火山の仕組みを知る
この講義シリーズの第1話
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
短期的予測はほぼできるが…火山噴火予知の現状
火山の仕組みを知る(4)噴火予知あるいは噴火警報の話
藤井敏嗣(東京大学名誉教授/環境防災総合政策研究機構・副理事長 兼 環境・防災研究所長/山梨県富士山科学研究所長)
噴火に対して数十年のタイムスパンにおける中長期的予測は困難だが、噴火の予兆を利用した短期的予測は可能である。東京大学名誉教授の藤井敏嗣氏は、噴火予知の現状をそのように解説する。ただし、噴火の予兆は多くの場合、直前にしか現れないため、予測ができるのはせいぜい数時間から数日前からだという。(全4話中第4話)
時間:11分31秒
収録日:2018年4月16日
追加日:2018年6月1日
カテゴリー:
≪全文≫

●火山噴火の中長期的な予測は困難である


 4回目の今回は、火山噴火の予知が可能なのかどうかということと、現在気象庁が出している噴火警報について、お話をします。

 まずは、歴史的な記録から、数十年という中長期的なスパンにおいて、いつ頃火山が噴火するかを予知できるかどうかを、考えてみます。

 この図の左側に書いてあるのが、富士山の噴火の歴史です。古文書によって「この年に確実に噴火した」ということが分かっているのが、赤丸で示されているものです。数えると、全部で10個あります。この分布を見ると、例えば飛鳥時代から奈良・平安時代にかけては、数十年に1回ずつ噴火をしていることが分かります。その後は結構まばらになっています。そして、1707年に発生した貞観の噴火の後は、現在までの300年の間、確実に休んでいます。

 歴史的記録に関しては、江戸時代、あるいは1400年代や1500年代から、かなりしっかりした記録が残っています。しかしながら、1100年から1400年の間は、ちゃんとした歴的な記録はあまりありません。この間は戦乱の時代でまだ国がしっかりと統一されていなかったからだと思います。

 ですから、記録がしっかりしていなかった時期に、噴火が本当になかったのかはよく分かっていません。中世という時代は古文書が圧倒的に少なく、歴史学的にも何が起こっていたのかよく分からない時代になります。

 おそらくこの時代にも噴火はあったと思われます。しかしながら最近までの300年間に噴火していないことは確実です。したがって、富士山の噴火はすごく不規則であるということが分かります。これは、1000年くらいのスパンで見た場合にいえることです。

 図の右側のグラフは、明治時代以降の100年ほどの間に発生した浅間山の噴火の回数を数えたものです。1940年代から60年代にかけては、浅間山は年間に数百回の爆発をする火山でした。ところが1973年の噴火以降、10年に1回噴火するかしないかという火山に変わりました。ですから、この100年を単位としてみても、突然に噴火をしなくなるということもあるのです。

 桜島の場合は逆に、1955年から毎年噴火をしているのですが、それ以前は数十年休んでいた時期もあります。火山の活動はそれくらい不規則なものですから、中長期的な予測を行うのが非常に難しいことを分かってい...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「科学と技術」でまず見るべき講義シリーズ
ChatGPT~AIと人間の未来(1)ChatGPTは何ができて、何ができないか
ChatGPTは考えてない?…「AIの回答」の本質とは
西垣通
社会はAIでいかに読み解けるのか(1)経済学理論の役割
AIやディープラーニングによって社会分析の方法が変わる
柳川範之
レアメタルの光と影(1)イントロ
イノベーションがレアメタルをコモンメタルにする
岡部徹
ヒトの性差とジェンダー論(1)「性」とは何か
MLBのスーパースターも一代限り…生物学から迫る性の実態
長谷川眞理子
「宇宙の創生」の仕組みと宇宙物理学の歴史(1)宇宙の階層構造
「宇宙の階層構造」誕生の謎に迫るのが宇宙物理学のテーマ
岡朋治
本当によくわかる「量子コンピュータ入門」(1)量子コンピュータとは何か
「量子コンピュータ」はどういうもので、何に使えるのか
武田俊太郎

人気の講義ランキングTOP10
逆境に対峙する哲学(1)日常性が「破れ」て思考が始まる
逆境にどう対峙するか…西洋哲学×東洋哲学で問う知的ライブ
津崎良典
編集部ラジオ2025(32)哲学者たちが考えた平和追求
反EU、反国連の時代に再考!「哲学者たちの平和追求」
テンミニッツ・アカデミー編集部
近現代史に学ぶ、日本の成功・失敗の本質(6)東條内閣で行われた行政改革
悲惨な末路につながった東條英機内閣での兼職と省庁再編
片山杜秀
豊臣兄弟~秀吉と秀長の実像に迫る(3)秀吉出世譚の背景
武闘派・秀吉として出世…織田家中で一番の武略者の道
黒田基樹
生成AI「Round 2」への向き合い方(1)生成AI導入の現在地
生成AIの利活用に格差…世界の導入事情と日本の現状
渡辺宣彦
戦争とディール~米露外交とロシア・ウクライナ戦争の行方
「武器商人」となったアメリカ…ディール至上主義は失敗!?
東秀敏
平和の追求~哲学者たちの構想(5)カント『永遠平和のために』
カント『永遠平和のために』…国連やEUの起源とされる理由
川出良枝
危機のデモクラシー…公共哲学から考える(1)ポピュリズムの台頭と社会の分断化
デモクラシーは大丈夫か…ポピュリズムの「反多元性」問題
齋藤純一
葛飾北斎と応為~その生涯と作品(4)葛飾応為の芸術と人生
親娘で進歩させた芸術…葛飾応為の絵の特徴と北斎との比較
堀口茉純
日本人が知らない自由主義の歴史~前編(1)そもそも「自由主義」とは何か
消極的自由と積極的自由?…なぜ自由主義がわかりづらいか
柿埜真吾