●メルケル首相は2017年、総選挙で敗れ、大連立を組んだ
次はドイツについてです。島田村塾では2017年、2018年とドイツに行ったのですが、2017年当時、アンゲラ・メルケル首相は「移民を受け入れる」と言って、非常に人気を高まっていました。われわれがドイツに行った頃は(2017年)4月でしたが、メルケル神話というのか、メルケル氏が総選挙に出たら絶対勝つといった雰囲気があり、実際にそうだろうなと思っていました。
ところが、(2017年)9月に行われた総選挙でどういうことになったかというと、政権党のCDU(ドイツキリスト教民主同盟)とCSU(キリスト教社会同盟、バイエルン州のみでCDUの姉妹政党)が大惨敗。AfD(Alternative für Deutschland、ドイツのための選択肢)という政党があるのですが、この党は右翼で移民反対ということで、大きく票を伸ばしました。CDU、CSUは与党で第1党だったのですが、両方合わせると得票率が33パーセントしかないという状態でした。
得票率33パーセントでは政権をつくれません。20パーセントで第2党のSPD(社会民主党)という政党があるのですが、ここと組めば政権をつくれるため、「組んでください」とお願いしました。過去12年間ずっと組んでいたからです。そうしたら、オーラフ・ショルツという当時の党首に拒否されました。SPDの人は皆、嫌がっているのです。なぜなら、メルケル氏と組んで良いことが一つもなかったからです。
メルケル氏はヨーロッパの代表のような人です。ドイツの寵児で、神話にもなりそうな人です。そんなメルケル氏が選挙に勝ったら、いいところは全部メルケル氏が持っていってしまう。それでは応援したSPDは出るところがない。ということで、これまでずっと損していた。今度組んだらSPDは消えてしまう、という恐怖感があり、断ったのです。
仕方がないので、メルケル氏は、自由民主党という右翼の党と、緑の党(Die Grüne)という環境問題について唱えている左翼の党と交渉しましたが、合うわけがありません。失敗して帰ってきました。
そうしたら、さすがに世界中から、「ドイツは決められないのか。立派な国のはずなのに何をやっているのか」と散々言われました。そこで、SPDのショルツ党首は12月になって、軟化してもいいが条件があるといったことを言い出しました。メルケル氏に全部持っていかれると、自分たちは存在感が全然出せな...