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Brexit、復興基金、グリーンディール――欧州の現在地と針路

2021年激変する世界と日本の針路(7)EUの試練と取り組み

島田晴雄
慶應義塾大学名誉教授/テンミニッツTV副座長
情報・テキスト
Brexit問題は今、どうなっているのか。2020年1月末、EUから正式に離脱したイギリスは同年3月、FTA交渉開始。交渉は難航し、合意なき離脱のリスクも高まったが、紆余曲折の末、イギリスとEUは通商協定で一応の合意成立。その背景にはコロナ問題があった。そのコロナに関して、EUは復興基金を成立させている。島田氏によると、これは歴史的意義のあることだが、その過程では多くの葛藤があったという。今回はヨーロッパに目を転じて、イギリスのTPP加盟、EUのグリーン戦略(グリーンディール)にも注目し、その動向を追いかける。(9話中第7話)
(本シリーズ講義では、島田晴雄先生が作成されたレジュメ内容を本文として掲載いたします。そのため、一部、動画では触れられていない部分がありますので、資料としてご活用いただければ幸いです)
時間:10:31
収録日:2021/02/02
追加日:2021/03/13
カテゴリー:
≪全文≫

●1. Brexitと今後の展望


ーBrexitの経緯通観
・2016.6.23.David Cameron首相の国民投票。結果は離脱51.9%対残留48.1%
・消去法で首相になったTherisa May首相は超真面目にEUに離脱通告。
・南北アイルランドの国境復活を避けるためEUの関税同盟に残るとの”安全弁案”を提案。
・保守党の強硬離脱派は猛反対。May首相の離脱案は議会で3回にわたり否決され、首相は2019.5.24早期辞任に追い込まれ退陣
・2019.7.23. 保守党は党首選出されたBorisJohnson氏はNo Deal Brexitも辞さずとMay前首相の足跡をすべて否定。10月末離脱に固執し、コービン労働党首に下院の解散と12.12の総選挙を提案。2019.12.13開票結果は保守党の大勝。
ーBrexit(EU離脱)成立
・20.1.31.Brexit(EU離脱)協定締結
ーFTA交渉
・Brexit協定が締結されたので、2020.3から離脱後のFTA交渉開始。
ー交渉の焦点
・英国・EUの交渉の対立点:漁業権、政府補助金、金融ビジネス、トラック輸送、原産地証明、相互承認など多岐にわたる。とくに難航しているのが漁業権と政府補助金。
ー合意なき離脱のリスク
・10月のEU首脳会議は交渉に重要な進展がないとして英国に合意に必要な対応を迫った。Johnson首相は「交渉は終わった。EUが態度を変えない限り、合意なき離脱を準備する」と主張。Johnson政権は1月に合意した離脱協定案の一部否認を可能とする法案の議会提出を準備。
・EUはこれは国際法違反であるとして国際司法裁判所への提訴を準備。事態は悪化。
ー2020年末ギリギリ、通商協定で一応の合意。
・その後、曲折があったが、2020.12.24、英国とEU、通商協定で一応の合意成立。
ー合意の要点
・関税をゼロとする自由貿易協定締結
・かなり粗い合意、多くの詰めの必要
・競争ルールの公正性:同等性の原則:金融、産業政策など。アイルランド国境問題再現。
ー英国は?
・Brexit GDPロス、4.9%押し下げ?、CVロス1.7%
ーEUは?
・EUは団結を維持し、発展を実現できるか。Brexitばかりにエネルギーをとられておれない。脱炭素とデジタル革命で新たなCV後の成長実現


●2. 英国のTPP加盟


ー英国の加盟申請
・英国は2021.1.30.夜、TPP11に正式に加盟申請すると発表。2.1.朝、英国のElizabeth Truss国際貿易相がTPP議長国の西村経済再生相と参加申請をとりまとめるNZのオコナー貿易相に電話会談で伝える。
・実現すれば、EU離脱した英国の初の大規模な国際FTA加盟となる。英国がTPPに参加すればTPP参加国の世界にしめるGDP比率は現在の13%から16%になる。英政府によるとTPP11カ国と英国の貿易額は約16兆円。英国の経済成長にとってプラス。英国の参加はタイなど他国の参加の後押しになる可能性。
・茂木外相は、TPPの高水準の自由化基準は共通で特定国の事情に合わせて変更・調整することはないと言明。中国を意識した発言。


●3. EU復興基金成立の葛藤


ーCVショックへの対応
・EUとしてもEU加盟諸国の窮状を救済するための緊急経済対策の検討を開始。
ーユーロ圏首脳会議4.8~10:CVの経済対策で一応合意。
・EU全体の結束は、“南北対立”があって容易でない。
ーEU首脳TV会議 4.23:復興基金では合意。規模や財源の結論は持ち越し。
ー欧州、コロナ不況対策の共通債務案
・5.18.メルケル首相とマクロン大統領、TV会議、欧州経済復興のため5000億ユーロ(60兆円)規模の基金設立で合意。
・EU全体で借金をしてイタリアなどへの補助金に回す仕組み。
・ドイツはこれまでの反対をとりさげ、共通債務の領域に踏み込む。
・欧州の結束を取り戻す狙い。
・メルケル:EUの歴史上空前の深刻な危機にはそれにふさわしい答えが必要。
マクロン:大きな一歩だ。
ー 欧州委員会 5.27. 復興計画案公表
・補助金と融資から成る7500億ER(約89兆円)の基金創設。すでに合意した支援策と合わせ総額は1.85兆ER(約220兆円)。
・復興計画は全27加盟国の同意が必要。
ー欧州復興計画への批判
・6月に入り、7500億ERの復興計画が、CVの被害に直結していないとの批判高まり。
・委員会の方式はCVに直結していないとNetherlands, Denmark, Austria, Belgium, Ireland,Lithuania, Hungaryなどが批判。
ー救済基金設立へ最後の葛藤
・EU首脳が合意した復興基金案の成立がハンガリーとポーランドの反対で遅滞した。両国首脳はEU委員会が、復興基金の配分について、「権力の濫用を法でしばる “法の支配”の遵守を条件としたことに対し主権の侵害として強く反発。しかし、年末にようやく基金は成立。


●4. EUのグリーン戦略(グリーンディール)


ー中期予算案
・2021~27中期予算案:総額1.8兆ER(221兆円)
ー中期予算案の主眼
・環境政策:2050までにCO2排出ゼロ目標を掲げ、それを実現するため以下の政策推進。
再生可能エネルギーの開発・普及、EV普及、水素...
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