●これから国際政治を学ぶうえで知っておくべき「3つの危機」
―― 先ほど申し上げたように、この本(『戦争と平和の国際政治』)の大きな特徴が、現実の問題と国際政治学をどうがっぷり四つに組ませて理解を深めていくのかというところだと思うのですが、先生がこの本をお書きになって、一番読者に伝えたかったことはどういうことになりますか。
小原 私はメッセージをいろいろなところに込めました。皆さんからすれば、答えが欲しいということかもしれませんが、国際政治というのは、みんなが納得するような答えはそうそうありません。普遍的な正義も普遍的な合理性もないわけです。したがって、私の答えもそんなに自信というものがあるというわけではないのですが、その答えに近づくためのヒント、あるいは座標軸のようなものを書いたつもりです。
普通、『戦争と平和の国際政治』というタイトルからすると、地政学であるとか、あるいは権力政治であるとか、そうしたことがすぐ頭に浮かぶと思うのですが、私がむしろこの本で皆さんに伝えたい最大のメッセージとして、「3つの危機」の関係をまずは知っていただきたかったということがあるわけです。
つまり『戦争と平和の国際政治』のタイトルからして、まずは「平和の危機」なのです。今ウクライナで起きていることや台湾海峡はどうなるのだ、北朝鮮の核開発はどうなるのだ、という平和の危機というものに、このあとの2つの危機が絡んできているというのが、これまでの危機とは違ってかなり深刻な危機だと私は認識しているわけです。
(次に)「グローバルな人類の危機」ですが、これはもう待ったなしです。気候変動とか、コロナはまさに今、起こっていることです。こういった人類共通の危機に対応しようとすれば、世界は一致協力しないといけない。ところが、その協力というものが平和の危機によってできない状況があるわけです。
ではバイデン大統領は習近平国家主席と右手で殴り合って左手で握手ができるのか、そんな芸当ができるのか、というのが今の米中関係なのです。バイデン氏はしょっちゅう、協力しないといけない分野はあるのだと言っているわけですが、本当にそれができるのかというと、習近平氏からすると、同じバスケットに入っており、そこはディー...