戦争と平和の国際政治
この講義シリーズの第1話
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
台湾問題を左右する中国の不安定化、矛盾噴出、国家の危機
戦争と平和の国際政治(2)台湾危機と中国の合理性
小原雅博(東京大学名誉教授)
ロシアのウクライナ侵攻は、日本にとってより身近な台湾危機とも無関係ではない。これからますますの緊張が予想される中台関係を、われわれはどのように注視すればいいのか。2024年に総統選挙を控える台湾の政局と、その台湾を取り巻く中国・アメリカの動きを整理し、習近平国家主席の考える合理性を読み解く必要を論じる。(全4話中第2話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツTV編集長)
時間:14分08秒
収録日:2022年12月1日
追加日:2023年1月19日
カテゴリー:
≪全文≫

●ウクライナ侵攻の動向を中国がどう見ているかを考える


―― 翻って考えた場合に、われわれの身近な東アジアがどうなるかという問題もあります。特に最近、台湾危機などもかなり危険なのではないかという情報も出たりしております。このウクライナの侵攻があった後で、台湾問題(台湾海峡の問題)がどうなったかという部分についてはどういう変化が起きたと思われますか。

小原 世界的にいろいろな影響があったと思うのです。皆さんもご承知の通り、この戦争を止められなかったと。なぜ止められなかったのかと。これは戦争の前から想定はされていたことなのですけれども、国連が機能しなかったのです。国連安保理ではロシアは常任理事国ですから、拒否権を使えば決議は通らないわけです。もちろん総会で決議は通りましたけれども、総会には強制力はないわけです。

 要するに、国連が動かない。ではどうするのだと、例えば経済制裁をします。しかし、その経済制裁というのは、今、世界の相互依存が高まってくる中で、諸刃の剣のようなことになるわけです。

 つまり、ヨーロッパがロシアからのエネルギーの輸入を止めてしまうことによって、その収入が戦争に使われることを防ごうとします。しかし、その結果、エネルギー危機がヨーロッパに起こるわけです。よく、両者の相互依存はwin-winだから戦争を防げるというのですけども、一旦こういう状態になるとlose-loseになるわけです。

 他方でロシアの場合には、中国やインド(との関係がポイント)です。特にインドもQUADの一員なのですけれども、どうしても国益というものを皆、考えます。成熟していない国際社会の中では、例えばインドは安い石油が入るのであれば、それを買いましょうとなる。もともと伝統的には、インドとロシアは非常に深い関係があります。

 このように、ヨーロッパではエネルギー危機に陥ってでも(ロシアの)制裁をしないといけない、(ロシアからの)エネルギーの輸入をできる限り止めるということをやっている、その他方で、国やインド、あるいはそれ以外の途上国では、(石油が)安くなったからどんどん買おうということになってきています。よって、経済制裁もなかなか当初の効果は上がらないのです。

 片やアメリカは、ウクライナに対して、NATOに入っていないわけですから軍の派遣はしないということを前々から言っていたわけです。こ...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「政治と経済」でまず見るべき講義シリーズ
習近平―その政治の「核心」とは何か?(1)習近平政権の特徴
習近平への権力集中…習近平思想と中国の夢と強国強軍
小原雅博
外交とは何か~不戦不敗の要諦を問う(1)著書『外交とは何か』に込めた思い
外交とは何か…いかに軍事・内政と連動し国益を最大化するか
小原雅博
お金の回し方…日本の死蔵マネー活用法(1)銀行がお金を生む仕組み
信用創造・預金創造とは?社会でお金が流通する仕組み
養田功一郎
台湾有事を考える(1)中国の核心的利益と太平洋覇権構想
習近平政権の野望とそのカギを握る台湾の地理的条件
島田晴雄
ポスト国連と憲法9条・安保(1)国連の構造的問題
核保有する国連常任理事国は、むしろ安心して戦争できる
橋爪大三郎
財政問題の本質を考える(1)「国の借金」の歴史と内訳
いつから日本は慢性的な借金依存の財政体質になったのか
岡本薫明

人気の講義ランキングTOP10
平和の追求~哲学者たちの構想(1)強力な世界政府?ホッブズの思想
平和の実現を哲学的に追求する…どんな平和でもいいのか?
川出良枝
プロジェクトマネジメントの基本(3)プロジェクトのすすめ方
PDCAサイクルを回すための5つのプロセスとそのすすめ方
大塚有希子
エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(1)サイバー・フィジカル融合と心身一如
なぜ空海が現代社会に重要か――新しい社会の創造のために
鎌田東二
葛飾北斎と応為~その生涯と作品(2)『富嶽三十六景』神奈川沖浪裏への道
『富嶽三十六景』神奈川沖浪裏のすごさ…波へのこだわり
堀口茉純
中国共産党と人権問題(1)中国共産党の思惑と歴史的背景
深刻化する中国の人権問題…中国共産党の思惑と人権の本質
橋爪大三郎
熟睡できる環境・習慣とは(3)睡眠にいい環境とお風呂の入り方
布団に入る何分前がいい?入眠しやすいお風呂の入り方
西野精治
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み
なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み
今井むつみ
定年後の人生を設計する(1)定年後の不安と「黄金の15年」
不安な定年後を人生の「黄金の15年」に変えるポイント
楠木新
内側から見たアメリカと日本(7)ジャパン・アズ・ナンバーワンの弊害
ジャパン・アズ・ナンバーワンで満足!?学ばない日本の弊害
島田晴雄
経験学習を促すリーダーシップ(3)成功の再現性と教え上手の指導法
教え上手の指導法に学ぶ!成功の再現性を高める4ステップ
松尾睦