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公約に掲げた経済政策を実現させるトランプ大統領の危うさ

2020世界の政治経済と日本(2)トランプ政権の経済政策

島田晴雄
慶應義塾大学名誉教授/テンミニッツTV副座長
概要・テキスト
トランプ大統領は市民の注意を引くような公約を掲げて当選したが、驚くことにその多くを実行に移している。経済政策では大規模な減税やインフラ建設を打ち出したが、収支バランスが保たれる兆しはない。また極端な保護主義によってさまざまな国家間枠組みの見直しを他国に強硬に求めている。その対象には、イランや中国など以前から対立している国家だけではなく、ヨーロッパや北米などの従来からの同盟国も含まれている。こうしたトランプ大統領の取り組みを、島田晴雄氏は舌鋒鋭く批判していく。(2020年1月23日開催島田塾会長講演「2020世界の政治経済と日本」より第2話)
時間:09:18
収録日:2020/01/23
追加日:2020/04/12
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≪全文≫

●公約に掲げた経済政策を実現するも、収支のメドは立っていない


 公約は実現するのがトランプ大統領の方針なので、まず法人税を大幅に下げました。今までのアメリカの法人税は非常に高い水準にありました。30パーセントだった法人税を、いきなり21パーセントまで落とし、低税率国にしました。減税規模が10年で1.5兆ドルということで、日本円にして1年で150兆円ですからすごいですね。この政策は、2019年には非常にアメリカ経済を刺激しました。

 ただ、その反動として、2兆ドル規模の財源不足とのことです。この見込みに対して、減税によって経済成長するので、その分でカバーするという触れ込みでした。しかし、その経済成長に関しては、政府は過大な予測を打ち出しています。だから無理ではないでしょうか。

 そもそも完全雇用状態の経済での減税は、経済学の原則から見ると、まるで逆の対策なのです。デフレギャップがあるから減税が効くのであって、デフレギャップのないときに減税しても、インフレになるかスタグフレーションになるかで、どちらにせよツケは労働者にめぐってきます。おそらく、トランプ大統領からしてみればそれでも構わないと思っているのでしょう。今、株式市場を刺激すれば、おそらくあと5年もすれば政治の舞台から退場するので、野となれ山となれという心境なのだろうと思います。

 それからインフラ投資にも積極的です。ホワイトハウスは2018年に1兆ドル投資するといいましたが、100兆円規模です。確かにアメリカでは、ハイウェイなど至るところがボロボロです。ですので、インフラ投資自体は必要なのです。そして、こうした動きを受けて、株式市場が急速にヒートアップします。民主党も大きな政府が好きなので、結構こうした動きに乗っているのです。つまり、結局2兆ドル程度の赤字が見込まれるのですが、誰が負担するのでしょうか。何年か経つと、結局勤労者が負担することになって、「やっぱりね」となるのですが、アメリカ人は気がついていないでしょう。

 3つ目の経済政策は、関税をかけることです。2018年3月に、安全保障上の危険を理由に、鉄鋼とアルミニウムを輸出している国々に高率の関税をかけると宣言しました。日本も韓国もヨーロッパもこれらの国の中に含まれますが、これらは全て同盟国です。トランプ大統領にとって、同盟がどういう意味を持つのか、よく分からないのではな...
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