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技術の優位がビジネスの優位につながるとは限らない?

水ビジネスの動向(2)サービス産業への投資事業

沖大幹
東京大学大学院工学系研究科 教授
概要・テキスト
逆浸透膜を使った海水淡水化技術が低廉化し、水ビジネスの展開が期待されている。しかし、単なる技術提供を超える大型の投資プロジェクトであることや民間が水道事業をすることへの不信感が根強いなど、困難も多い。東京大学生産技術研究所教授・沖大幹氏が、水ビジネスの現状と課題やその本質を解説する。(2015年5月25日開催日本ビジネス協会JBCインタラクティブセミナー講演「水ビジネスとグローバルリスクマネジメント」より、全5話中第2話目)
時間:19:03
収録日:2015/05/25
追加日:2016/05/12
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≪全文≫

●ただ「生きる」ではなく「人間らしく生きる」ために必要な水量


沖 基礎知識の最後のまとめです。われわれは飲み水が必要なのですが、これは1日2~3リットルでいいのです。しかも、2~3リットルというのは、今日地震があったので、皆さん、防災のためにやはり備えなければいけないかなと思われたかもしれませんが、だいたい1日1人分の目安なのです。もしご家族が3人だったら、1日10リットル、3日分で30リットルはためておいてください。30リットルは案外多い量です。

 ところが、本当に直接飲むのはそう多くなく、1人2リットルも飲まないと思います。よほどビールが好きであれば、水に換算したら2リットル超えますが。だいたい、水としては1リットルぐらい飲んでいて、あとは食べ物に含まれていたり、嗜好品の飲料であったり、あともう一つは、食べ物に含まれる直接の水ではなく、食べ物が体の中で代謝して二酸化炭素と水に戻るため、そういう水も合わせて全部で2~3リットルということです。この水は、確かに生きるために不可欠です。もし、この全部をペットボトルの水で飲んでも、だいたい200円か400円ぐらいです。

 この中で、水道水を浄水器に通さずに飲んでいるという方はいますか。あ、いらっしゃらないですね。では、浄水器を通した水を飲んでいるという方はいますか。ああ。では、普通はペットボトルとかウォーターサーバーの水だという方。あ、やはり今日はお金持ちが多いですね。

 水道関係の方と話をすると、やはり意地でも水道水をそのまま飲んでいるという方がずらっといたりします。また環境問題を気にされる方は、ペットボトルの水にはなんとなく罪悪感があると言って飲まない方が多いです。今は水の飲み方はいろいろです。

 逆に、先ほどの話で出た水道水なのですが、使用量は1日2~300リットルで、これ見てもらうと分かるように100倍違うのです。動物として死なないための水は2~3リットルでいいのに、体を洗ったり、服を洗ったり、食器を洗ったり、食材を洗ったり、あとは便器を洗って流すためにその100倍の量を使っているのです。ですから、健康で文化的な生活、人間らしく生きるために、日本では動物として必要な量の100倍の水を使っています。

 ここは大事な点です。水というと、「生きるために必要だよね」というだけではなくて、「豊かに人間...
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