「江戸のメディア王」蔦屋重三郎の生涯
この講義シリーズは第2話まで
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
喜多川歌麿の美人画が革新的だったわけ…蔦重の戦略とは
「江戸のメディア王」蔦屋重三郎の生涯(7)逆境を逆手にとった錦絵
堀口茉純(歴史作家/江戸風俗研究家)
さまざまな出版物のなかでも当時の花形だったのが、多色刷りの浮世絵である錦絵だ。さらなる躍進を目論む蔦重も、当然その錦絵に目をつけていたが、その参入の契機となったのは出版規制が厳しくなった松平定信時代だった。逆境と思われる状況で、むしろ当時の花形「錦絵」の出版に打って出た蔦重の立ち回りを追う。(全8話中第7話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツTV編集長)
時間:9分24秒
収録日:2024年11月6日
追加日:2025年2月20日
≪全文≫

●「江戸のメディア王」になるべく錦絵に目をつけた


―― では、続きまして、前回が狂歌と版本ということでしたけれども、蔦屋重三郎というと浮世絵のイメージを持つ方も多いと思いますが、今回、その浮世絵が中心ですね。

堀口 そうなのです。浮世絵の中でも、多色刷り、フルカラーの錦絵ということなのです。

―― 錦絵ですね。

堀口 極彩色の浮世絵ということです。

 最初、鈴木春信という人がつくりましたので、春信の絵のことを最初は錦絵と言っていたのですが、みんなが真似をしたので、多色刷りの浮世絵のことを錦絵と呼ぶようになりました。

 さまざまな出版物の中でも、錦絵というのは花形というか、現代だと映画みたいな感じで、小説があって、テレビがあって、ネットがあって、いろいろなエンターテイメントがありますけれども、映画化をして大ヒットするというのが、大衆に認められた一つの証しになるというようなところで、ステイタスシンボル的な意味があったのが、この錦絵なのです。やはり蔦重も、名実共に江戸のメディア王になるためには、錦絵で大成功する必要があったわけで、参入のキッカケを狙っていたわけですね。あることをキッカケに、ついに勝負に出たということなのです。そのキッカケというのが寛政の改革です。

―― なぜ寛政の改革がキッカケになるかというところでございます。

堀口 そうです。


●緊縮的な政策がとられた松平定信時代に詠まれた狂歌


堀口 大胆な経済政策が取られた田沼時代が終わりまして、代わりに老中になった松平定信が主導し、天明7年(1787年)から寛政5年まで、6年間にわたって断行されたのが、この寛政の改革です。ひと言でいえば、田沼時代の否定ということになるのですが、それまでと打って変わった緊縮財政の政策が取られました。ただ、厳密にいうと、田沼時代の末期は天災が続きましたから、もう緊縮財政政策が取られるようにはなっていたのですけれども、さらに松平定信という人は、この質素倹約を推し進めていって、庶民の娯楽にも規制が入るようになって、出版統制も厳しくなっていったという時代なのです。

 前の時代が解放的だっただけに、人びとはそういう息苦しさを感じていたらしくて、こんな狂歌もつくられました。「白河の清きに魚(うお)のすみかねて もとの濁りの田沼恋し...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「歴史と社会」でまず見るべき講義シリーズ
「三国志」の世界とその魅力(1)二つの三国志
三国志の舞台、三国時代はいつの・どんな時代だったのか?
渡邉義浩
ローマ史に学ぶ戦略思考~ローマ史講座Ⅳ(1)古代の持つ意義と重み
一神教もアルファベットも貨幣も全て古代に生まれた
本村凌二
近現代史に学ぶ、日本の成功・失敗の本質(1)「無任所大臣」が生まれた経緯
現代の「担当大臣」の是非は戦前の「無任所大臣」でわかる
片山杜秀
最初の日本列島人~3万年前の航海(1)日本への移住 3つのルート
最初の日本列島人はいつ、どうやって日本に渡ってきたのか
海部陽介
豊臣政権に学ぶ「リーダーと補佐役」の関係(1)話し上手な天下人
織田信長と豊臣秀吉の関係…信長が評価した二つの才覚とは
小和田哲男
第二次世界大戦とソ連の真実(1)レーニンの思想的特徴
レーニン演説…革命のため帝国主義の3つの対立を利用せよ
福井義高

人気の講義ランキングTOP10
葛飾北斎と応為~その生涯と作品(1)北斎の画狂人生と名作への進化
葛飾北斎と応為…画狂の親娘はいかに傑作へと進化したか
堀口茉純
健診結果から考える健康管理・新5カ条(1)血管をより長く守ることが重要な時代
健康診断の結果が悪い人が絶対にやってはいけないこと
野口緑
エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(1)サイバー・フィジカル融合と心身一如
なぜ空海が現代社会に重要か――新しい社会の創造のために
鎌田東二
「重要思考」で考え、伝え、聴き、議論する(1)「重要思考」のエッセンス
重要思考とは?「一瞬で大切なことを伝える技術」を学ぶ
三谷宏治
中国共産党と人権問題(1)中国共産党の思惑と歴史的背景
深刻化する中国の人権問題…中国共産党の思惑と人権の本質
橋爪大三郎
学力喪失の危機~言語習得と理解の本質(1)数が理解できない子どもたち
なぜ算数が苦手な子どもが多いのか?学力喪失の真相に迫る
今井むつみ
プロジェクトマネジメントの基本(2)プロジェクトの複雑性とマネジメント
コスパが鍵!? 顧客満足につながる品質マネジメントとは
大塚有希子
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み
なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み
今井むつみ
生成AI「Round 2」への向き合い方(1)生成AI導入の現在地
生成AIの利活用に格差…世界の導入事情と日本の現状
渡辺宣彦
歴史の探り方、活かし方(1)歴史小説と史料探索の基本
日本は素晴らしい歴史史料の宝庫…よい史料の見つけ方とは
中村彰彦