●世界の震源分布とプレート境界のメカニズム
今回は、日本はなぜ地震国なのかというお話をして、ぜひ皆さんにいろいろ考えていただきたいと思います。
こちらは、世界地図にここ30年ほどの地震を小さな点で描いたものです。点の色は、地震の起こった深さを表します。赤に近い暖かい色ほど浅い地震で、青に近い冷たい色ほど深い地震であることを示します。
見ていただくと、地震の起こる場所が線状に並んでいることが分かります。この線が何を意味するのかということが、1960年代から70年代にかけて地球科学で非常に盛んに研究されました。その結果、分かったのは次のことです。
第1回でご説明したように、地球の表面はプレートと呼ばれる岩盤で覆われ、その境目に地震が起こることになっています。プレートが全部同じ方向に動いていれば何事も起こりません。しかし、それぞれのプレートが勝手な方向に動くと、プレートの境目で衝突が起こります。その衝突により地震が起こる。そのようなメカニズムであるため、地震はプレート境界で起こるということになります。
●世界の地震の約10パーセントが日本で起こるメカニズム
では、日本の付近はどうでしょうか。図を見ていただくと、日本付近にはこれだけたくさんのプレート境界があります。
関係するプレートとしては、太平洋プレートとフィリピン海プレート、それに大陸のプレートであるユーラシアプレートとオホーツクプレートで、この四つが絡む境界がそれぞれにあるわけです。地震が起こるのは境界ですから、それがたくさんある日本は、結果的に地震国になっているというメカニズムです。
世界の地震の約10パーセントが、日本付近で起きています。日本の領域が占める面積は、地球の表面積の1パーセント程度ですから、単純計算すると、世界平均の約10倍の地震が起こるということです。
先ほどの世界地図でご覧いただいた海のプレートは、大陸のプレートに向かって年間数センチの速さで進んでいます。そうすると、そのプレートの運動に伴って、日本列島にもひずみがたまるという現象が起こります。
この図は、国土地理院という機関が、GPSの高性能な観測機械を使って、日本列島にたまっていくひずみの形を実際に観測した結果を、かなり誇張して表現したものです。
40万倍誇張しているために、日本列島は大変なことになっています。海のプレートが陸のプレートを押すことによって、このように日本列島にひずみがたまる。そして、第1回でご説明したように、そのひずみが最終的には断層付近に集中してきて、それが限界に達すると地震が起こってくるわけです。
●日本付近で起こる2種類の地震のタイプ
日本付近の地震を大別すると、いま申し上げました陸の地震を「地殻内地震」と呼びます。海の地震の方は、プレートの境界で直接的に起こる地震なので、「プレート境界地震」と呼ばれています。大きく分けると、主にこの二つの地震のタイプがあるのです。
2種類のタイプの地震を比較すると、プレート境界地震は、プレート境界の断層が一気にすべるという、非常に大規模な現象によるものです。これは地震の中でも頻繁に、数十年から数百年に1回の周期で起こっています。規模も大きく、最大規模マグニチュード8から9ぐらいの地震が起こります。海で起こるため、震源が浅い場合には津波の発生を伴います。
これに比べて地殻内地震はどうでしょう。先ほどGPSの観測結果を見ていただきましたが、プレートの変形によるひずみが地殻内の活断層で解放されると、その種の地震が起こります。プレート運動から見ると、やや間接的な発生であるため、地震が起こる周期は数千年から数万年に1回です。最大規模も海の地震に比べればやや小さく、マグニチュード7から8ぐらいということになります。しかし、これは陸の下で起こりますから、大都市の直下で起こった場合、直下型地震として大きな被害を及ぼします。その典型的な例が、1995年の阪神・淡路大震災でした。
●東日本大震災を特徴付ける5つのポイント
東日本大震災の地震はマグニチュード9ですので、当然、プレート境界地震に当たります。最近の日本の例では、2003年に十勝沖地震というプレート境界の巨大地震が起こっていますが、それに比べても何十倍も大きい規模になります。
東日本大震災を起こした地震のことを「東北地方太平洋沖地震」といいますが、その特徴は5つぐらいあります。
まず、超巨大なプレート境界地震だったということ。そしてご存じのように津波の被害が甚大だったこと。それから、津波に比べると揺れの被害は限定的だったこと。さらに四つ目として、本震後に活発な地震活動が起こり、大きな余震に加え、東北地方以外の地域にも大きな誘発...