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習近平外交、あやまてり…中国はあまりにも踏み込みすぎた

激動のインド太平洋・米中の思惑を読む(2)QUAD首脳会合が示したものは何か

中西輝政
京都大学名誉教授/歴史学者/国際政治学者
概要・テキスト
日米首脳会談の後に行われたQUAD首脳会合。ここでカギとなったのは「インドをいかに引き込むか」であった。それは、今後の対中国戦略を見据えるうえで非常に重要であったと中西輝政氏は言う。その成果はどうだったのか。そしてこれに対抗した中国外交の問題点とは?(全2話中2話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツTV編集長)
時間:18:16
収録日:2022/05/30
追加日:2022/07/08
カテゴリー:
≪全文≫

●「インドの参加」が持つ重要な意味


―― そのような日米首脳会談の後を受けて、インドとオーストラリアの首脳が加わったQUADの会合ですが、今までのQUADの積み重ねの上で、今回はどのような意味があったのでしょうか。

中西 今回のQUADは、何といってもバイデン大統領のアジア歴訪の過程で開かれています。QUADはもともと、インドをいかに引き込むかということが非常に重要でした。そして対中国については、軍事を含まないソフトな形で牽制・抑止する。そういった一つの多国間の枠組みなのです。

 その中で今回は首脳会談ですから、インドからはモディ首相が参加しました。オーストラリアは政権交代をして、労働党のアルバニージー新首相が出席した。しかし、特に重要なのは、やはりインドです。

 インドという国は、決してアメリカの同盟国ではありません。日本もオーストラリアもアメリカの同盟国ですから、本来はこの3カ国でやればいい。あるいは韓国を入れて、4カ国でやってもいい。ところが、インドを入れているのは、やはり21世紀に中国を凌駕するかもしれない超大国だからです。このインドを引き入れているというところが、QUADという枠組みの最大のポイントなのです。

 そして今回、先ほど言ったウクライナの戦争をめぐっては、ロシアをいかに孤立させるか。徹底的にロシアを追い詰め、弱体化させ、できればプーチン政権を倒して、ロシアを再び民主化の方向に向かわせる。これがアメリカの壮大な目標なのです。

 その中でインドは、ロシアの側に立つか、アメリカ・NATOの側に立つか、はっきりとしない。しかし、対中国ということでは敵対関係にある。このインドの帰趨が非常に重要なのです。そういった意味で、インドのQUAD参加が大変重要な意味を持ってくるので、バイデン大統領は日本におけるQUAD開催を大変重視して歴訪に来たのです。


●アメリカによるIPEF戦略の成功


中西 その中で今回、特に注目されたのは、「IPEF(インド太平洋経済枠組み」で、主として経済をめぐる多国間の枠組みです。TPP(環太平洋パートナーシップ協定)には加盟していないアメリカがリーダーシップを再び発揮し、中国を加盟させないアジアにおける経済枠組みをつくりました。ここにインドを加盟させたIPEF(インド太平洋の経済枠組み)は、大変重要な意味を持ってくるのです。

 このIPEFという枠組みを立ち上げる...
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