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プーチン大統領が極東において平和条約を模索する理由

2019年激変する世界と日本の針路(12)ロシアと北方領土問題

島田晴雄
公立大学法人首都大学東京理事長/10MTVオピニオン副座長
情報・テキスト
ロシアではプーチン政権の長期化が進んでいる。経済成長を掲げているが問題も多い。そこでプーチン大統領は極東における平和条約を模索し始め、北方領土問題も交渉の動きを見せている。ただし、それは日本にとって決して喜ばしい内容ではないと島田晴雄氏は指摘する。(2019年1月28日開催島田塾会長講演「激変する世界と日本の針路」より、全14話中第12話)
時間:06:19
収録日:2019/01/28
追加日:2019/05/21
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≪全文≫

●プーチン大統領の長期政権化


 次はロシアについてです。ロシアも、島田村塾が2018年7月末に訪ねましたが、なかなかいい国でした。ロシアの大統領はウラジーミル・プーチン氏です。プーチン氏は、2001年にロシアの大統領になって8年間2期勤めました。大統領は憲法の約束で2期しかできません。

 ですからドミートリー・メドベージェフ氏に大統領をやるように言って、自分は首相になって、その時に憲法を変えました。4年でなくて6年になりました。そしてプーチン氏は、メドベージェフ氏の任期が来た時に、大統領選に初めて出るのだと言って出ました。

 これにはさすがに、中央アジアの国々が怒ってさまざまなデモがありました。国内でも相当のデモがありました。そうしたら、ヒラリー・クリントン氏が、あのデモは民主化のために正当だ、と国際社会ではっきり言っているのです。

 プーチン氏は、今でもずっとこれを根に持っているようです。だから、2017年の米大統領選挙に介在したのは(トランプ氏のためではありません)。トランプ氏などプーチン氏から見れば物の数ではないと思います。

 だけれども、ヒラリー氏は憎らしいようです。これは、ロシアに行ってさまざまな話を聞いたので分かったのです。しかし、日本ではそういった報道はされません。

 そして今度(2018~)は第四期政権でで、1期が6年ですから、2024年までやることになります。プーチン大統領は第一、第二期政権の時(2000-2008)は非常に高成長でした。その後、メドベージェフ大統領(2008-2012)がなんとか頑張ってくれていましたが、第三期政権(2012-2018)には調子が悪かった。なぜかというと、クリミア併合したので経済政策があったので、マイナス成長になってしまったのです。なんとか復活したといっても、1パーセント成長です。


●ロシアは社会保障費が低く財政赤字が少ない


 第四期に何をやるのかというと、とんでもないことを言っています。世界の5大経済大国の一つになる、と。イギリスや韓国を追い抜いて、人口増加、国民生活水準向上、快適な生活環境などを実現する、と。このようなことは前から言われているのですが、できる可能性は低いでしょう。

 どうするのでしょうか。その上で、年金を――社会保障、寄付減らすために――年金支給年齢を上げると言ったのです。さすがに、これには一般の国民もこたえたのでしょう、大きなデモが起きました。そしてプーチン政権もとうとう妥協しました。支持率が80から60パーセントに下がったので、少し心配になったのです。

 ちなみに、ロシアは財政赤字が本当に少ないのです。日本は、こんなに豊かでいい国なのに、財政赤字が世界最悪レベルです。なぜなら社会保障が原因なのです。非常に日本は怠け者天国です。要するに、国民皆保険というものがよくないのではないでしょうか。ほとんどの国は皆保険ではなく、民間保険が多いのです。。

 アメリカでは4,000万人に保険がありません。それが普通という国なのです。日本は全員保険があるから、いざとなると完璧な医療を受けられるのです。

 ロシアもそうではなく、もとから低いのです。ですから赤字にならないという国です。


●ロシアは平和条約を模索している


 その国が2018年の9月にプーチン氏が習近平氏と安倍晋三氏といる中で、いきなり1956年の共同宣言に基づいて平和条約をやろう、と言い出したのです。条件もなく平和条約交渉して、その結果は56年の日ソ共同宣言を尊重しながらそのうち何かやる、ということになりました。

 安倍氏は驚きました。なぜかというと、日本政府は、北方領土の4島が返ってきて初めて平和条約交渉に入るということを、この70年間言い続けているからです。プーチン氏は逆の立場です。

 安倍氏の父の安倍晋太郎氏は、戦前生まれで戦争中に育っていますから、この問題を何とか日ソ間で進め解決したいと言って命がけで取り組んだのですが、残念ながら亡くなってしまったのです。そのことをプーチン氏に安倍さんが話すわけです。「そういう思いが、私はあるのだ」と。北方領土問題は、安倍家の家訓なのでしょう。


●北方領土交渉~二島返還も主権の返還ではない~


 何か起きるかというと、プーチン氏は平和条約を結びたいのです。なぜでしょうか。今、ロシアの経済は惨憺たる状況だからです。また、中国は力が強くて脅威です。よって、北方領土の開発と東方の安全保障がとても重要なのです。ですから、あそこに日本の企業をたくさん誘致し、共同開発などと話していますが、おそらく全て日本が出させられるのでしょう。共同宣言では、それらがクリアになれば歯舞群島と色丹島の返還ということですが、主権は譲らない(つまり、主権の返還ではない)ということです。

 したがって河野太郎外相とセルゲイ・ラブロフ外相...
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