激変しつつある世界―その地政学的分析
この講義シリーズは第2話まで
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
追い込まれたアメリカは同盟国を切り捨てる可能性もある
激変しつつある世界―その地政学的分析(4)実質なき時代
政治と経済
中西輝政(京都大学名誉教授/歴史学者/国際政治学者)
歴史学者で京都大学名誉教授の中西輝政氏によれば、現代は、どの国も実質のない見せかけを演じる、「パックス見せかけ」の時代である。アメリカが中国・ロシアとの関係で追い込まれる中、同盟国日本を切り捨てる可能性も出てきた。今後は、日本も自助努力・自主防衛を考えざるを得なくなっていくだろう。(全10話中第4話)
時間:10分26秒
収録日:2017年5月16日
追加日:2017年12月27日
カテゴリー:
≪全文≫

●同盟の損得をドライに計算する時代が、トランプ時代だ


 米中・中露・米露という3つの軸の呪縛から逃れようとするのであれば、アメリカには解が1つしかありません。これによって、中露両国とも仲良くしつつ、かつ中露の間を分断し、しかもアメリカは出費を一番少なくできます。それは、同盟国を切り落とすことです。同盟国を抱えているから不利になるんです。しかし同時に、同盟国に言うことを聞かせられるということが、アメリカの国益になっていることも否めません。

 このように、ギリギリに追い込まれたアメリカが、同盟国とのしがらみが損か得かというドライな計算をする時代が、トランプ時代なのです。これはイギリスで言えば、20世紀の初め頃です。イギリスは当時、日本と同盟を結び、何とか苦境を逃れようとし始めました。そうなればドライになるし、なりふり構わなくなっていきます。トランプ時代というのは、そうした時代の始まりなのです。


●日本も自分の足で立ち、有利な周辺環境づくりをすべきだ


 日英同盟を結んだ頃のイギリスは、もはや積年の世界覇権国の余裕が全くなくなっていました。しかも、本国に近い海が、ドイツ海軍に押さえられるかもしれないという状況でした。急いで世界の軍艦をイギリス近海に持ち帰ってくる必要がありました。しかし、そうすればアジアはがら空きになって、ロシアが進出してくる困った事態になりかねません。

 そこで、日本に目を付けたのです。ちょうどここに元気のいい、若い国がいる。しかも、海軍をつくっているらしい。これは利用しない手はない、というわけです。ただし、やはり相当のジレンマがありました。日本は有色人種の国で、しかも30年ほど前までは刀を差し、イギリス人を切り殺したこともあったのです。そうした国を対等な同盟国として扱うのは、イギリス人にとって非常に大きな心理的抵抗がありました。しかし、なりふり構っていられなくなり、心理的抵抗を乗り越えたのです。

 もちろん子細に検討すれば、あの同盟は日本を助けるという趣旨ではないし、いざとなったらイギリスが参戦するという条件も、かなりネグレクトされていました。したがって、当時の日本人も、イギリスには裏切られる、見捨てられるとはっきり分かっていたのです。しかし、こうしたことを承知の上で日本人は日英同盟を結びました。だからこそ、ものすごい覚悟で日露戦争を行...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「政治と経済」でまず見るべき講義シリーズ
マルクス入門と資本主義の未来(1)マルクスとはどんな人物なのか
マルクスを理解するための4つの重要ポイント
橋爪大三郎
「新しい資本主義」の本質と課題(1)新自由主義と『21世紀の資本』
新自由主義からの時代背景から「新しい資本主義」を問う
柳川範之
政治学講座~選挙をどう見るべきか(1)選挙の意味
選挙と政治権力…「選挙に勝つ」とはどういうことか?
曽根泰教
自民党総裁選~その真の意味と今後の展望
「マスコミ報道」では見えない自民党総裁選の深い意味
曽根泰教
グローバル環境の変化と日本の課題(1)世界の貿易・投資の構造変化
トランプの動きを止められるのは?グローバル環境の現在地
石黒憲彦
危機のデモクラシー…公共哲学から考える(1)ポピュリズムの台頭と社会の分断化
デモクラシーは大丈夫か…ポピュリズムの「反多元性」問題
齋藤純一

人気の講義ランキングTOP10
海底の仕組みと地球のメカニズム(1)海底の生まれるところ
地球上の火山活動の8割を占める「中央海嶺」とは何か
沖野郷子
経験学習を促すリーダーシップ(2)経験から学ぶ力
米長邦雄のアンラーニング、弟子の弟子になってV字成長
松尾睦
続・日本人の「所得の謎」徹底分析(1)各国の財政と国民負担
日本と各国の比較…税負担は低いが社会保障の負担は高い
養田功一郎
未来を知るための宇宙開発の歴史(9)宇宙開発を継続するための国際月探査
「国際月探査」とは?アルテミス合意と月探査の意味
川口淳一郎
大統領に告ぐ…硫黄島からの手紙の真実(4)百年後の日本人のために
百年後の日本人のために、共に玉砕する仲間たちのために
門田隆将
第2の人生を明るくする労働市場改革(1)日本の労働市場が抱える問題
シニアの雇用、正規・非正規の格差…日本の労働市場の問題
宮本弘曉
外交とは何か~不戦不敗の要諦を問う(1)著書『外交とは何か』に込めた思い
外交とは何か…いかに軍事・内政と連動し国益を最大化するか
小原雅博
数学と音楽の不思議な関係(1)だれもがみんな数学者で音楽家
世界は音楽と数学であふれている…歴史が物語る密接な関係
中島さち子
「集権と分権」から考える日本の核心(5)島国という地理的条件と高い森林率
各々の地でそれぞれ勝手に…森林率が高い島国・日本の特徴
片山杜秀
「アカデメイア」から考える学びの意義(1)学びを巡る3つの危機
「学びの危機」こそが現代社会と次世代への大きな危機
納富信留