火山防災のため知っておくべきこと
この講義シリーズは第2話まで
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
ハワイ・キラウエア火山の噴火が示す溶岩流被害の甚大さ
火山防災のため知っておくべきこと(3)溶岩流
科学と技術
藤井敏嗣(東京大学名誉教授/環境防災総合政策研究機構・副理事長 兼 環境・防災研究所長/山梨県富士山科学研究所長)
火山噴火に伴う現象としては、溶岩流について知っておくことも重要である。溶岩流は吹き上がったマグマが火口から溢れ出て、山の斜面を降りてくる現象だ。流れていく速度は遅いが、森林や居住地を覆うと、復旧は不可能である。溶岩流による災害に備えるためにも、その性質を適切に理解しておこう。(全6話中第3話)
時間:6分27秒
収録日:2019年3月29日
追加日:2019年6月5日
カテゴリー:
≪全文≫

●溶岩流に資産が埋もれたら、回収することはもはや不可能


 さて、次は溶岩流です。この写真は伊豆大島の1986年の噴火の様子なのですが、山頂部でマグマが噴き上がり、火口をマグマが全部埋め立てた後、溢れ出て、三原山の斜面を流れていきました。これには1200度ほどの温度がありました。火口付近には普通、人はいないので、溶岩流に飲み込まれて被害に遭うことはめったに起こりません。

 しかし、場所によっては、こうした溶岩流の中に家が埋もれてしまったり、溶岩流の熱で、建物が燃え上がってしまうこともあります。また、森林地帯に溶岩流が流れると、その森林が完全に消滅してしまうこともあります。

 溶岩の速度は大抵の場合は、人が歩く速度か、それ以下です。ですから、溶岩が追い付いてきて、犠牲になるということはほとんど考えなくてよく、命を守るために溶岩から逃げることはそれほど難しいことではありません。ただし、いったん、溶岩流の中に資産が埋もれてしまうと、それを回収することはおよそ不可能です。そのため、どのように溶岩流が流れてくるかということをきちんと知る必要があります。


●ハワイ・キラウエア火山の噴火で、溶岩流は街を飲み込んだ


 ハワイにはキラウエア火山という非常に有名な火山がありますが、2018年5月にそこで噴火が起こりました。

 上の図は地震の回数を示しているのですが、4月30日に急に地震が起き、住宅地の真下辺りで地震が活発化しました。そうすると、もうその3日後には左下の写真にあるように地面に割れ目ができ、そこから最初は水蒸気が出て、あっという間にマグマが噴き出しました。その後、同年の8月まで、溶岩流が流れ続けました。このように、溶岩流の噴火は、いつ始まるかを以前から予想できるわけではなく、ほんの数日前にしか分からないこともあります。

 これがキラウエア火山の噴火の全体像です。左の方にHalemaumau(ハレマウマウ)クレーターと書いてあるところがあります。これは普段、観光客がいつも訪れる、カルデラの火口のあるところです。また、そこから20キロぐらい離れたところにPuuOo(プウオオ)と書いてあるところがあります。...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「科学と技術」でまず見るべき講義シリーズ
未来を知るための宇宙開発の歴史(1)宇宙開発の流れを概観する
宇宙開発の歴史、そして未来へ…6枚の写真で概観する
川口淳一郎
「海の哺乳類」の生き残り作戦(1)分類と海牛目の特徴
「海の哺乳類」が海の中で行った「生き残り作戦」とは
田島木綿子
海底の仕組みと地球のメカニズム(1)海底の生まれるところ
地球上の火山活動の8割を占める「中央海嶺」とは何か
沖野郷子
「宇宙の創生」の仕組みと宇宙物理学の歴史(1)宇宙の階層構造
「宇宙の階層構造」誕生の謎に迫るのが宇宙物理学のテーマ
岡朋治
航空機事故ゼロをめざして(1)フラッター現象とは何か
零戦の開発段階で起きたフラッター現象…事故の教訓とは
鈴木真二
進化生物学から見た「宗教の起源」(1)宗教の起源とトランス状態
私たちにはなぜ宗教が必要だったのか…脳の働きから考える
長谷川眞理子

人気の講義ランキングTOP10
経験学習を促すリーダーシップ(4)成功を振り返り、強みを伸ばす
なぜ強みが大事なのか?ドラッカー、西田幾多郎の答えは
松尾睦
編集部ラジオ2025(22)長谷川眞理子先生の「子育て」講義
生物学からわかる「ヒトの配偶や子育て」で大切なこと
テンミニッツ・アカデミー編集部
大人の学び~発展しつづける人生のために(1)「Unlearn(アンラーン)」とは何か
見方を変える!生き方を変える!そのためのアンラーン
為末大
「集権と分権」から考える日本の核心(7)人間の性と今後の「集権と分権」
ロシアを見れば明らか…正義を唱えても優るのは人間の性
片山杜秀
習近平中国の真実…米中関係・台湾問題(1)習近平の歴史的特徴とは?
一強独裁=1人独裁の光と影…「強い中国」への動機と限界
垂秀夫
ヒトは共同保育~生物学から考える子育て(1)動物の配偶と子育てシステム
ヒトは共同保育の動物――生物学からみた子育ての基礎知識
長谷川眞理子
未来を知るための宇宙開発の歴史(11)地球にない宇宙資源を活用する時代へ
月で生活できる!? 地球では入手困難な宇宙資源の獲得へ
川口淳一郎
トランプ・ドクトリンと米国第一主義外交(3)世界史の転換点としてのドクトリン
トランプ・ドクトリンの次の段階とイランへの空爆の意味
東秀敏
健診結果から考える健康管理・新5カ条(1)血管をより長く守ることが重要な時代
健康診断の結果が悪い人が絶対にやってはいけないこと
野口緑
中国共産党と人権問題(1)中国共産党の思惑と歴史的背景
深刻化する中国の人権問題…中国共産党の思惑と人権の本質
橋爪大三郎