「江戸のメディア王」蔦屋重三郎の生涯
この講義シリーズは第2話まで
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
謎の絵師・東洲斎写楽を「役者絵」で起用した蔦重の思惑
「江戸のメディア王」蔦屋重三郎の生涯(8)大首絵の成功と蔦重の最期
堀口茉純(歴史作家/江戸風俗研究家)
当時の出版界の花形である錦絵に参入した蔦屋重三郎は、錦絵のひとつである「大首絵」の製作にも着手。すると蔦重は、当時無名の写楽を起用し、デフォルメを効かせた大首絵で世間を驚かせた。出版界を上り詰めた蔦重は直後に病に倒れるが、彼が最期まで貫いた「メディア王」らしい振る舞いとは、いったいどんなものだったのだろうか。(全8話中第8話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツTV編集長)
時間:8分29秒
収録日:2024年11月6日
追加日:2025年2月27日
≪全文≫

●寛政の改革をかいくぐった蔦重の奇策


堀口 そうとう手応えを感じたようで、蔦重は歌麿に、今度はバストアップからほぼ顔面中心の美人画を描かせました。これがいわゆる「大首絵」です。

―― なるほど。

堀口 ただ、寛政の改革で、美人画の一枚絵に個人の名前を書き込むことが禁止されたということがあります。

―― なぜ禁止なのですか?

堀口 これは、その人のところに人が集まるというのは、「儲かろうとしているだろう。けしからん!」ということです。娯楽を規制するという意味で、風俗を乱すとか、そういう意味で禁止されてしまうのです。

 でも、諦めないということで、蔦重が歌麿に描かせたのは、名前の代わりに判じ絵を入れるようになりました。川上さん、左上のほうに枠があります。これはコマ絵というのですけれども、コマ絵の中をよく見ると、何か描いてあるのですよね。

―― これですよね。

堀口 はい。

―― しかし、だいたいパッと見で菜っ葉が飛んでいるのがおかしいですよね。

堀口 そうなのです。

―― なんで菜っ葉が飛んでいるのだ、ということから始まってきますけれど。

堀口 そういうことです。菜っ葉が2つあって、なにか弓矢のようなものがあって、海が描かれています。

―― 景色がそういうところなのですよね。

堀口 はい。海の沖があって、田んぼが描かれているということで、全部を組み合わせると、「菜が二把 矢 沖 田」ということで、「難波屋 おきた」という、巷で人気の茶屋娘であるということを表わしているということなのです。

―― これはでも、典型的に「規制が逆効果」というやつですよね。

堀口 むしろこだわってしまう。

―― こちらのほうが読めたら嬉しくなってしまうということになりそうですよね。

堀口 そうなのです。この判じ物を蔦屋が始めるのは、厳密にいうと、寛政の改革の本当に終末期で、ほぼ終わっているので、やる必要はなかったのではないかといわれているのですけれど、おそらく楽しくなってしまったのだと思います。

―― なるほど。いや、そういうことでしょうね。普通に字で書かれるよりも、「これ、誰だい?」というところから入ったほうがおもしろいですからね。

堀口 そうなのです。グッと、そこを注目することにもなりますからね。

―― はい。
...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「歴史と社会」でまず見るべき講義シリーズ
近現代史に学ぶ、日本の成功・失敗の本質(1)「無任所大臣」が生まれた経緯
現代の「担当大臣」の是非は戦前の「無任所大臣」でわかる
片山杜秀
本当のことがわかる昭和史《1》誰が東アジアに戦乱を呼び込んだのか(1)「客観的かつ科学的な歴史」という偽り
半藤一利氏のベストセラー『昭和史』が持つ危険な面とは?
渡部昇一
天下人・織田信長の実像に迫る(1)戦国時代の日本のすがた
近年の研究で変わってきた織田信長の実像
柴裕之
「三国志」の世界とその魅力(1)二つの三国志
三国志の舞台、三国時代はいつの・どんな時代だったのか?
渡邉義浩
徳川将軍と江戸幕府~徳川家斉(1)家斉が長期政権を維持できた理由
11代将軍・徳川家斉が50年もの長期政権を築けた理由
山内昌之
明治維新から学ぶもの~改革への道(1)五つの歴史観を踏まえて
明治維新…官軍史観、占領軍史観、司馬史観、過誤論の超克
島田晴雄

人気の講義ランキングTOP10
葛飾北斎と応為~その生涯と作品(1)北斎の画狂人生と名作への進化
葛飾北斎と応為…画狂の親娘はいかに傑作へと進化したか
堀口茉純
健診結果から考える健康管理・新5カ条(1)血管をより長く守ることが重要な時代
健康診断の結果が悪い人が絶対にやってはいけないこと
野口緑
エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(1)サイバー・フィジカル融合と心身一如
なぜ空海が現代社会に重要か――新しい社会の創造のために
鎌田東二
「重要思考」で考え、伝え、聴き、議論する(1)「重要思考」のエッセンス
重要思考とは?「一瞬で大切なことを伝える技術」を学ぶ
三谷宏治
中国共産党と人権問題(1)中国共産党の思惑と歴史的背景
深刻化する中国の人権問題…中国共産党の思惑と人権の本質
橋爪大三郎
学力喪失の危機~言語習得と理解の本質(1)数が理解できない子どもたち
なぜ算数が苦手な子どもが多いのか?学力喪失の真相に迫る
今井むつみ
プロジェクトマネジメントの基本(2)プロジェクトの複雑性とマネジメント
コスパが鍵!? 顧客満足につながる品質マネジメントとは
大塚有希子
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み
なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み
今井むつみ
生成AI「Round 2」への向き合い方(1)生成AI導入の現在地
生成AIの利活用に格差…世界の導入事情と日本の現状
渡辺宣彦
歴史の探り方、活かし方(1)歴史小説と史料探索の基本
日本は素晴らしい歴史史料の宝庫…よい史料の見つけ方とは
中村彰彦