「江戸のメディア王」蔦屋重三郎の生涯
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喜多川歌麿をスターにした蔦重の天才的プロデュース術
「江戸のメディア王」蔦屋重三郎の生涯(6)蔦重がつくった狂歌本
歴史と社会
堀口茉純(歴史作家/江戸風俗研究家)
出版業界の時流に乗り、そのなかで画期的な出版物をつくってきた蔦重は、狂歌本ブームにも目をつけた。狂歌師たちとの狂歌会をもとにした『吉原大通会』や、当時無名の喜多川歌麿を起用した狂歌絵本といった、独創的な蔦重の仕事を振り返る。(全8話中第6話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツTV編集長)
時間:8分34秒
収録日:2024年11月6日
追加日:2025年2月13日
≪全文≫

●『吉原大通会(よしわらだいつうえ)』で発信した狂歌文化


堀口 当時の出版業界というのは、川柳、俳諧、それから狂歌という笑いをテーマにした文芸が大ブームになっていたということもあって、必然的にそういう文芸作品の出版物のニーズが高い状態でした。なので、蔦重も早いうちから狂歌本を手掛けているのです。

―― はい。

堀口 こちらは蔦重が出てくる『吉原大通会(よしわらだいつうえ)』という作品の1コマです。

―― これは、吉原の講義(『江戸名所図会』で歩く東京~吉原(2)「公界」としての吉原)でもご紹介いただいた絵でございますね。

堀口 そうですね。前に取り上げましたので、細かくは見ませんけれども、当時、大人気の狂歌師たちが仮装した姿という趣向で描かれておりまして、左下で筆と硯を差し出しているのが狂歌名「蔦唐丸(つたのからまる)」こと蔦屋重三郎ということです。上座にじょうごのようなものを乗せて座っているのが、当時のスター狂歌師の四方赤良(よものあから)です。この人、実は大田南畝という幕臣なのですが、その才能を平賀源内に激賞されて、『寝惚先生文集(ねぼけせんせいぶんしゅう)』という詩集で、華々しく文壇デビューをした人です。

 その後、友人の唐衣橘洲(からごろもきっしゅう)という、この人も幕臣なのですが、この唐衣橘洲の自宅で狂歌会を始め、爆発的な流行を生み出して、「連」というグループをつくって、集まって詠み合うというのが、一種のサークル活動のような感じで盛んになりました。

 狂歌というのは、五・七・五・七・七の和歌の形式で、風刺とか滑稽な要素を盛り込んだもので、形式としては江戸時代よりも前からありました。江戸時代には連単位で盛り上がったこととか、それまでの狂歌は、その場で詠んで「詠み捨てる」という、その場限りのものでしたけれど、出版業者の人たちが、それではもったいないから出版をしましょうということになって、「四方赤良が選んだ狂歌本のほうがおもしろい」、「いや、唐衣橘洲だ」みたいなライバル関係も出てきて、かつてないほどに盛り上がっていった時代だったのです。

―― いまでいったら、お笑いの文化というのも、それこそあちらこちらに劇場ができたりということがあったりしますけれども、内輪でいろいろ楽しんでいたものが、文化として...

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