戦争と平和の国際政治
この講義は登録不要無料視聴できます!
▶ 無料視聴する
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
国際政治の要諦は戦略とインテリジェンス
戦争と平和の国際政治(1)「合理性の罠」とインテリジェンス
小原雅博(東京大学名誉教授)
ウクライナ戦争や新型コロナウイルス感染症などにより、世界情勢は混迷を極めている。われわれはこの状況で、国際政治をどのように見ていけばいいのだろうか。そこには国内政治を理解するのとは異なる難しさがあるというが、まずはロシアのウクライナ侵攻を例にとり、国際政治を見る際に誰もが陥りがちな「合理性の罠」、そして国際政治のカギを握るインテリジェンスについて解説する。(全4話中第1話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツTV編集長)
時間:17分31秒
収録日:2022年12月1日
追加日:2023年1月12日
カテゴリー:
≪全文≫

●専門家さえも陥る「合理性の罠」


―― 本日は紀伊國屋書店(新宿本店)3階のアカデミック・ラウンジからのお届けということで、先生、この場所はどんなご印象ですか。

小原 素晴らしいですね。このアカデミック・ラウンジもそうなのですけれども、書店として本質的な魅力というのですか、そのようなものを感じる書店で、今日はこういう場所でお話ができるのを大変嬉しく思います。

―― 本当に知に囲まれた場所です。本日はこちらの『戦争と平和の国際政治』というご本についてお話を伺ってまいります。この本をもうお読みになった方も多くいらっしゃるかと思うのですけれども、私が最初に感じましたのは、現在起こっていることと国際政治の考えなり、議論なり、学問と政治ががっぷり四つになっていて、両面で理解ができるという大変有難い本だということです。限られた時間ですので、そのポイントを先生にお聞きしてまいりたいと思います。

 最初に私が印象深かったのは序章の部分です。当然、大きな問題というとロシアによるウクライナ侵攻ですけれども、思い起こすと、戦争が始まる前の段階ないし始まった直後の段階で、「専門家」と呼ばれる方が読み誤ったという非常に印象深いお話を書いておられます。

 例えば、先生、一番の読み誤りというと、まず戦争がそもそも起こるのかどうかというところですね。

小原 はい。私はロシアの専門家でもありませんし、軍事の専門家でも歴史家でもありません。ただ、外交の実務というものをやって、その後、理論を大学で勉強、研究してきたということもあって、そうした自分の経験だとか知識から、「これはどうしてそういうことになったのだろう」ということを考えてみたときに、序章にも書きましたが、一つは「合理性の罠」ということがあったのではないかということです。

 これは国際政治を勉強されている方には特にそうだと思うのですが、国内社会と国際社会は全く違うわけです。

 何が最も違うかというと、国内社会というのは中央政府があって、そのもとで一元化されたような「法の支配」というものがあるわけです。何か法に違反することがあると警察に捕まり、裁判を受けて、それなりの罰を受けるわけです。

 ところが、国際社会に今、国内社会にあるような中央政府がないのです。世界政府もありません。国際...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「政治と経済」でまず見るべき講義シリーズ
日本人が知らない自由主義の歴史~前編(1)そもそも「自由主義」とは何か
消極的自由と積極的自由?…なぜ自由主義がわかりづらいか
柿埜真吾
内側から見たアメリカと日本(1)ラストベルトをつくったのは誰か
日本でも中国でもない…ラストベルトをつくった張本人は?
島田晴雄
日本のエネルギー&デジタル戦略の未来像(1)電動化で起こる「カンブリア爆発」
日本のエネルギー政策を「デジタル戦略」で大転換しよう
岡本浩
ポスト国連と憲法9条・安保(1)国連の構造的問題
核保有する国連常任理事国は、むしろ安心して戦争できる
橋爪大三郎
戦争と暗殺~米国内戦の予兆と構造転換(1)内戦と組織動乱の構造
カーク暗殺事件、戦争省、ユダヤ問題…米国内戦構造が逆転
東秀敏
中国共産党と人権問題(1)中国共産党の思惑と歴史的背景
深刻化する中国の人権問題…中国共産党の思惑と人権の本質
橋爪大三郎

人気の講義ランキングTOP10
内側から見たアメリカと日本(1)ラストベルトをつくったのは誰か
日本でも中国でもない…ラストベルトをつくった張本人は?
島田晴雄
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(3)認知バイアスとの正しい向き合い方
知ってるつもり、過大評価…バイアス解決の鍵は「謙虚さ」
今井むつみ
「宇宙の創生」の仕組みと宇宙物理学の歴史(1)宇宙の階層構造
「宇宙の階層構造」誕生の謎に迫るのが宇宙物理学のテーマ
岡朋治
エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(1)サイバー・フィジカル融合と心身一如
なぜ空海が現代社会に重要か――新しい社会の創造のために
鎌田東二
歴史の探り方、活かし方(1)歴史小説と史料探索の基本
日本は素晴らしい歴史史料の宝庫…よい史料の見つけ方とは
中村彰彦
AIとデジタル時代の経営論(6)暗黙知と判断力
AIは「暗黙知・常識に基づく高度な判断」が不得意
一條和生
経験学習を促すリーダーシップ(1)経験学習の基本
成長を促す「3つの経験」とは?経験学習の基本を学ぶ
松尾睦
徳と仏教の人生論(2)和合の至りと正直
正直とは何か――絶対的存在との信頼関係の根幹にあるもの
田口佳史
編集部ラジオ2025(27)なぜ何回説明しても伝わらない?
なぜ伝わらない?理解の壁の正体を今井むつみ先生に学ぶ
テンミニッツ・アカデミー編集部
学力喪失の危機~言語習得と理解の本質(5)AIに記号接地は可能か
人間とAIの本質的な違いは?記号接地から迫る理解の本質
今井むつみ