激動のインド太平洋・米中の思惑を読む
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
バイデン大統領の「台湾を防衛する」発言の真相とは?
激動のインド太平洋・米中の思惑を読む(1)日米首脳会談の重大ポイント
中西輝政(京都大学名誉教授/歴史学者/国際政治学者)
2022年5月にバイデン米大統領のアジア歴訪があったが、その中で特に重要だったのが日米首脳会談とQUAD首脳会合の2つである。日米首脳会談後の記者会見では、バイデン大統領の「台湾を防衛する」という趣旨のメッセージも飛び出した。この発言の真意は何だったのか。日米首脳会談の意義を読み解く。(全2話中1話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツTV編集長)
時間:16分34秒
収録日:2022年5月30日
追加日:2022年7月1日
カテゴリー:
≪全文≫

●注目すべきは「中国の動向」


―― 皆さま、こんにちは。本日は中西輝政先生に、今年5月に行なわれました日米首脳会談およびQUAD(日米豪印)首脳会談をどう見るべきかについて、お話をいただきたいと思います。中西先生、どうぞよろしくお願いをいたします。

中西 よろしくお願いいたします。今日は、5月23、24両日に東京で開かれました日米首脳会談および、その翌日のQUAD首脳会合――4者ですので「QUAD首脳会合」と日本では呼んでいるのですが――という、バイデン大統領のアジア歴訪の中で行われた2つの重要な会談・会合について、その意義を考えてみたいと思います。

 まず、バイデン政権のアメリカですが、やはり今一番の大きな関心、あるいはエネルギーを最大に向けている問題は、いうまでもなくウクライナにおけるロシアの侵攻です。これを受けて、NATOの盟主としてのアメリカがどう対処するか。ウクライナはNATOの加盟国ではありませんが、第二次大戦後に行われた戦争の中でもこれ以上ない侵略戦争としての側面を露骨に示しているプーチン・ロシアの対ウクライナ戦争に、どう対処するか。これがアメリカの最大の関心であり、またNATO諸国を始めとする世界の、今一番の焦眉の国際政治テーマになっています。

 このことを、まず背景に置いたうえで、バイデン大統領のアジア歴訪の焦点は、それでもなおアメリカ外交は中長期的に、あるいは短期・中期・長期のいずれのレベルにおいても、依然として「中国にどう対処するか」。この中国という世紀の大テーマに、アメリカ外交がいささかもその焦点を外すことなく対処していくのだと示すことが、アジア歴訪の最大の目的であったと言って過言ではないと思います。

―― やはり、ウクライナよりも中国ということになるわけですね。

中西 もちろんそうです。このことを日本は絶対に忘れてはなりません。日夜、ウクライナにおける戦争のニュースで日本のメディアも持ちきりですが、この戦争の帰趨も結局、何が決定するかといえば、中国の動向です。中国がロシアを果たしてどこまで支援し、助けるか。それに対して、アメリカを中心とした西側諸国が、中国に対してどこまで厳しい牽制、制裁、あるいは対中対決の姿勢を取るか。ここか、第三次世界大戦に発展するか否かという大問題も含めて、大きな焦点になっているのです。


●習近平政権に見られた「ブレ」


―― ではま...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「政治と経済」でまず見るべき講義シリーズ
習近平―その政治の「核心」とは何か?(1)習近平政権の特徴
習近平への権力集中…習近平思想と中国の夢と強国強軍
小原雅博
デジタル全体主義を哲学的に考える(1)デジタル全体主義とは何か
20世紀型の全体主義とは違う現代の「デジタル全体主義」
中島隆博
お金の回し方…日本の死蔵マネー活用法(1)銀行がお金を生む仕組み
信用創造・預金創造とは?社会でお金が流通する仕組み
養田功一郎
墨子に学ぶ「防衛」の神髄(1)非攻と兼愛
『墨子』に記された「優れた国家防衛のためのヒント」
田口佳史
日本人が知らないアメリカ政治のしくみ(1)アメリカの大統領権限
権限の少ないアメリカ大統領は政治をどう動かしているのか
曽根泰教
習近平中国の真実…米中関係・台湾問題(1)習近平の歴史的特徴とは?
一強独裁=1人独裁の光と影…「強い中国」への動機と限界
垂秀夫

人気の講義ランキングTOP10
平和の追求~哲学者たちの構想(6)EU批判とアメリカの現状
理想を具現化した国連やEUへの批判がなぜ高まっているのか
川出良枝
「アメリカの教会」でわかる米国の本質(1)アメリカはそもそも分断社会
「キリスト教は知らない」ではアメリカ市民はつとまらない
橋爪大三郎
戦争とディール~米露外交とロシア・ウクライナ戦争の行方
「武器商人」となったアメリカ…ディール至上主義は失敗!?
東秀敏
逆境に対峙する哲学(1)日常性が「破れ」て思考が始まる
逆境に対峙する哲学カフェ…西洋哲学×東洋哲学で問う矛盾
津崎良典
「重要思考」で考え、伝え、聴き、議論する(1)「重要思考」のエッセンス
重要思考とは?「一瞬で大切なことを伝える技術」を学ぶ
三谷宏治
組織心理学とは何か~『武器としての組織心理学』と概論
なぜ組織に「心理学」が必要か?多様化と個の時代の処方箋
山浦一保
プロジェクトマネジメントの基本(1)国際標準とプロジェクトの定義
プロジェクトマネジメントとは?国際標準から考える特性
大塚有希子
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み
なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み
今井むつみ
豊臣兄弟~秀吉と秀長の実像に迫る(1)史実としての豊臣兄弟と秀長の役割
豊臣兄弟の謎…明らかになった秀吉政権での秀長の役割
黒田基樹
渡部昇一の「わが体験的キリスト教論」(1)古き良きキリスト教社会
古き良きヨーロッパのキリスト教社会が克明にわかる名著
渡部玄一