地球温暖化のリスクとコスト
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
(会員の方に広告は表示されません)
地球温暖化の将来のリスクを今のコストとして考える難しさ
地球温暖化のリスクとコスト
住明正(理学博士/東京大学名誉教授/東京大学未来ビジョン研究センター 客員研究員)
地球温暖化に関するリスクを列挙することは比較的簡単だが、それを経済的コストで表現することは難しいと、国立研究開発法人国立環境研究所理事長・住明正氏は言う。リスクを将来に起こる可能性として考えた場合、それを現在のコストとしてどう負担するのか。住氏にお話を伺った。
時間:10分15秒
収録日:2015年11月27日
追加日:2016年1月28日
≪全文≫

●将来のリスクをいまのコストとして考えることの難しさ


―― 前回の講義に続き、地球温暖化に対するリスクとコストについて

住 温暖化に関するリスクについては、現在いろいろな形で推定をしています。予想できるリスクの可能性を列挙するのは割と簡単ですが、経済的なコストとして量的に表現していくのはなかなか大変だ、というのが実際のところです。

 いろいろな意味合いで比較しながらコストを算出する難しさがありますし、具体的にどうするのかの(問題もある)。

 例えば災害の場合では、現実にいま起きた災害に関する被害推定額を想定して、それをコストとしています。ですから、現在の災害コストから今後は何パーセントぐらい増えていくという話は割にしやすい。ここで一番問題なのは、将来に起きる災害に対してコストが発生するのは現在なので、時間的にズレが生じることです。

 それが地球温暖化と将来に起きることという点でも、やはり問題になっているわけです。


●将来の価値を現在に換算する「割引率」の問題


住 そこで、「スターン・レビュー(気候変動の経済学、2006年発表)」で有名になった「割引率」という概念が出てきます。将来的な支払額の価値を現在価値でいくらに見積もるのかという話です。

 この割引率が数パーセントもの大きさになってしまうと、将来のプラスもマイナスも、現在において操作できる数字ではなくなります。また逆に、いまお金を使わないことの方が、将来的に大きな価値につながります。そうしたことが、いまや一番大きな問題になっています。

 温暖化対策の問題にしても、「将来世代に対する責任」ということがよくいわれます。結局はいまの問題ではなく、将来の子供や孫の時代、ひいてはその先の世代に対する責任を、現在のわれわれがどう取るのかという問題なのです。

 このことは、まさに判断一つで変わる問題です。将来のコストを割に安くというか、リスクは大きくないと見積もる人は、いまお金を払うことを高いと感じるでしょう。将来の被害が深刻になるだろうと考える人は、やはりいまのうちに少しでも払っておいた方がいいと感じます。そういう問題なのだと思います。

 ですから、割引率をどうするのかということは、理論的に答えが出ていません。(割引率は)現行金利に基づいて算出されるのですが、いまのようにゼロ金利が続いていくと...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
(会員の方に広告は表示されません)
「科学と技術」でまず見るべき講義シリーズ
進化生物学から見た「宗教の起源」(1)宗教の起源とトランス状態
私たちにはなぜ宗教が必要だったのか…脳の働きから考える
長谷川眞理子
社会はAIでいかに読み解けるのか(1)経済学理論の役割
AIやディープラーニングによって社会分析の方法が変わる
柳川範之
現在の宇宙の姿(1)星はなぜ自ら輝くのか
星はなぜ自ら輝くのか…宇宙と銀河の「現在の姿」を概観する
岡村定矩
知能と進化(1)知性と身体性
AI、ディープラーニングとは…知能と身体性は不可分か?
長谷川眞理子
ブラックホールとは何か(1)私たちが住む銀河系
太陽系は銀河系の中で塵のように小さな存在でしかない
岡朋治
発酵はマジックだ!
色を消し、脂を溶かし、水を分解―スゴすぎる発酵の力!
小泉武夫

人気の講義ランキングTOP10
編集部ラジオ2026(31)鶴見太郎先生の「公開収録」のご案内
【公開収録のご案内】鶴見太郎先生:ユダヤ人と世界史…その歴史の教訓とは
テンミニッツ・アカデミー編集部
『オデュッセイア』で読み解く神話の秘密(5)「3つ」で組まれた構造分析
驚くほど似ているギリシアの『オデュッセイア』とインドの『マハーバーラタ』…その謎に迫る
松村一男
仏教とキリスト教が照らし出す日本の宗教(1)神とは何か、そして天皇とは?
日本と世界の「神と信仰」の違いは?…そして天皇の大切な役割
橋爪大三郎
小澤開作と満洲事変・日中戦争(1)少年時代の苦労と五族協和の夢
満洲で「五族協和」に命を懸けた小澤征爾の父・小澤開作
小澤俊夫
ギリシア神話の基本を知る(1)「ゼウス以前」の神々の戦い
ギリシア神話…ゼウスの「父親殺し」とオリュンポス十二神
鎌田東二
「ホメロス叙事詩」を読むために(1)ホメロスを読む
2700年前のホメロスの叙事詩が感動を与え続ける理由
納富信留
人生100年時代の「ライフシフト概論」(1)人生100年時代のインパクト
80歳まで現役でいるために大切なこと…人生100年時代の発想法
徳岡晃一郎
危機のデモクラシー…公共哲学から考える(1)ポピュリズムの台頭と社会の分断化
デモクラシーは大丈夫か…ポピュリズムの「反多元性」問題
齋藤純一
教養としての「ユダヤ人の歴史とユダヤ教」(1)ユダヤ人とは誰のことか
ユダヤ人とは?なぜ差別?お金持ち?…『ユダヤ人の歴史』に学ぶ
鶴見太郎
日本の財政の真実を検証する(3)金利上昇の深刻な影響
金利が上昇した未来を10年スパンで見てみると…何が起きるか?
宮本弘曉