激動のインド太平洋・米中の思惑を読む
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
習近平外交、あやまてり…中国はあまりにも踏み込みすぎた
激動のインド太平洋・米中の思惑を読む(2)QUAD首脳会合が示したものは何か
政治と経済
中西輝政(京都大学名誉教授/歴史学者/国際政治学者)
日米首脳会談の後に行われたQUAD首脳会合。ここでカギとなったのは「インドをいかに引き込むか」であった。それは、今後の対中国戦略を見据えるうえで非常に重要であったと中西輝政氏は言う。その成果はどうだったのか。そしてこれに対抗した中国外交の問題点とは?(全2話中2話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツTV編集長)
時間:18分16秒
収録日:2022年5月30日
追加日:2022年7月8日
カテゴリー:
≪全文≫

●「インドの参加」が持つ重要な意味


―― そのような日米首脳会談の後を受けて、インドとオーストラリアの首脳が加わったQUADの会合ですが、今までのQUADの積み重ねの上で、今回はどのような意味があったのでしょうか。

中西 今回のQUADは、何といってもバイデン大統領のアジア歴訪の過程で開かれています。QUADはもともと、インドをいかに引き込むかということが非常に重要でした。そして対中国については、軍事を含まないソフトな形で牽制・抑止する。そういった一つの多国間の枠組みなのです。

 その中で今回は首脳会談ですから、インドからはモディ首相が参加しました。オーストラリアは政権交代をして、労働党のアルバニージー新首相が出席した。しかし、特に重要なのは、やはりインドです。

 インドという国は、決してアメリカの同盟国ではありません。日本もオーストラリアもアメリカの同盟国ですから、本来はこの3カ国でやればいい。あるいは韓国を入れて、4カ国でやってもいい。ところが、インドを入れているのは、やはり21世紀に中国を凌駕するかもしれない超大国だからです。このインドを引き入れているというところが、QUADという枠組みの最大のポイントなのです。

 そして今回、先ほど言ったウクライナの戦争をめぐっては、ロシアをいかに孤立させるか。徹底的にロシアを追い詰め、弱体化させ、できればプーチン政権を倒して、ロシアを再び民主化の方向に向かわせる。これがアメリカの壮大な目標なのです。

 その中でインドは、ロシアの側に立つか、アメリカ・NATOの側に立つか、はっきりとしない。しかし、対中国ということでは敵対関係にある。このインドの帰趨が非常に重要なのです。そういった意味で、インドのQUAD参加が大変重要な意味を持ってくるので、バイデン大統領は日本におけるQUAD開催を大変重視して歴訪に来たのです。


●アメリカによるIPEF戦略の成功


中西 その中で今回、特に注目されたのは、「IPEF(インド太平洋経済枠組み」で、主として経済をめぐる多国間の枠組みです。TPP(環太平洋パートナーシップ協定)には加盟していないアメリカがリーダーシップを再び発揮し、中国を加盟させないアジアにおける経済枠組みをつくりました。ここにインドを加盟させたIPEF(インド太平洋の経済枠組み)は、大変重要な意味を持ってくるのです。

 このIPEFという枠組みを立ち上げる...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「政治と経済」でまず見るべき講義シリーズ
アンチ・グローバリズムの行方を読む(1)世界情勢の転換
強まるアンチ・グローバリズムの動きをどう見ればいいか
岡本行夫
トランプ政権と「一寸先は闇」の国際秩序(1)国際秩序の転換点と既存秩序の崩壊
経済秩序や普遍的価値観を破壊し、軍事力行使も辞さぬ米国
佐橋亮
クライン『ショック・ドクトリン』の真実(1)ショック・ドクトリンとは何か
100分de名著!?『ショック・ドクトリン』驚愕の印象操作
柿埜真吾
独立と在野を支える中間団体(1)「中間団体」とは何か
なぜ中間団体が重要か…家族も企業も学校も自治会も政党も
片山杜秀
「新しい資本主義」の本質と課題(1)新自由主義と『21世紀の資本』
新自由主義からの時代背景から「新しい資本主義」を問う
柳川範之
自民党総裁選~その真の意味と今後の展望
「マスコミ報道」では見えない自民党総裁選の深い意味
曽根泰教

人気の講義ランキングTOP10
数学と音楽の不思議な関係(4)STEAM教育でつくる喜びを全ての人に
世界で最もクリエイティブな国は? STEAM教育が広がる理由
中島さち子
外交とは何か~不戦不敗の要諦を問う(3)「内政と外交」と持つべき外交感覚
国民に求められる外交感覚とは?陸奥宗光の臥薪嘗胆の意味
小原雅博
トランプ・ドクトリンと米国第一主義外交(1)リヤド演説とトランプ・ドクトリン
トランプ・ドクトリンの衝撃――民主主義からの大転換へ
東秀敏
続・日本人の「所得の謎」徹底分析(1)各国の財政と国民負担
日本と各国の比較…税負担は低いが社会保障の負担は高い
養田功一郎
経験学習を促すリーダーシップ(2)経験から学ぶ力
米長邦雄のアンラーニング、弟子の弟子になってV字成長
松尾睦
海底の仕組みと地球のメカニズム(1)海底の生まれるところ
地球上の火山活動の8割を占める「中央海嶺」とは何か
沖野郷子
戦前日本の「未完のファシズム」と現代(8)満州事変と世界大恐慌
「100年戦争」と考えて戦争に突入した日本の現実
片山杜秀
「集権と分権」から考える日本の核心(5)島国という地理的条件と高い森林率
各々の地でそれぞれ勝手に…森林率が高い島国・日本の特徴
片山杜秀
50代からの親の介護~その課題と準備(1)突然やってくる介護の問題
「親の介護」の問題…優しさだけでは続かない
太田差惠子
弥生人の実態~研究結果が明かす生活と文化(1)弥生時代はいつ始まったのか
なぜ弥生時代の始まりが600年も改まった?定説改訂の背景
藤尾慎一郎