●第二期習近平政権では権力が強化された
今度は中国に行きましょう。中国では2017年10月に、中国共産党第十九回全国代表大会がありました。これはものすごく重要です。5年に1度開かれるのですがここで一番重要なことを決めるのです。その時に習近平氏が3時間半の演説をしたというので皆、驚きました。
ここで言ったのは、第2期習近平政権が始まるということです。彼はある長期計画を持っています。2021年は共産党成立100周年なのです。上海で100年ほど前にできました。それから、2049年は蒋介石を追い出して新しい中国ができて100年です。この2020年から2050年までの間に、強烈な世界最強の経済軍事国家をつくる、と言っているわけです。
そして、自分のことを「核心」というのですが、これはいわゆる普通の国家主席ではなく、それを超越した人ということです。ですから任期がありません。今までは法律ではないのですが国家主席は10年と決まっていたのです。これは鄧小平が毛沢東政治の反省から、そのようにしようと言って決めて、ずっと踏襲してきたのです。習近平氏はその取り決めを取り消しにしてしまいました。それを2018年の春の全国人民代表大会で行ったということなのです。
どうも終身国家主席になりたいのではないか。なぜかというと、今回の内閣の閣僚7人は中央政治局員といいますが、全員60歳以上なのです。10年先を考えて70歳は定年ですから、50代の人を入れておかないといけないのですが、入れていないのです。
丹羽宇一郎さんという中国大使をやられた大変な方がいます。この方は、そうではなく、中国の状況があまりにもひどくて心配なので、辞めるというとレームダック(死に体)になってしまうため、そうしないためだ、と言います。
ですから、おそらく10年たったら辞めるだろうと言います。ただ、辞める前の日まで、辞めないということです。それから50代や40代の人を突然ピックアップすることもできるわけで、それはいいのではないかと見ています。そういうところがあるかもしれません。
●国内重視政策から「一帯一路」政策へ
ただ今回の習近平政権がはっきりさせたことがあります。鄧小平は、「韜光養晦(とうこうようかい)」といいますが、「爪を隠して力を蓄える」という、「国際関係においてずっと自分を低くして同盟国もつくらず、ただ国内だけを次第に良くしようという考え方でやってきました。そのおかげで、30年間で中国は10パーセント成長したのです。
かつて鄧小平がトヨタ自動車に行った時に「私はお宅の工場から学ぼうとして来ました」と言ったというのです。もう態度が違います。新幹線に乗りました。そして、「新幹線、これが資本主義の成果か」と思って、それが頭に焼き付いて国を開こうとしました。それゆえの開放改革政策です。そして沿岸が豊かになれば、次第に内陸も豊かになるだろうという理論です。大変な人です。そして、ほんとにそうなって豊かになりました。
ただ習近平氏はその考えをガラッと変えました。「韜光養晦」ではなく、なんと「新型大国関係」ということを言いました。バラク・オバマ氏に、これでやろうと言ったのです。太平洋は中国とアメリカで仕切れる、と。
そうこうしているうちに「一帯一路」を始めたわけです。一帯ですが、インド洋、アラビア海、地中海まで2つのルート、ということで、関係するところにある港を買い取るということだそうです。
もうひとつ、一路は道路です。これは、中国、中央アジア、中東、欧州まで、2ルートで、複々線の列車を通してしまおうというのです。30カ国が関係しますが、これらの国々にお金を貸すなどさまざまなことをするために、AIIB(Asian Infrastructure Investment Bank、アジアインフラ投資銀行)をつくったのです。
そして南シナ海の人工島に次々と基地をつくっています。もともとあそこには中国の主権があるのだと主張しています。オランダのハーグ仲裁裁判所から、国際法上の根拠がないと断定されたのですが、中国は反論しています。アメリカは、航行の自由といって巡洋艦を派遣して一触即発の状態です。
●国内では情報統制も厳しくなっている
ということで、習近平氏になって一気に変わりました。なぜこのようなことになったのでしょうか。国内を見ると、習近平氏になってから国内のチェックがとても厳しくなってきたようです。
習近平氏は腐敗をとても気にしているのです。というのは、虎や蛇だけではなく、蚊とか蠅、要するに、末端まで怠けたり、嘘ついたり、盗んだりというのが横行しているらしいのです。ですから、それをチェックするために社会を全部変えなければいけないと言います。習近平氏の目が笑っていないですよね。非常に真剣です。レームダックになってはいけないと思っているよう...