激変しつつある世界―その地政学的分析
この講義シリーズは第2話まで
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
今後の世界情勢は米中露の3国関係を基礎に考えるべき
激変しつつある世界―その地政学的分析(3)3つの分析軸
中西輝政(京都大学名誉教授/歴史学者/国際政治学者)
歴史学者で京都大学名誉教授の中西輝政氏は、今後の世界情勢は、米中露の3国関係を基礎として考えるべきだと主張する。予想に反して米中は対立せず、むしろ歩み寄り、中露は疑似同盟関係を続けるだろう。また米露は歩み寄らず、対立関係が続くはずだ。こうした情勢の下では覇権交替が急速に進みかねない。(全10話中第3話)
時間:9分43秒
収録日:2017年5月16日
追加日:2017年12月26日
カテゴリー:
≪全文≫

●世界情勢は、米中露の関係を一番の基礎として考える


質問 アメリカは今後、中国と潜在的に敵対し続けるのか、それとも、手を握ることも視野に入れていくのでしょうか。

中西 米中関係がどちらに転ぶかということが、世界史の一番の分かれ道でしょう。日本の運命も、非常に大きな影響を受けるはずです。差し当たり、ドナルド・トランプ政権の対中政策を見てみましょう。2016年11月、トランプ氏が大統領選挙に勝利した時、日本のマスコミメディアでは、米中関係は今後、非常に悪化していくだろうと言われていました。書店に行けば、トランプ政権が対中強硬政策に出て、米中激突もあり得ると主張する本も、山積みになっていました。他方、トランプ政権はロシアと接近し、トランプ外交は親露・反中へと向かっていくと考えられていたのです。こうした一般的な予想が広がっていたのですが、しかしふたを開けてみたら、違った結果が明らかになってきています。

 私は、2017年の初め頃から主張していたのですが、今後4、5年の世界情勢を見るときに大事なことは、米中露の3国の大国関係を一番の基礎として考えるということです。その際、3つの仮説を提示しました。これは様々な媒体で発表したものです。


●中露の関係は、アメリカの力次第で変わる


 第1に、言われているような米中激突は起こりません。米中はむしろ、決定的な対立を決して起こさないでしょう。両方が必ず歩み寄ってくることになるはずです。第2に、いくらくさびを打ち込もうとしても、中露の関係は離れません。中露の疑似同盟関係はずっと続くでしょう。第3に、米露は決して仲良くなりません。米露対立も、ずっと続いていくでしょう。こうしたことは、3国の力関係を見れば分かることです。

 第1の分析軸は、米中は決定的に対立することはない、ということです。それゆえ、米中が首脳会談をしても、落としどころを見つけて、はっきりと合意できます。

 第2に、中露は対立せず、むしろ関係は続いていくでしょう。外見的には中露は、ある意味で同盟国あるいは協商国関係にあります。非常に親密なパートナーのように見える関係を、これからも続けていくでしょう。したがって、いくら安倍晋三首相がウラジーミル・プーチン大統領と何度も会って、一生懸命、中露の間にくさびを打ち込み、ロシアを日本側へと引き寄せようとしても、うまくいかないでしょう。...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「政治と経済」でまず見るべき講義シリーズ
日本人が知らないアメリカ政治のしくみ(1)アメリカの大統領権限
権限の少ないアメリカ大統領は政治をどう動かしているのか
曽根泰教
グローバル環境の変化と日本の課題(1)世界の貿易・投資の構造変化
トランプ大統領を止められるのは?グローバル環境の現在地
石黒憲彦
台湾有事を考える(1)中国の核心的利益と太平洋覇権構想
習近平政権の野望とそのカギを握る台湾の地理的条件
島田晴雄
クーデターの条件~台湾を事例に考える(1)クーデターとは何か
台湾でクーデターは起きるのか?想定シナリオとその可能性
上杉勇司
緊急提言・社会保障改革(1)国民負担の軽減は実現するか
国民医療費の膨張と現役世代の巨額の「負担」
猪瀬直樹
ポスト国連と憲法9条・安保(1)国連の構造的問題
核保有する国連常任理事国は、むしろ安心して戦争できる
橋爪大三郎

人気の講義ランキングTOP10
豊臣兄弟~秀吉と秀長の実像に迫る(4)信長の直臣、秀吉の与力としての秀長
最初は信長の直臣として活躍――武闘派・秀長の前半生は?
黒田基樹
逆境に対峙する哲学(1)日常性が「破れ」て思考が始まる
逆境にどう対峙するか…西洋哲学×東洋哲学で問う知的ライブ
津崎良典
生成AI「Round 2」への向き合い方(1)生成AI導入の現在地
生成AIの利活用に格差…世界の導入事情と日本の現状
渡辺宣彦
葛飾北斎と応為~その生涯と作品(4)葛飾応為の芸術と人生
親娘で進歩させた芸術…葛飾応為の絵の特徴と北斎との比較
堀口茉純
人の行動の「なぜ」を読み解く行動分析学(1)随伴性
「なぜ人は部屋を片付けられないか」を行動分析学で考える
島宗理
インテリジェンス・ヒストリー入門(1)情報収集と行動
日本の外交には「インテリジェンス」が足りない
中西輝政
「アメリカの教会」でわかる米国の本質(1)アメリカはそもそも分断社会
「キリスト教は知らない」ではアメリカ市民はつとまらない
橋爪大三郎
平和の追求~哲学者たちの構想(6)EU批判とアメリカの現状
理想を具現化した国連やEUへの批判がなぜ高まっているのか
川出良枝
「宇宙の創生」の仕組みと宇宙物理学の歴史(1)宇宙の階層構造
「宇宙の階層構造」誕生の謎に迫るのが宇宙物理学のテーマ
岡朋治
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み
なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み
今井むつみ