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平和ボケの日本人に問いたい「自分の国を自分で守る」覚悟

台湾有事を考える(9)日本の未来への再出発のために

島田晴雄
慶應義塾大学名誉教授/テンミニッツTV副座長
情報・テキスト
日本にとって一番の大きな問題は平和ボケである。台湾有事についてさまざまな角度から考察してきたこのシリーズで最後に問いたいのは、「自分の国を自分で守る」覚悟があるかどうかということだ。可能性が高まる中国の武力侵攻だが、そのことに関する日本人の危機感、そのための意識は依然として低いままではないだろうか。日本の社会、そして経済の破綻を招くかもしれないこの重大な危機に立ち向かうべき、日本の課題について考え、未来への再出発の契機としたい。(全9話中第9話)
時間:13:32
収録日:2022/12/19
追加日:2023/02/27
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≪全文≫

●日本の経済を守り、防衛力を強化するために


 最後に総括をしたいと思います。1つは有事による日本経済の被害です。これについては、「日本の戦力が無力化する」「社会システムが崩壊、機能不全に陥る」「エネルギー、食料が途絶する」「国民被害は全て合わせると1000兆円を超える被害で、経済が破綻する可能性がある」というもので、このような被害を受ける可能性があります。これはよく念頭に置いておいたほうがいいと思います。

 そして防衛力の強化についてです。今度の新安全保障戦略の策定で議論し、いろいろなものが定められましたが、それには時間がかかります。例えば2023年に今回お話ししたようなこと(台湾有事)が起こると、日本の弱さ、脆弱さが一気に露呈することになります。ミサイル防衛については、軍事施設のみならず、電力供給システムや基幹インフラに攻撃を受けるわけですが、北朝鮮や中国は極超音速の変則軌道ミサイルを多用するので、日本の迎撃システムは全然役に立ちません。反撃力を持つことは非常に重要ですが、反撃力の中身は何かということについては、今回の安全保障戦略の策定ではまだ十分に議論されていません。

 このようなことは、議論されても報道に出せるようなものではないと思いますが、しかし重要なこととして、どの相手の何を攻撃するのかという焦点はしっかり確認しておかなければなりません。ちなみに中国は、甘粛省と新疆(シンチャン)ウイグル自治区の砂漠地帯に沖縄の嘉手納基地や航空自衛隊のAWACS(早期警戒管制機)の実物大の標的を設置して、何度もミサイル攻撃して訓練しています。

 ですから、新安全保障戦略では反撃力の中核となる長距離スタンドオフミサイルと極超音速ミサイルのことが盛り込まれていますが、開発に時間がかかるし、それまでトマホークというものがあるとしても、誰を、どういう能力を持った敵を、どのように反撃するのかということを確定しなくてはいけません。

 それから避難システムですが、日本はシェルターの整備がものすごく遅れています。全国に約10万の避難所があるといわれており、東京には約1万の避難所がありますが、地下を利用できるものは10分の1しかありません。これは身を守るシェルターではありません。たまたま身を隠せる場所があるだけの話で、平和が続くと信じてきた平和ボケの結果です。

 台湾はもう全島シェルターだらけです。しかも8000万人も収容できます。ウクライナは地下施設を十分使っています。日本だって地下鉄も地下施設も山ほどあるわけですから、しっかり使わなければいけません。そのようにしなければ、ミサイル攻撃を受けたときに膨大な人命が失われることになります。


●サイバー戦略に最も遅れた国、日本に必要なのは「サイバー要塞」


 それから、日本は平和ボケしていて議論が不必要に長かったのです。国会の議論も長かった。2004年、小泉純一郎総理の時に国際紛争があり、有事法制が制定されたわけですが、あの時はあれが精一杯だったと思います。しかし今回の問題で、南西諸島から住民を避難させるというときに飛行場がないとか、飛行機に乗ったとしても日本の本土のどこの飛行場に着陸させるのかなど、全部が優先的に(すべきことですが)、(現行の)有事法制ではその優先措置がまだ決められていないのです。

 ただ、危機に耐える能力というのは、努力すればできた面がいくつもあります。それは何かというと、1つはサイバーです。(今回のシミュレーターでは)サイバーで日本のシステムは相当な損害を受けたわけですが、日本はサイバーで最も遅れた国だといわれています。サイバー攻撃というのは、敵の重要インフラを落とすのに爆撃機の大編隊で爆撃するよりも安いのです。ですから「貧者の核兵器」といわれています。

 サイバー攻撃は平時から対応しなければいけません。敵は平時から侵入してロジカル・ボムを仕掛け、ときを待って起動させ、相手の中枢システムを破壊するのです。これを防ぐには大変なカードが必要です。日本の対応はあまりにお粗末です。デジタル庁はできましたが、「サイバー要塞」といってもいい政府のクラウドシステムがありません。ですから、みな自分のPCでシステムに入るわけです。ヒラリー・クリントンがそのようなことをしてとんでもないことになりました。ある人に言わせると、武士がお城を離れてばらばらに野宿している状態に近い、ということです。個人のPCはウイルスの吸引口で一番危険です。

 本来はどのようにすべきかというと、政府クラウドを構築して官給のPCを配布し、ハードディスクをつけない、印刷もさせない、データをダウンロードして読んだらすぐ消えるようにする、という仕組みを作ることです。アメリカでは、ペンタゴンが政府クラウド全体を守っています。各省は全部その中に入...
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