水と地球と人間と~日本と世界の水問題
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そのものより運ぶ方が高い―水はローカル財
水と地球と人間と~日本と世界の水問題(2)水と経済 
科学と技術
沖大幹(東京大学大学院工学系研究科 教授)
水リスクマネジメントが、民間主導でグローバルスタンダードになりつつあるという。水リスクマネジメントとは何か。なぜ急激に広まっているのか。地球規模の水循環と世界の水資源に関する研究の第一人者である東京大学生産技術研究所教授・沖大幹氏の語る「シリーズ・水と地球と人間と」第2回。(インタビュアー:大上二三雄氏/エム・アイ・コンサルティンググループ株式会社代表取締役)
時間:11分42秒
収録日:2015年3月19日
追加日:2015年8月13日
≪全文≫

●水はローカルな財である


大上 続いては、水の経済的側面についてお話を伺えますか。

沖 水の惑星といわれる地球で、なぜ水が足りなくなるかといえば、端的に申しますと、使える水が時間的、空間的に偏在しているからです。

 時間的に偏在しているのなら、多いときにためておき、少なくなったら使えばよいのではないか、多い所と少ない所があるなら運べばよいのではないかと思われるでしょう。今では、普通の財はグローバルマーケットがあり、多い所から少ない所へ、需要に応じて運ばれていますから。ところが、水はそれができないのです。

大上 安いからですね。

沖 そうです。どのくらい安いかといえば、上下水道で1立方メートル・1000リットル当たり170円ほどです。工業用水なら23、4円。農業用水は、使った分だけ払うわけではありませんが、負担金を使っている量で割るとだいたい3、4円くらいです。

大上 水は大事なものという意識があったのですが、日本の市場規模でみると存外に小さいですね。

沖 ただ、ペットボトルの水は、例えば1リットル200円としますと、1トン・1000リットルで20万円になります。水道水の約1000倍の値段です。ペットボトルの水はとても高価です。ところが、ペットボトルは年間1人25リットルから30リットルほどしか消費していません。水道水は、その1万倍使っていますから、価格差は1000倍ですが、使用量が1万倍で、市場規模はペットボトルの10倍。上下水道だけで4、5兆円ほどの市場規模になります。日本全体のGDPの1パーセント。それほど小さいわけでもありません。

 他のものと比べても、例えば、古新聞や古雑誌は1キロ10円、1トンで1万円くらい、鉄くずスクラップは1トン2、3万円で取引されています。リサイクルされるとはいえ、ごみである古新聞や鉄くずでさえ、安全な飲み水の約100倍の値段なのです。

大上 2桁安いのですね、水は。

沖 私の所属している生産技術研究所には、レアメタルの世界で有名な岡部徹さんという先生がいます。彼はよく「僕は1グラム数十万円のものを研究している。でも、沖くんは1トンで100円、200円のものを研究しているの? よくそのようなエンジニアリングを続けていられるね」と言うのですが、高いものはあまり取引されないので、レアメタルなどは使用量がもう1...

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