「江戸のメディア王」蔦屋重三郎の生涯
この講義シリーズは第2話まで
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
錦絵、解体新書…田沼時代が切り拓いた日本文化の新境地
「江戸のメディア王」蔦屋重三郎の生涯(4)田沼時代の画期性と終焉
堀口茉純(歴史作家/江戸風俗研究家)
経済の動きを活発化し、鎖国体制を緩め外国との交流にも積極的だった田沼意次時代には、その土壌からさまざまな才能あふれる人物が台頭。錦絵や蘭学といった新たな文化が育まれたこの時代を指揮した田沼には、やっかみの目も多く向けられた。田沼の画期性とその時代の終焉を振り返る。(全8話中第4話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツTV編集長)
時間:8分21秒
収録日:2024年11月6日
追加日:2025年1月30日
≪全文≫

●田沼時代に人気を博した錦絵


堀口 幕府も田沼がトップですから、お金をドンドン使って、経済を回してくださいというスタンスでした。そのため、娯楽に対する規制も緩く、さまざまな文化が発達しました。出版分野だけ取ってみても、例えば、錦絵というものがありますが、こちらがその錦絵になります。

堀口 浮世絵と錦絵の違いですが、実は錦絵は浮世絵の一種なのです。浮世絵の中でも多色刷り、フルカラー印刷の極彩色の浮世絵のことを錦絵と呼ぶようになったということなのです。

―― 錦ですから、いい言葉ですよね、

堀口 はい。綾錦のような美しい絵ということです。

 これをつくり出したのは、鈴木春信という人です。それまでの浮世絵は、色を使っても4、5色ぐらいだったのを、鈴木春信はこういうふうに、おそらくこちらの絵では8色ぐらい使っているのですけれど、8色からそれ以上の色を使って、いわゆる総天然色の豪華版の浮世絵(錦絵)をつくったということなのです。

 最初の作品が出ているのは明和2年なので、厳密にいうと田沼時代前夜になるわけなのですが、その後、田沼時代の到来により、時代の波に乗って人気を博していったということです。というのも、色をたくさん使いますから、春信の錦絵はけっこう高かったのです。1枚が60文ですから、1文25円で計算すると1500円になりますので、それまでの普通の浮世絵の3倍ぐらいは値の張る価格設定なのですけれど、田沼時代は庶民も経済力を持っていたので、少し高くても目新しいものとか、刺激的なものがウケる時代だったということなのです。

―― はい。


●才能豊かな人物が数多く現れた田沼時代


堀口 それから田沼といえば、鎖国体制を弛緩させました。これによって、学問の分野でも、杉田玄白らによって『解体新書』というのが刊行されましたし、医学を中心に西洋のすぐれた技術を学ぶ学問、蘭学が発達しました。例えば、エレキテルの発明で有名な平賀源内とか、下級武士の出身でありながらも発明家であり、学者であり、戯作者というマルチな才能を持った人たちが活躍できたわけなのです。

―― 錦絵もそうですし、この有名な『解体新書』もそうですけれども、まさに、いろいろな新しいものが庶民の目の前に現われてくる時代で、しかも、...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「歴史と社会」でまず見るべき講義シリーズ
天下人・織田信長の実像に迫る(1)戦国時代の日本のすがた
近年の研究で変わってきた織田信長の実像
柴裕之
ローマ史に学ぶ戦略思考~ローマ史講座Ⅳ(1)古代の持つ意義と重み
一神教もアルファベットも貨幣も全て古代に生まれた
本村凌二
『江戸名所図会』で歩く東京~吉原(1)「苦界」とは異なる江戸時代の吉原
遊女の実像…「苦界?公界?」江戸時代の吉原遊郭の真実
堀口茉純
「武士の誕生」の真実(1)10世紀の東アジア情勢と「王朝国家」
「王朝国家」と「武士」が誕生した理由は大唐帝国の解体
関幸彦
本当のことがわかる昭和史《1》誰が東アジアに戦乱を呼び込んだのか(1)「客観的かつ科学的な歴史」という偽り
半藤一利氏のベストセラー『昭和史』が持つ危険な面とは?
渡部昇一
豊臣政権に学ぶ「リーダーと補佐役」の関係(1)話し上手な天下人
織田信長と豊臣秀吉の関係…信長が評価した二つの才覚とは
小和田哲男

人気の講義ランキングTOP10
熟睡できる環境・習慣とは(2)酒、コーヒー、ブルーライトは悪者か
ブルーライトは悪者か?近年分かった「第3の眼」との関係
西野精治
エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(1)サイバー・フィジカル融合と心身一如
なぜ空海が現代社会に重要か――新しい社会の創造のために
鎌田東二
歴史の探り方、活かし方(6)江戸時代の藩校レベルを分析
史料読解法…江戸時代の「全国の藩校ランキング」を探る
中村彰彦
習近平―その政治の「核心」とは何か?(1)習近平政権の特徴
習近平への権力集中…習近平思想と中国の夢と強国強軍
小原雅博
編集部ラジオ2025(29)歴史作家の舞台裏を学べる
歴史作家・中村彰彦先生に学ぶ歴史の探り方、活かし方
テンミニッツ・アカデミー編集部
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み
なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み
今井むつみ
経験学習を促すリーダーシップ(1)経験学習の基本
成長を促す「3つの経験」とは?経験学習の基本を学ぶ
松尾睦
内側から見たアメリカと日本(6)日本企業の敗因は二つのオウンゴール
日本企業が世界のビジネスに乗り遅れた要因はオウンゴール
島田晴雄
習近平中国の真実…米中関係・台湾問題(1)習近平の歴史的特徴とは?
一強独裁=1人独裁の光と影…「強い中国」への動機と限界
垂秀夫
学力喪失の危機~言語習得と理解の本質(1)数が理解できない子どもたち
なぜ算数が苦手な子どもが多いのか?学力喪失の真相に迫る
今井むつみ