水ビジネスの動向
この講義シリーズは第2話まで
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
「水は心にもいいんだよ」――『星の王子様』
水ビジネスの動向(4)水問題をめぐる感情論
科学と技術
沖大幹(東京大学大学院工学系研究科 教授)
地球環境の持続可能性を高めるには、食料・エネルギー・水の相互関係に注目すべきだ。水に関するさまざまな思い込みは科学的な説明で修正できるが、それでもなお水をめぐる議論は人間の感情に左右される。東京大学生産技術研究所教授・沖大幹氏が考える、これからの環境問題とリスクマネジメントに求められる思想とは何か。(2015年5月25日開催日本ビジネス協会JBCインタラクティブセミナー講演「水ビジネスとグローバルリスクマネジメント」より、全5話中第4話目)
時間:15分28秒
収録日:2015年5月25日
追加日:2016年5月26日
≪全文≫

●模索が進むウォーター・フットプリントの推計手法


沖 時間の関係もあるので先に進みます。ウォーター・フットプリントの話をします。ウォーター・フットプリントの策定に、日本からのエキスパートとして私も参加して、だいたいどんなことが決まったかをお話しします。

 少しテクニカルな話です。ポイントとしてはウォーター・フットプリントというと、先ほどのバーチャル・ウォーターのところで示した、肉1キロに2万倍の水が必要である、米だったら3600倍の水が必要だったということをウォーター・フットプリントなのかと思われると思いますが、あれは量なのです。そういうライフサイクル・アセスメントという枠組みでは、それはインベントリと言われて、影響ではないのです。われわれが知りたいのは、水を使って何が悪いのか、どんな悪影響があるのだというのを、示した量に換算しなさいというのが一つです。これができればいい。でも、なかなか難しいです。私はまだ完璧なウォーター・フットプリントの推計手法はないと思っていますが、今いろいろ研究され提案されている段階です。

 もう一つは、水利用の量的かつ質的な変化を特定することです。どういう意味かというと、例えば、水を30立方メートル取って、30立方メートルを川に返したら、それはもう量的には変化させていないから、ウォーター・フットプリントがゼロかというと、その間に水が汚れます。そうしたら、やはり水を使ったことになるだろう。それはちゃんとウォーター・フットプリントとして評価しなさい、ということです。もっと言うと、温排水のように、温度が取った温度よりも7~8度高くなってしまっているのはまずいだろうということで、その温度の変化分も影響として、質的な変化としてウォーター・フットプリントに計上しなさい、というようになっています。これは、先ほどのCDP(カーボン・ディスクロージャー・プロジェクト)や、WBCSD(ワールド・コンソーシアム・オブ・サステイナブル・ディベロップメント)につながってくるわけです。


●ウォーター・フットプリントは質的影響を定量化する


沖 さらに、私はここが実は面白かったのですが、汚染物質の、大気や水への放出について、水の場合は先ほどの質的変化なのですが、例えば大気に酸性化物質を排出しても、それがどこかで酸性雨になって水を汚し、使える水資源の利...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「科学と技術」でまず見るべき講義シリーズ
進化生物学から見た「宗教の起源」(1)宗教の起源とトランス状態
私たちにはなぜ宗教が必要だったのか…脳の働きから考える
長谷川眞理子
海底の仕組みと地球のメカニズム(1)海底の生まれるところ
地球上の火山活動の8割を占める「中央海嶺」とは何か
沖野郷子
ヒトの性差とジェンダー論(1)「性」とは何か
MLBのスーパースターも一代限り…生物学から迫る性の実態
長谷川眞理子
本当によくわかる「量子コンピュータ入門」(1)量子コンピュータとは何か
「量子コンピュータ」はどういうもので、何に使えるのか
武田俊太郎
「宇宙の創生」の仕組みと宇宙物理学の歴史(1)宇宙の階層構造
「宇宙の階層構造」誕生の謎に迫るのが宇宙物理学のテーマ
岡朋治
知能と進化(1)知性と身体性
AI、ディープラーニングとは…知能と身体性は不可分か?
長谷川眞理子

人気の講義ランキングTOP10
海底の仕組みと地球のメカニズム(1)海底の生まれるところ
地球上の火山活動の8割を占める「中央海嶺」とは何か
沖野郷子
経験学習を促すリーダーシップ(2)経験から学ぶ力
米長邦雄のアンラーニング、弟子の弟子になってV字成長
松尾睦
続・日本人の「所得の謎」徹底分析(1)各国の財政と国民負担
日本と各国の比較…税負担は低いが社会保障の負担は高い
養田功一郎
未来を知るための宇宙開発の歴史(9)宇宙開発を継続するための国際月探査
「国際月探査」とは?アルテミス合意と月探査の意味
川口淳一郎
大統領に告ぐ…硫黄島からの手紙の真実(4)百年後の日本人のために
百年後の日本人のために、共に玉砕する仲間たちのために
門田隆将
第2の人生を明るくする労働市場改革(1)日本の労働市場が抱える問題
シニアの雇用、正規・非正規の格差…日本の労働市場の問題
宮本弘曉
外交とは何か~不戦不敗の要諦を問う(1)著書『外交とは何か』に込めた思い
外交とは何か…いかに軍事・内政と連動し国益を最大化するか
小原雅博
数学と音楽の不思議な関係(1)だれもがみんな数学者で音楽家
世界は音楽と数学であふれている…歴史が物語る密接な関係
中島さち子
「集権と分権」から考える日本の核心(5)島国という地理的条件と高い森林率
各々の地でそれぞれ勝手に…森林率が高い島国・日本の特徴
片山杜秀
「アカデメイア」から考える学びの意義(1)学びを巡る3つの危機
「学びの危機」こそが現代社会と次世代への大きな危機
納富信留