台湾有事を考える
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レガシー実現へ、習近平第3期政権の非合理な決断はあるか
台湾有事を考える(5)習近平第3期政権指導部の構成と背景
島田晴雄(慶應義塾大学名誉教授/テンミニッツ・アカデミー副座長)
第3期目に突入した習近平政権の特色は、何といってもこれまで以上に習近平氏の独裁制を強めたことだ。これまでは存在した国際派や開明派の人物もいなくなり、トップの顔色ばかりをうかがう政権指導部となった。それは中国経済を崩壊させたゼロコロナ政策にも現れ、ますます台湾統一へ向けてその歩調は早まっているように感じる。今回は新チャイナ・セブンの顔ぶれから見てみる。(全9話中第5話)
時間:7分20秒
収録日:2022年12月19日
追加日:2023年2月13日
カテゴリー:
≪全文≫

●視野狭窄に陥った習近平第3期政権指導部


 さて、ここで皆さんと一緒に考えてみたいのは、常識的に考えれば、台湾の武力侵攻、武力制圧などというシナリオはあり得ないのですが、実際にあり得るのではないか、(しかも)それが早まる可能性があるのではないかということです。つまり、その可能性が少し出てきているように思います。

 それはどういうことかということで、習近平氏の第3期政権指導部を作った時、そして彼らの背景について考えてみたいと思います。トップに政治局常務委員が7人いて、そのトップが習近平氏なのですが、その他に李強(リー・チャン)という首相、それから趙楽際(ジャオ・ルオ・ジー)、王滬寧(ワン・フー・ニン)、蔡奇(ツァイ・チー)、丁薛祥(ディン・シュエ・シァン)、李希(リー・シー)、の6人がいます。この人たちは一言で何だというと、習近平氏が地方の行政のトップをやっていた時に、いいやつだと見込んだ連中ですが、全て習近平様々、「習近平・命」のような人たちです。これまでは国際派とか開明派はずいぶん政権にいたのですが、全部これをお役御免にしました。

 それから、中央軍事委員会というものがあります。これは「台湾シフト体制」といってもいいのですが、副主席の張又侠(チョウ・ヨウ・キョウ)という人は習近平氏の父親からの関係から、それから(同じく)副主席の何衛東(カ・エイ・トウ)という人は台湾の作戦に精通しています。ですから、非常に台湾シフトなのです。こういうものを見ていると、習近平指導部は、世界が見える人、開明派の人、先が見える人がほんどいなくて、一言でいえば視野狭窄症に陥っているのではないかと思うのです。

 習近平氏は完全な独裁体制で、「習近平思想」を憲法の中に入れたわけですし、経済もこれまで地方経済を引っ張ってきたIT産業をほとんど叩き潰しているし、社会的には共同富裕とか言っていながらみんなを貧乏にするようなことをやっています。教育も完全に習近平思想になっているし、相当ひどいのです。


●中国経済を崩壊させたゼロコロナ政策


 このところの1年くらいの間で中国経済は急速に悪くなっています。特にゼロコロナ政策が大失敗です。2020年春に新型コロナウイルスの感染抑制に成功し、それ以降、中国のワクチンが世界一だといって、それが信念になっているのです。ところが、オミクロン株が流行った時...

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