神話の「世界観」~日本と世界
この講義シリーズは第2話まで
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
スサノヲ神話は火山現象?…寺田虎彦の地球科学的な解釈
神話の「世界観」~日本と世界(5)寺田寅彦の日本神話解釈
鎌田東二(京都大学名誉教授)
物理学者・寺田寅彦はかつて「地球物理学的にわが国の神話を見ていくと、日本の国土にふさわしい自然現象が随所に見られる」と述べた。それはどういうことなのか。話は彼が指摘する日本神話の具体的解釈へと進んでいく。(全8話中第5話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツTV編集長)
時間:15分21秒
収録日:2020年12月7日
追加日:2021年10月17日
≪全文≫

●わが国の神話は日本の風土に則ったもの


鎌田 少し話が横道に逸れて、生命の不老不死の起源の話になりましたが、話を元に戻します。寺田寅彦の「スカンジナヴィア神話と日本神話の間の対比」ですが、彼は日本のことをどう言っているか。寺田寅彦の「神話と地球物理学」の1節では、こう言っています。

「それで、わが国の神話伝説中にも、そういう目で見ると、いかにも日本の国土にふさわしいような自然現象が記述的あるいは象徴的に至るところにちりばめられているのを発見する。

 まず第一に、この国が島国であることが神代史の第一ページにおいてすでにきわめて明瞭に表現されている。また、日本海海岸には目立たなくて太平洋岸に顕著な潮汐の現象を表象する記事もある。

 島が生まれるという記事(国産み神話のこと)なども、地球物理学的に解釈すると、海底火山の噴出、あるいは地震による海底の隆起によって海中に島が現れ、あるいは暗礁が露出する現象、あるいはまた河口における三角州の出現などを連想させるものがある」

 日本という島国ができていく地球科学的な生成の過程は、例えばプレートテクトニクスという理論によって、今は科学的にほぼ解明されています。そのような観点で神話の物語を見ていくと、火の神の物語とは火山の噴火であるとか、あるいは神々が日本という国を生んでいく物語は海底火山の隆起であるなどと解釈できる、と言っています。

 そして、スサノヲ神話についてこう述べています。

「なかんずく速須佐之男命に関する記事の中には、火山現象を如実に連想させるものがはなはだ多い」

 つまり、スサノヲ神話とは火山現象であるというのです。

―― なるほど。

鎌田 例えば、「その泣きたもうさま」について、『古事記』の中には小さいときからひげが胸先まで伸びるまで泣き叫んでいたという記述があるのですが、このように言うわけです。

「『その泣きたもうさまは、青山を枯山なす泣き枯らし、河海はことごとに泣き乾(ほ)しき』というのは、何より適切に噴火のために草木が枯死し、河海が降灰のために埋められることを連想させる。噴火を地神の慟哭と見るのは適切な譬喩であると言わなければなるまい」。

 それから、スサノヲノミコトがアマテラスオオミカミに会いに...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「哲学と生き方」でまず見るべき講義シリーズ
「50歳からの勉強法」を学ぶ(1)大人の学びの心得三箇条
大人の学び・3つの心得=自由、世間が教科書、孤独を覚悟
童門冬二
楽観は強い意志であり、悲観は人間の本性である
これからの時代をつくるのは、間違いなく「楽観主義」な人
小宮山宏
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み
なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み
今井むつみ
今こそ問うべき「人間にとっての教養」(1)なぜ本を読むことが教養なのか
『人間にとって教養とはなにか』に学ぶ教養と本の関係
橋爪大三郎
死と宗教~教養としての「死の講義」(1)「自分が死ぬ」ということ
世界の宗教は死をどう考えるか…科学では死はわからない
橋爪大三郎
「アメリカの教会」でわかる米国の本質(1)アメリカはそもそも分断社会
「キリスト教は知らない」ではアメリカ市民はつとまらない
橋爪大三郎

人気の講義ランキングTOP10
中国共産党と人権問題(1)中国共産党の思惑と歴史的背景
深刻化する中国の人権問題…中国共産党の思惑と人権の本質
橋爪大三郎
エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(1)サイバー・フィジカル融合と心身一如
なぜ空海が現代社会に重要か――新しい社会の創造のために
鎌田東二
内側から見たアメリカと日本(7)ジャパン・アズ・ナンバーワンの弊害
ジャパン・アズ・ナンバーワンで満足!?学ばない日本の弊害
島田晴雄
歴史の探り方、活かし方(7)史料の真贋を見極めるために
質疑編…司馬遼太郎の「史料読解」をどう評価する?
中村彰彦
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み
なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み
今井むつみ
熟睡できる環境・習慣とは(2)酒、コーヒー、ブルーライトは悪者か
ブルーライトは悪者か?近年分かった「第3の眼」との関係
西野精治
習近平中国の真実…米中関係・台湾問題(1)習近平の歴史的特徴とは?
一強独裁=1人独裁の光と影…「強い中国」への動機と限界
垂秀夫
習近平―その政治の「核心」とは何か?(1)習近平政権の特徴
習近平への権力集中…習近平思想と中国の夢と強国強軍
小原雅博
経験学習を促すリーダーシップ(1)経験学習の基本
成長を促す「3つの経験」とは?経験学習の基本を学ぶ
松尾睦
エンタテインメントビジネスと人的資本経営(2)日本人が知らない世界エンタメ市場
実は「コンテンツ世界収益ベストテン」に日本勢が5つも!
水野道訓