「江戸のメディア王」蔦屋重三郎の生涯
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錦絵、解体新書…田沼時代が切り拓いた日本文化の新境地
「江戸のメディア王」蔦屋重三郎の生涯(4)田沼時代の画期性と終焉
堀口茉純(歴史作家、江戸風俗研究家)
経済の動きを活発化し、鎖国体制を緩め外国との交流にも積極的だった田沼意次時代には、その土壌からさまざまな才能あふれる人物が台頭。錦絵や蘭学といった新たな文化が育まれたこの時代を指揮した田沼には、やっかみの目も多く向けられた。田沼の画期性とその時代の終焉を振り返る。(全8話中第4話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツTV編集長)
時間:8分21秒
収録日:2024年11月6日
追加日:2025年1月30日
≪全文≫

●田沼時代に人気を博した錦絵


堀口 幕府も田沼がトップですから、お金をドンドン使って、経済を回してくださいというスタンスでした。そのため、娯楽に対する規制も緩く、さまざまな文化が発達しました。出版分野だけ取ってみても、例えば、錦絵というものがありますが、こちらがその錦絵になります。

堀口 浮世絵と錦絵の違いですが、実は錦絵は浮世絵の一種なのです。浮世絵の中でも多色刷り、フルカラー印刷の極彩色の浮世絵のことを錦絵と呼ぶようになったということなのです。

―― 錦ですから、いい言葉ですよね、

堀口 はい。綾錦のような美しい絵ということです。

 これをつくり出したのは、鈴木春信という人です。それまでの浮世絵は、色を使っても4、5色ぐらいだったのを、鈴木春信はこういうふうに、おそらくこちらの絵では8色ぐらい使っているのですけれど、8色からそれ以上の色を使って、いわゆる総天然色の豪華版の浮世絵(錦絵)をつくったということなのです。

 最初の作品が出ているのは明和2年なので、厳密にいうと田沼時代前夜になるわけなのですが、その後、田沼時代の到来により、時代の波に乗って人気を博していったということです。というのも、色をたくさん使いますから、春信の錦絵はけっこう高かったのです。1枚が60文ですから、1文25円で計算すると1500円になりますので、それまでの普通の浮世絵の3倍ぐらいは値の張る価格設定なのですけれど、田沼時代は庶民も経済力を持っていたので、少し高くても目新しいものとか、刺激的なものがウケる時代だったということなのです。

―― はい。


●才能豊かな人物が数多く現れた田沼時代


堀口 それから田沼といえば、鎖国体制を弛緩させました。これによって、学問の分野でも、杉田玄白らによって『解体新書』というのが刊行されましたし、医学を中心に西洋のすぐれた技術を学ぶ学問、蘭学が発達しました。例えば、エレキテルの発明で有名な平賀源内とか、下級武士の出身でありながらも発明家であり、学者であり、戯作者というマルチな才能を持った人たちが活躍できたわけなのです。

―― 錦絵もそうですし、この有名な『解体新書』もそうですけれども、まさに、いろいろな新しいものが庶民の目の前に現われてくる時代で、しかも、...

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