地震を知って防災に生かす
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
地震のメカニズムは?マグニチュードと震度の違いとは?
地震を知って防災に生かす(1)地震のメカニズム
纐纈一起(東京大学地震研究所 名誉教授/理学博士)
なんとなく知っているようだが、いざ説明しようとするとできない科学知識はいろいろある。その筆頭が「地震」のメカニズムではないだろうか。そもそも地震と地震動の違いは? マグニチュードと震度はどう違うのか? 東京大学地震研究所・纐纈一起教授が、写真や地図などを交え、明快に解説する。(第1話目)
時間:12分51秒
収録日:2015年12月22日
追加日:2016年2月15日
カテゴリー:
≪全文≫

●地震と地震動、マグニチュードと震度とは


 東京大学地震研究所の纐纈一起と申します。今日は、地震について基本的なところをご説明したいと思います。

 まず1回目として、地震とは何かということをご説明したいと思います。「地震」という字から考えて、地面の揺れと捉える方が多いと思いますが、専門家の間では地震は、「地球を構成している岩石の一部分に起こる急激な運動」という意味合いになります。何か地中で起こっている不思議な現象という感じでしょうか。地震の規模の指標としては、マグニチュードという言葉が使われます。結構長い言葉なので、短く表記するときは、アルファベットの大文字のMのイタリック体が使われます。

 それに比べて、もともとの字の意味の地面の揺れのことは、「地震動」といいます。地震から発生する地震波によって、地表あるいは地中が揺れる現象のことです。この地震動あるいは揺れの強さの指標は、皆さんもよくご存じのように、震度という言葉で表示されます。

 ですから、一つの地震を考えるとき、マグニチュードは一つしかありませんが、震度については、各地にその地震波が伝わっていくので、たくさん存在します。


●地面の下で何が起こると地震になるのか


 では、地球を構成している岩石の一部分に起こる急激な運動とは何かについて、次にご説明したいと思います。

 アメリカ西海岸における20世紀初頭の大地震に、1906年のサンフランシスコ地震があります。マグニチュード8.3という、かなり大きな地震でした。起こったのはカリフォルニアですが、ここにはサンアンドレアス断層というものが存在します。この断層に、写真で示すような最大6.4メートルの右ずれ変位が現れました。

 断層自体はもともと存在していたものですが、この地震によってさらに6.4メートルずれたことが発見され、調査に当たったジョンズ・ホプキンス大学の地質学教授であるリード氏が、地震の原因として「弾性反発説」を発表しました。

 何らかの要因で地殻が徐々にひずんでいって、ひずみが限界に達すると、地中の弱い面である断層に沿って両側の岩盤がひずみを解消する方向に急激にずれ動き、地震になるという説です。この急激なずれは「断層運動」と呼ばれ、今日では地震の確立した解釈になっています。

 砂漠地帯では右下のような図面になりますが、サンアンド...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「科学と技術」でまず見るべき講義シリーズ
五島列島沖合の海没処分潜水艦群調査(1)目的と潜水艦史
海底に突き刺さる旧日本海軍の潜水艦「伊58」を特定!
浦環
巨大地震予知の現在地と私たちにできること(1)地震予知研究と前兆すべり
地震予知に挑む!確かな前兆現象を捉える画期的手法とは
梅野健
「宇宙の創生」の仕組みと宇宙物理学の歴史(1)宇宙の階層構造
「宇宙の階層構造」誕生の謎に迫るのが宇宙物理学のテーマ
岡朋治
本当によくわかる「量子コンピュータ入門」(1)量子コンピュータとは何か
「量子コンピュータ」はどういうもので、何に使えるのか
武田俊太郎
水から考える「持続可能」な未来(1)気候変動の現在地
最悪10メートル以上海面上昇…将来に禍根残す温暖化の影響
沖大幹
社会はAIでいかに読み解けるのか(1)経済学理論の役割
AIやディープラーニングによって社会分析の方法が変わる
柳川範之

人気の講義ランキングTOP10
中国共産党と人権問題(1)中国共産党の思惑と歴史的背景
深刻化する中国の人権問題…中国共産党の思惑と人権の本質
橋爪大三郎
プロジェクトマネジメントの基本(1)国際標準とプロジェクトの定義
プロジェクトマネジメントとは?国際標準から考える特性
大塚有希子
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み
なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み
今井むつみ
内側から見たアメリカと日本(7)ジャパン・アズ・ナンバーワンの弊害
ジャパン・アズ・ナンバーワンで満足!?学ばない日本の弊害
島田晴雄
歴史の探り方、活かし方(7)史料の真贋を見極めるために
質疑編…司馬遼太郎の「史料読解」をどう評価する?
中村彰彦
「重要思考」で考え、伝え、聴き、議論する(1)「重要思考」のエッセンス
重要思考とは?「一瞬で大切なことを伝える技術」を学ぶ
三谷宏治
エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(1)サイバー・フィジカル融合と心身一如
なぜ空海が現代社会に重要か――新しい社会の創造のために
鎌田東二
戦争と暗殺~米国内戦の予兆と構造転換(1)内戦と組織動乱の構造
カーク暗殺事件、戦争省、ユダヤ問題…米国内戦構造が逆転
東秀敏
ChatGPT~AIと人間の未来(1)ChatGPTは何ができて、何ができないか
ChatGPTは考えてない?…「AIの回答」の本質とは
西垣通
熟睡できる環境・習慣とは(2)酒、コーヒー、ブルーライトは悪者か
ブルーライトは悪者か?近年分かった「第3の眼」との関係
西野精治