●視野狭窄に陥った習近平第3期政権指導部
さて、ここで皆さんと一緒に考えてみたいのは、常識的に考えれば、台湾の武力侵攻、武力制圧などというシナリオはあり得ないのですが、実際にあり得るのではないか、(しかも)それが早まる可能性があるのではないかということです。つまり、その可能性が少し出てきているように思います。
それはどういうことかということで、習近平氏の第3期政権指導部を作った時、そして彼らの背景について考えてみたいと思います。トップに政治局常務委員が7人いて、そのトップが習近平氏なのですが、その他に李強(リー・チャン)という首相、それから趙楽際(ジャオ・ルオ・ジー)、王滬寧(ワン・フー・ニン)、蔡奇(ツァイ・チー)、丁薛祥(ディン・シュエ・シァン)、李希(リー・シー)、の6人がいます。この人たちは一言で何だというと、習近平氏が地方の行政のトップをやっていた時に、いいやつだと見込んだ連中ですが、全て習近平様々、「習近平・命」のような人たちです。これまでは国際派とか開明派はずいぶん政権にいたのですが、全部これをお役御免にしました。
それから、中央軍事委員会というものがあります。これは「台湾シフト体制」といってもいいのですが、副主席の張又侠(チョウ・ヨウ・キョウ)という人は習近平氏の父親からの関係から、それから(同じく)副主席の何衛東(カ・エイ・トウ)という人は台湾の作戦に精通しています。ですから、非常に台湾シフトなのです。こういうものを見ていると、習近平指導部は、世界が見える人、開明派の人、先が見える人がほんどいなくて、一言でいえば視野狭窄症に陥っているのではないかと思うのです。
習近平氏は完全な独裁体制で、「習近平思想」を憲法の中に入れたわけですし、経済もこれまで地方経済を引っ張ってきたIT産業をほとんど叩き潰しているし、社会的には共同富裕とか言っていながらみんなを貧乏にするようなことをやっています。教育も完全に習近平思想になっているし、相当ひどいのです。
●中国経済を崩壊させたゼロコロナ政策
このところの1年くらいの間で中国経済は急速に悪くなっています。特にゼロコロナ政策が大失敗です。2020年春に新型コロナウイルスの感染抑制に成功し、それ以降、中国のワクチンが世界一だといって、それが信念になっているのです。ところが、オミクロン株が流行った時には効かないのです。しかし、外国製は一切拒否しています。
そうしたことを続けているので、実は中国の感染者数はあまり多くなく、抗体を保持している人は少ないのです。ですからワクチンが効かない。そうなると、感染者が見つかったら都市封鎖をするしかないので、上海はじめ大都市をかなり封鎖したため、経済活動がほとんど止まり、5.5パーセントの経済成長率を目標にしていたのですが、3パーセント強しか成長していないのです。これは史上空前のことです。
それから、不動産も国家規制を強化したため、経済が収縮しています。国有企業を大いに支援して、民間企業に厳しく当たっているので、経済は後退しています。アメリカは中国向けの半導体輸出禁止措置を非常に強くしています。中国のハイテクは依然としてアメリカの部品依存が多いので、それが大打撃になっているわけです。
習近平政権の不信がにわかに増幅してきているのは、第3期になってますます顕著になり、数カ月でそのようになってきました。ゼロコロナ政策に対する大衆と学生の抗議運動が(2022年)11月の末からありました。これは11月24日にウイグルの隔離施設で火災があり、その隔離施設があまりにもひどくて救出ができず、かなりの人が死にました。
これに対して、学生たちが追悼集会をやっているうちに、ワーッと人が集まってきて、清華大学など多くの大学でたくさんの人が集まり、学生たちは誰も言わないのに白い紙を掲げて抗議しました。その中には、「習近平打倒」「降りろ」などと声高に言ったり、書いたりする人たちがいました。こうした行為は初めてで、このようにはっきり言ったのは天安門事件の時でもなかった現象のようです。1週間後、普通なら厳罰に処するところでしょうが、誰が首謀者なのか全然分からないので、結局、政治局の幹部の集会において、ゼロコロナ政策を緩和しようということになったわけです。
●最盛期のうちに台湾統一へ、高まる非合理な決断の可能性
ゼロコロナ政策を緩和して人々がどっと街に出てきたのですが、数日したら、緩和しているのでPCR検査もしないし、誰が患者(感染者)か分かるはずもなく、ものすごい勢いで感染が急拡大しているというのが現状のようです。今後どうなるのか。中国は今、悲惨な混乱に陥っています。
このような中国の現状が明らかになっている中で、これを一気に打開するには何をしたら...