水と地球と人間と~日本と世界の水問題
この講義シリーズは第2話まで
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
沖縄が水不足でも、北海道での節水分は沖縄では使えない
水と地球と人間と~日本と世界の水問題(5)水の七不思議と水の危機
沖大幹(東京大学大学院工学系研究科 教授)
「水問題の市民運動は、おそらく根付かないだろう」――東京大学生産技術研究所教授・沖大幹氏はそう喝破する。いったいなぜだろうか。水危機に対する感情的側面を考えると、意外な思い込みや間違いがいろいろと見えてくる。地球規模の水循環と世界の水資源に関する研究の第一人者・沖大幹氏の語る「シリーズ・水と地球と人間と」第5回。(インタビュアー:大上二三雄氏/エム・アイ・コンサルティンググループ株式会社代表取締役)
時間:11分26秒
収録日:2015年3月19日
追加日:2016年4月7日
≪全文≫

●水問題は複雑ゆえ市民運動は根付きにくい


大上 前回、「水と災害」の話を伺いましたが、今回は、実際に水の危機に陥った際にどのように考えるべきか、「水と危機」について伺いたいと思います。その前に、先生は「水の七不思議」という、非常に面白いことをおっしゃっていますので、その話からお願いします。

沖 水の危機に限らない話ですが、科学的、合理的な判断だけでなく、感情的な判断について考えておく必要があります。頭では分かっていても行動に結び付かないこと、あるいは頭では役に立たないと知っているのに行動してしまうことがあり、そのことを知る方がむしろ大事ではないかと思わせる事例が多いのです。

 例えば、アフリカやインドで水が足りなくて困っている人が居ると聞くと、節水しなくては、と思いがちです。しかし、冷静に考えると、たとえ沖縄で水が足りなくなったとしても、北海道で節水した分が沖縄で使えるわけではありません。これが水問題の難しい点なのです。これに比べると地球温暖化の問題はある意味簡単で、自分が省エネすれば地球温暖化の解決にほんのわずかでも貢献できます。しかし、水問題の解決に何か貢献したいと思っても、実はできることはそれほどないのです。

大上 ないのですね。

沖 ところが、市民運動に慣れていると、「できることから始めよう」という話になります。ただ、その際、自分が無力であるという問題はなかったことにしたいのです。ですから、水問題は案外複雑で、このようなアクションを取ればよいということがはっきりしているわけではないので、市民運動として根付かないのではないかと僕は思っています。


●化石水を取り巻く不思議な話に根拠はない


大上 資料には「七不思議」として、他にもいろいろなことを書いていらっしゃいます。例えば、「化石燃料より化石水が許せない」というのがありますね。

沖 化石水とは昔、気候が湿潤だった時代などにたまった地下水のことです。今はもう地上からの水の浸透がないので増えず、くみ上げた分だけ減っていきます。この化石水に依存した農業が、アメリカ中西部・ロッキー山脈のすぐ東側、パキスタンとインドの国境付近、中国の北部など、世界の幾つかの地域で行われています。この話を聞くと、水が無くなってしまうと大変だから、非循環型の化石水の利用を規制しようと皆さんおっしゃるのです。

 ...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「科学と技術」でまず見るべき講義シリーズ
ChatGPT~AIと人間の未来(1)ChatGPTは何ができて、何ができないか
ChatGPTは考えてない?…「AIの回答」の本質とは
西垣通
進化生物学から見た「宗教の起源」(1)宗教の起源とトランス状態
私たちにはなぜ宗教が必要だったのか…脳の働きから考える
長谷川眞理子
五島列島沖合の海没処分潜水艦群調査(1)目的と潜水艦史
海底に突き刺さる旧日本海軍の潜水艦「伊58」を特定!
浦環
ブラックホールとは何か(1)私たちが住む銀河系
太陽系は銀河系の中で塵のように小さな存在でしかない
岡朋治
社会はAIでいかに読み解けるのか(1)経済学理論の役割
AIやディープラーニングによって社会分析の方法が変わる
柳川範之
水から考える「持続可能」な未来(1)気候変動の現在地
最悪10メートル以上海面上昇…将来に禍根残す温暖化の影響
沖大幹

人気の講義ランキングTOP10
編集部ラジオ2025(29)歴史作家の舞台裏を学べる
歴史作家・中村彰彦先生に学ぶ歴史の探り方、活かし方
テンミニッツ・アカデミー編集部
エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(6)曼荼羅の世界と未来のネットワーク
命は光なのだ…曼荼羅を読み解いて見えてくる空海のすごさ
鎌田東二
歴史の探り方、活かし方(1)歴史小説と史料探索の基本
日本は素晴らしい歴史史料の宝庫…よい史料の見つけ方とは
中村彰彦
内側から見たアメリカと日本(6)日本企業の敗因は二つのオウンゴール
日本企業が世界のビジネスに乗り遅れた要因はオウンゴール
島田晴雄
熟睡できる環境・習慣とは(1)熟睡のための条件と認知行動療法
熟睡のために――認知行動療法とポジティブ・ルーティーン
西野精治
習近平―その政治の「核心」とは何か?(1)習近平政権の特徴
習近平への権力集中…習近平思想と中国の夢と強国強軍
小原雅博
習近平中国の真実…米中関係・台湾問題(1)習近平の歴史的特徴とは?
一強独裁=1人独裁の光と影…「強い中国」への動機と限界
垂秀夫
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み
なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み
今井むつみ
学力喪失の危機~言語習得と理解の本質(1)数が理解できない子どもたち
なぜ算数が苦手な子どもが多いのか?学力喪失の真相に迫る
今井むつみ
続・日本人の「所得の謎」徹底分析(1)各国の財政と国民負担
日本と各国の比較…税負担は低いが社会保障の負担は高い
養田功一郎