●がんの告知と著書『悲嘆とケアの神話論』の完成
―― こんにちは。
鎌田 こんにちは。
―― 本日は鎌田東二先生に、大国主神(オオクニヌシノカミ)について講義をいただきたいと思います。鎌田先生、どうぞよろしくお願いいたします。
鎌田 よろしくお願いします。
―― 鎌田先生は著書でも公表されていますが、2022年12月にがんの告知を受けられたということですね。
鎌田 そうです。2022年10月末にひどい腹痛と、腹が膨張してゴロゴロと鳴る状態があり、その痛みと、食事のたびに腹がゴロゴロ鳴ることが頻繁に起こるようになって、どうもおかしいと思ったのです。医者に診てもらっても、胃カメラを飲んでも、異常はない。腫瘍マーカー検査でも異常はない。それでも「やはりおかしい、原因があるはずだ」と思って、私が住む京都市左京区にある日本バプテスト病院というキリスト教の病院に行って、その日に「CT検査をしますか」と言われたので「すぐにしてください」と頼んだのです。
そのCT検査で、小腸と大腸がぶつかるところ(盲腸のあたり)で、かなり大きながんが見つかった。小腸がふくれ上がって、詰まっているわけです。ヘドロのような状態になっているところにバーンとぶつかって傷がついて、細胞がどんどん悪性化しているという状態かと思います。
それが見つかったものですから、すぐに手術をするという手順になって、翌年(2023年)1月に手術をしました。その頃も含めて、この2年ほどのコロナ禍の時期に、大国主神のことをよく考えるようになったのです。
―― まさに今日は、その大国主神が、例えば病気やケアといったことにどのような意味合いを持ってくるかという観点でお話をお聞きしたいと思います。ご病気が見つかってから書かれたのが、著書『悲嘆とケアの神話論ー須佐之男と大国主』(春秋社)です。
鎌田 これは私の遺言として、昨年(2022年)12月28日頃からまとめ始めて1月4日まで、ほぼ1週間で完成させました。
―― すごいスピードですね。
鎌田 多少は寝ていますが、ずっと机に座りっぱなしで、我ながら「この執念はすごいな」と思うほど、すさまじい集中力でまとめ上げました。
●大国主神の自己回復力をメッセージとして現代に生かしたい
鎌田 私自身は須佐之男(スサノオ)の子分を自称してきましたので、スサ...