2020世界の政治経済と日本
この講義シリーズは第2話まで
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
アベノミクスの功罪について検証する
2020世界の政治経済と日本(7)安倍政権の経済財政政策
島田晴雄(慶應義塾大学名誉教授/テンミニッツ・アカデミー副座長)
アベノミクスは経済成長を促し、日経平均株価を大幅に改善すると当時に、介護離職の減少や女性の労働状況の改善などにより、労働供給と雇用を生み出した。その反面、日銀の金融政策に歯止めをかけず不安定な状況になっている。また、財政政策も深刻な状況で、財政赤字が減るというめどは全く立っていない。こうした苦境の原因を過去を振り返って考えると、かつてレーガン政権が仕掛けたプラザ合意とそれに起因するバブル崩壊にある。(2020年1月23日開催島田塾会長講演「2020世界の政治経済と日本」より全8話中第7話)
時間:9分05秒
収録日:2020年1月23日
追加日:2020年5月11日
カテゴリー:
≪全文≫

●「アベノミクス」経済政策のプラス評価と批判的評価


 本命のアベノミクスを少し評価してみましょう。アベノミクスには、金融・財政・成長戦略という3本の矢がありました。

 まずプラスの側面についてお話しします。2013年から2019年まで1.1パーセントの成長を続けています。潜在成長力は0.3といわれているので、これはなかなか素晴らしい成果です。最長景気を記録しました。

 企業利益は非常に増えました。これも評価できますが、実は利益が投資されておらず、雇用にも回っていません。これらは、内部留保にまわっています。これは安倍首相の責任ではないですが、少し問題です。

 加えて、労働供給と雇用が少し増えています。多くの先進国では人口が減っています。人口が減ると経済は成長しないので、アベノミクスの第二期は比較的評価されているのです。その背景にある政策の中で最も大きいものは、一億総活躍というスローガンのもとでの新第三の矢、介護離職ゼロ政策です。これがシニア世代の労働参加を促しています。つまり中高年の人がさらに高い年齢の親の面倒を見ていたので、仕事に出ることができませんでした。ですから、このさらに高い年齢の親世代の人の面倒を見る体制を整えたことで、中高年の人が仕事に従事できるようになったのです。もっと改善していこうということで、この政策は世界中から評価されています。

 対して、批判的評価もいくつかあります。一つはクロダノミクスに対する批判です。クロダノミクスの仕組みは、ずっとデフレが続いていたので、その克服のために、ベースマネーを増やしました。すると、多くの円が国際市場に出るため、円の価値が下がります。結果として輸出が伸びるので、経済が成長します。さらに、経済成長すると輸入が拡大し、円の価値が下がっているために、物価が上がります。要するに、経済成長して物価が上がるために、この政策は良いとされてきたのですが、現状そのような状態には全くなっていません。

 不運だったのは、この政策を取り始めた直後に少し物価が上がったのに、それから1年後の2014年に物価の上昇がストップしたことです。オイルショックなどのさまざまな理由があったといわれていますが、今も、ほとんど上がっていません。その意味では、この政策は失敗です。しかし、安倍首相がアベノミクスの基本方針を変えないために、黒田東彦総裁は方針を変え...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「政治と経済」でまず見るべき講義シリーズ
緊急提言・社会保障改革(1)国民負担の軽減は実現するか
国民医療費の膨張と現役世代の巨額の「負担」
猪瀬直樹
習近平中国の真実…米中関係・台湾問題(1)習近平の歴史的特徴とは?
一強独裁=1人独裁の光と影…「強い中国」への動機と限界
垂秀夫
日本の財政政策の効果を評価する(1)「高齢化」による効果の低下
高齢化で財政政策の有効性が低下…財政乗数に与える影響
宮本弘曉
為替レートから考える日本の競争力・購買力(1)為替レートと物の値段で見る円の価値
ビッグマック指数から考える実質為替レートと購買力平価
養田功一郎
日本人が知らないアメリカ政治のしくみ(1)アメリカの大統領権限
権限の少ないアメリカ大統領は政治をどう動かしているのか
曽根泰教
財政問題の本質を考える(1)「国の借金」の歴史と内訳
いつから日本は慢性的な借金依存の財政体質になったのか
岡本薫明

人気の講義ランキングTOP10
習近平―その政治の「核心」とは何か?(1)習近平政権の特徴
習近平への権力集中…習近平思想と中国の夢と強国強軍
小原雅博
歴史の探り方、活かし方(4)史実・史料分析:秀吉と秀次編〈上〉
史料読解法…豊臣秀吉による秀次粛清の本当の理由とは?
中村彰彦
「宇宙の創生」の仕組みと宇宙物理学の歴史(1)宇宙の階層構造
「宇宙の階層構造」誕生の謎に迫るのが宇宙物理学のテーマ
岡朋治
内側から見たアメリカと日本(4)アメリカ労働史とトランプ支持層
ギャングの代わりに弁護士!? 壮絶なアメリカ労働史の変遷
島田晴雄
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み
なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み
今井むつみ
エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(4)全てをつなぐ密教の世界観
密教の世界観は全宇宙を分割せずに「つないでいく」
鎌田東二
学力喪失の危機~言語習得と理解の本質(2)言葉を理解するプロセスとスキーマ
なぜ子どもは教えられても理解できないのか?鍵はスキーマ
今井むつみ
編集部ラジオ2025(28)内側から見た日米社会の実状とは
島田晴雄先生の体験談から浮かびあがるアメリカと日本
テンミニッツ・アカデミー編集部
習近平中国の真実…米中関係・台湾問題(1)習近平の歴史的特徴とは?
一強独裁=1人独裁の光と影…「強い中国」への動機と限界
垂秀夫
徳と仏教の人生論(3)無分別知と全人格的思惟
般若とは何か――秋月龍珉からの命題を探求し到達した境地
田口佳史