水と地球と人間と~日本と世界の水問題
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支払損害保険金額では東日本大震災を上回ったタイの大洪水
水と地球と人間と~日本と世界の水問題(3)水と気候変動
沖大幹(東京大学大学院工学系研究科 教授)
地球温暖化による気候変動の悪影響は、ほぼ水を通じて人間社会に影響が及ぶ。では、温暖化の将来はどうなるのか。どのような水被害が起こるのか。地球規模の水循環と世界の水資源に関する研究の第一人者である東京大学生産技術研究所教授・沖大幹氏の語る「シリーズ・水と地球と人間と」第3回。(インタビュアー:大上二三雄氏/エム・アイ・コンサルティンググループ株式会社代表取締役)
時間:10分10秒
収録日:2015年3月19日
追加日:2015年11月2日
≪全文≫

●世界の自然災害被害が日本経済に直接影響する時代


大上 いよいよ次は、最近ようやく日本でも関心が高まってきた「地球温暖化と水」の関係についてお話をお願いします。

沖 地球温暖化というと、ヨーロッパで数万人が亡くなった2003年のヒートウェーブ(熱波)が思い起こされるかもしれませんが、決して気温だけの問題ではありません。豪雨が増える、高潮が深刻になる、干ばつになるといった形で、地球温暖化の被害はたいてい水が関連しています。病虫害が増えるのも、水を通じての変化です。気候変動の悪影響は、ほぼ水を通じて人間社会に影響が及ぶのです。

 温暖化によって、ある地域の平均気温が15度から17度になったとしましょう。平均気温17度の地域でも、人は豊かな生活をしています。気温が上がること自体が致命的ではありません。平均気温が2度、3度上がったときに、生活の仕方、建物のあり方、農作物のつくり方を変えていかなくてはなりませんが、その対応ができない国があることが問題です。あまり楽観的なことをいうと油断するかもしれませんが、日本のようにお金も人材も知識もある国は、おそらく何度上がろうとうまくやっていけるだろうと思います。

 しかし一方で、対応できない国や地域も出てくるでしょう。甚大な被害が出るおそれがあります。そのような地域を放っておけないのが、グローバル化の時代です。環境問題全般にわたっていえることですが、自分たちは平気でも、どこかが被害を受ければ他人ごとでは済みません。それどころか、地球温暖化は先進国が出した温室効果ガスの影響なのだから、先進国が全て責任を持って被害を補償してほしいという話にすらなりつつあるのです。

大上 タイの洪水では、日本企業が大きな被害を被り、東日本大震災のときよりもたくさんの損害保険料が払われたと聞きましたが。

沖 東日本大震災では、企業に支払われた地震保険の損害保険金は6000億円から7000億円でした。ところが、タイの洪水では800社ほどが影響を受けましたが、その半数以上が日系企業で、支払保険金額は8000億円から9000億円といわれています。損害保険金の支払総額だけで考えると、2011年は、東日本大震災よりもむしろタイの洪水の方が影響が大きかったのです。世界のどこかで起こった被害が、日本経済にも直接影響を及ぼす時代になっているという証拠の...

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