)数が理解できない子どもたち
なぜ算数が苦手な子どもが多いのか?学力喪失の真相に迫る
今井むつみ
編集部ラジオ2025(24)「理解する」とはどういうこと?
学力喪失と「人間の理解」の謎…今井むつみ先生に聞く
テンミニッツ・アカデミー編集部
チームパフォーマンスを高める心理的安全性(1)心理的安全性が注目される理由
なぜ今「心理的安全性」なのか、注目を集める背景に迫る
青島未佳
いま夏目漱石の前期三部作を読む(1)夏目漱石を読み直す意味
メンタルが苦しくなったら?…今、夏目漱石を読み直す意味
與那覇潤
大谷翔平の育て方・育ち方(1)花巻東高校までの歩み
大谷翔平の育ち方…「自分を高めてゆく考え方」の秘密とは
桑原晃弥
プラトン『ソクラテスの弁明』を読む(1)真実の創作
プラトンの『ソクラテスの弁明』は謎多き作品
納富信留
プラトン『ポリテイア(国家)』を読む(1)史上最大の問題作
全米TOP10大学の必読書1位が『ポリテイア(国家)』
納富信留