●そもそも「インフラ」とは何か
沖 少し時間が足りないので飛ばしますが、インフラについてです。私は土木、インフラ工学が専門なのですが、「インフラ」と略すと実は意味がありません。「インフラ・レッド」というのは、赤外線のことですね。これは、周波数が低すぎて目に見えない。また、辞書引きますと「インフラ・サウンド」という言葉があります。これも周波数が低すぎて耳に聞こえない。では、「インフラストラクチャー」ですが、一般的に新聞で「インフラ」というと、インフラストラクチャー、社会基盤です。これは、下にありすぎて知覚できないものなのですね。それは、想定通り機能して当たり前ですし、何か問題があったときだけ非難されるのです。
私の大学卒業は30年ぐらい前ですが、インフラそのものは見えませんから、当然花形ではなく、当時は電気や通信が花形でした。同級生に当時、「お前どこに行くの?」と聞いたら「ドコモという会社に行くよ」と言われ、「何それ?」と聞いたら、「携帯電話をやっている」と。「携帯電話って何?」というような時代でした。その後、ドコモは急成長を遂げましたが。
携帯電話も、最初は皆さん、たぶん新しい携帯電話が出るとうれしくて買い替えたり、あるいはメールが通じたり、写真が撮れたりしたらうれしいですよね。だんだんそれが当たり前になって、今はメールを送ったよと言われて10秒以内に届かないと、「あれ?」と思いますでしょう。昔は、3日たっても届かないメールがあったのです。そこは、まさに電気通信もインフラになったということで、僕は個人的に思っていますけども。
もう一つ大事なのが、インフラは撤退がなかなか難しいということです。鉄道を考えてもらうのが分かりやすいのですが、いま路線がある所を無くそうとすると、必ず地元自治体から反対が出ますね。極端なことを言えば、今まで特急が止まっていたのに、止まらなくしようというだけで、ものすごく反対が出ますね。インフラというのは、それだけで社会的な価値やポジションがあるので、上手くいかなかったから簡単に撤退というのが道義的には許されない。もちろん国際的には、海外に行って契約書の通りだからといってやめるのですが、日本の企業はあまりその辺が得意ではなく、ついいろいろサービスをしてしまいたくなるのです。
●水インフラの輸出で陥りやすい思考
沖 も...