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●水ビジネスはもうからない?
沖 皆さま、改めまして、こんばんは。沖と申します。よろしくお願いいたします。
では、水ビジネスの話です。皆さんはビジネス寄りの方が多いと思いますが、水ビジネスという言葉をどこかで聞いたことがあるなという方は、どのくらいいらっしゃいますか。あ、ほとんどないですか。少しはいらっしゃる。
水関係の業界もずっとマイナーだったわけですが、2006、7年ぐらいから経産省を主体として、海外の水ビジネスを頑張ろうということになり、国内で協議会もできました。また、日本経済新聞に週1回ぐらい記事が掲載されたりすると、経済界の皆さんも何かあるのかなと思ってもらえる。そういう状況になってきました。
ただし、それほどうまくいかないものです。そもそも本当にもうかる話というのは、絶対に人に言わないはずです。ですから、わざわざ日経に載せて、国の会議をつくり、経団連で委員会までやってやるのは、もうからないからやっていると思った方がいいのではないか。そのように私が思っている話を今日はします。ただ、そうした話の中に、きっと皆さんには気付いてもらえる、ビジネスの何らかの種があるのではないかという気はしますので、よろしくお願いいたします。
●水は不可欠なのに足りない、それは人が多すぎるから
沖 まず、世界で水が足りない人がたくさんいて困っているという話を聞いたことある方は、どのくらいいらっしゃいますか。そんな問題は知らないという方はいらっしゃいますか。ああ、さすがにそれはないですね。では、水で困っている人はたくさんいるのですが、なぜ水で困るかを、一言で言うとどういうことでしょうか。
参加者 やはり生きてくために必要で、産業用水がいる。
沖 水は不可欠であり、不可欠なのに足りない人がいる。ではなぜ足りない人が出てくるのでしょうか。
参加者 たくさんいるからではないでしょうか。
沖 たくさん必要だから、足りない人が出てくる。ではなぜ、水が足りない場所にわざわざ住むのでしょうか。
参加者 本当ですね。やはり運んでくることができれば、他に生産もできるから。
沖 そうなのです。水は確かに不可欠なのですが、本当に足りないようなところには、人なんか住まないのです。水が足りないのに人が住んでいるのは、一つは都会です。都会は、水がなくても、環境が悪くても、住む所がなくても、それを超える魅力があるので人が集まってくる。日本でも40~50年前にはそういうことが起こっていましたし、世界のメガ・シティでもそういうことが起こっている。ですから、水が足りないのに人が集まってきて、供給が追いつかないのです。
●観測データからグローバルな水の分布が分かる
沖 そういう自然の状態の水に比べて人が多すぎるということ以外に、スライドで示しますのは、ある観測データです。私の研究は、本来はこういうことをやっています。これは、グローバルに水がどこでどのぐらい使われているか、川に水が流れているかを、衛星データや地上の観測データでいろいろ集め、計算した結果です。今、ここに日付が5月と出ています。色の濃いところは水がたくさんある所で、色がないところは水がない所ということになります。
これを見てもらうと、ここにナイル川が見えます。ナイル川の上流は熱帯雨林ですから、サハラ砂漠の中に、ナイル川だけは年中水があることが分かります。また8月は、東南アジアから南アジアの地域というのは水がいっぱいあります。だいたい6月の終わり、7~9月の3カ月間で水が使えるため、米を作っています。
そこで、もう1回スライドを見てもらいます。色の置き方次第ではありますが、水がたくさん流れているところは案外、少ない。もう一度見ましょう。今度は1月からもう1回見ていきます。そうしますと、冬の間というのは水が少ないのですね。ただ、チラチラチラとなってきて、2、3月になってくると、水がだいぶ川に入ってきます。
その水の多い地域がだんだんと北に行くのは、融雪、雪解けが南から始まり、だんだん北に行くからなのです。だから、インドはまだカラカラです。6月の初めでようやくインドネシア半島で水が使えるようになり、バングラデシュでも7、8月くらいには水が使えるようになる。
日本にいると雨が年中降るのは当たり前です。しかし、ご存知の通り、例えば隣の韓国に行っても、日本でもうすぐ始まる梅雨ですが、韓国では雨季を「チャゴマ」と言いますが、それが6~10月ぐらいまであり、この5カ月で年間の雨の7、8割が降ります。ということは、残りの季節は水をためておかないと足りなくなるわけです。これはインドシナなどの、いわゆるモンスーン地域の場合はもっと顕著で、雨季と乾季があります。


