大国主神に学ぶ日本人の生き方
この講義は登録不要無料視聴できます!
▶ 無料視聴する
次の動画も登録不要で無料視聴できます!
ケア、エコロジー、ガバナンス、アート…現代へのヒント
第2話へ進む
がんの告知を受けて大国主神のケアと自己回復力に共感した
大国主神に学ぶ日本人の生き方(1)大国主神のメッセージを現代に生かす
鎌田東二(京都大学名誉教授)
なぜ今、大国主神に注目すべきなのか。日本神話の中で、大国主神は2度も殺されて、周りに助けられてよみがえっている。しかも、一番苦しみ、痛み、嘆くはずなのだけども、嘆きの言葉は一切ない。また、様々な助けを得て国作りをし、さらに国譲りまでしてみせた神様である。鎌田氏は2022年末に大腸がんの診断を受け、2023年1月に手術を行なうが、2月には肺や肝臓、リンパ節にも転移が見つかりステージ4の大腸がんだと告知された。その鎌田氏は、大国主神のレジリエンス(自己回復力)を現代へのメッセージとして生かしたいと言う。さまざまな問題に直面する現代日本が大国主神から学ぶべき点は多いのだ。闘病中ほぼ1週間で完成させた著書『悲嘆とケアの神話論ー須佐之男と大国主』(春秋社)をもとに解説する。(全9話中1話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツTV編集長)
時間:9分09秒
収録日:2023年8月8日
追加日:2023年12月10日
≪全文≫

●がんの告知と著書『悲嘆とケアの神話論』の完成


―― こんにちは。

鎌田 こんにちは。

―― 本日は鎌田東二先生に、大国主神(オオクニヌシノカミ)について講義をいただきたいと思います。鎌田先生、どうぞよろしくお願いいたします。

鎌田 よろしくお願いします。

―― 鎌田先生は著書でも公表されていますが、2022年12月にがんの告知を受けられたということですね。

鎌田 そうです。2022年10月末にひどい腹痛と、腹が膨張してゴロゴロと鳴る状態があり、その痛みと、食事のたびに腹がゴロゴロ鳴ることが頻繁に起こるようになって、どうもおかしいと思ったのです。医者に診てもらっても、胃カメラを飲んでも、異常はない。腫瘍マーカー検査でも異常はない。それでも「やはりおかしい、原因があるはずだ」と思って、私が住む京都市左京区にある日本バプテスト病院というキリスト教の病院に行って、その日に「CT検査をしますか」と言われたので「すぐにしてください」と頼んだのです。

 そのCT検査で、小腸と大腸がぶつかるところ(盲腸のあたり)で、かなり大きながんが見つかった。小腸がふくれ上がって、詰まっているわけです。ヘドロのような状態になっているところにバーンとぶつかって傷がついて、細胞がどんどん悪性化しているという状態かと思います。

 それが見つかったものですから、すぐに手術をするという手順になって、翌年(2023年)1月に手術をしました。その頃も含めて、この2年ほどのコロナ禍の時期に、大国主神のことをよく考えるようになったのです。

―― まさに今日は、その大国主神が、例えば病気やケアといったことにどのような意味合いを持ってくるかという観点でお話をお聞きしたいと思います。ご病気が見つかってから書かれたのが、著書『悲嘆とケアの神話論ー須佐之男と大国主』(春秋社)です。

鎌田 これは私の遺言として、昨年(2022年)12月28日頃からまとめ始めて1月4日まで、ほぼ1週間で完成させました。

―― すごいスピードですね。

鎌田 多少は寝ていますが、ずっと机に座りっぱなしで、我ながら「この執念はすごいな」と思うほど、すさまじい集中力でまとめ上げました。


●大国主神の自己回復力をメッセージとして現代に生かしたい


鎌田 私自身は須佐之男(スサノオ)の子分を自称してきましたので、スサ...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「哲学と生き方」でまず見るべき講義シリーズ
逆境に対峙する哲学(1)日常性が「破れ」て思考が始まる
逆境に対峙する哲学カフェ…西洋哲学×東洋哲学で問う矛盾
津崎良典
平和の追求~哲学者たちの構想(1)強力な世界政府?ホッブズの思想
平和の実現を哲学的に追求する…どんな平和でもいいのか?
川出良枝
「アメリカの教会」でわかる米国の本質(1)アメリカはそもそも分断社会
「キリスト教は知らない」ではアメリカ市民はつとまらない
橋爪大三郎
楽観は強い意志であり、悲観は人間の本性である
これからの時代をつくるのは、間違いなく「楽観主義」な人
小宮山宏
西洋哲学史の10人~哲学入門(1)ソクラテス 最初の哲学者
ソクラテス:「フィロソフィア」の意味を問う最初の哲学者
貫成人
キリスト教とは何か~愛と赦しといのち(1)「イエス」とは一体誰なのか
「イエス・キリスト」という名前の本当の意味は?
竹内修一

人気の講義ランキングTOP10
豊臣兄弟~秀吉と秀長の実像に迫る(1)史実としての豊臣兄弟と秀長の役割
豊臣兄弟の謎…明らかになった秀吉政権での秀長の役割
黒田基樹
インテリジェンス・ヒストリー入門(1)情報収集と行動
日本の外交には「インテリジェンス」が足りない
中西輝政
逆境に対峙する哲学(1)日常性が「破れ」て思考が始まる
逆境に対峙する哲学カフェ…西洋哲学×東洋哲学で問う矛盾
津崎良典
編集部ラジオ2025(31)絵で語る葛飾北斎と応為
葛飾北斎と応為の見事な「画狂人生」を絵と解説で辿る
テンミニッツ・アカデミー編集部
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(2)バイアスの正体と情報の抑制
『100万回死んだねこ』って…!?記憶の限界とバイアスの役割
今井むつみ
葛飾北斎と応為~その生涯と作品(2)『富嶽三十六景』神奈川沖浪裏への道
『富嶽三十六景』神奈川沖浪裏のすごさ…波へのこだわり
堀口茉純
平和の追求~哲学者たちの構想(1)強力な世界政府?ホッブズの思想
平和の実現を哲学的に追求する…どんな平和でもいいのか?
川出良枝
「重要思考」で考え、伝え、聴き、議論する(1)「重要思考」のエッセンス
重要思考とは?「一瞬で大切なことを伝える技術」を学ぶ
三谷宏治
熟睡できる環境・習慣とは(4)起きているときを充実させるために
夜まとめて寝なくてもいい!?「分割睡眠」という方法とは
西野精治
学力喪失の危機~言語習得と理解の本質(2)言葉を理解するプロセスとスキーマ
なぜ子どもは教えられても理解できないのか?鍵はスキーマ
今井むつみ