●グーグルとアマゾンのビジネスモデルの違い
デジタルトランスフォーメーションについて、2つ目のポイントとしてぜひ、お話ししたいのは、流通のことです。実はひと月くらい前に、アメリカのグーグル本社やサンフランシスコの大手の百貨店を回って、このデジタル革命と影響を考える機会がありました。
日本ではもちろんですが、アメリカでもアマゾンが非常に伸びてきて、小売業の世界ではアマゾンにどこが対抗するかということが、話題になっていました。そこで、これは私の個人的な印象ですが、日本を代表する百貨店の社長さんたちとグーグルに行って話を聞いた時、非常に彼らの相性がいいのです。
なぜかというと、アマゾンはITを使ってとても先進的なビジネスモデルでやっているのですが、同時に物流に入り、また店舗を購入したりして、まさにネットとリアル両方で展開しようとしています。だから、リアルの小売業とぶつかっていくわけです。
グーグルは、基本的にいわゆるバーチャルの世界だけでやっています。なので、グーグルとアマゾンが組めば、例えば百貨店やコンビニエンスストアはそこに新たな付加価値をつけられるのではないだろうかと、考えられるというのです。そこもまた、グーグルとアマゾンの違いだというような話になりました。
●オフラインへ進出するオフライン企業アマゾンの試み
そういう話を聞きながら印象深かったのは、結局ポイントはオンラインとオフラインということです。部屋でインターネットを使っていろいろ注文するオンラインの世界と、それから店舗であるオフライン、この2つがあるのであって、結局オンラインだけでもオフラインだけでも駄目なのです。アマゾンでいくら注文しても、モノを家まで運んでもらわなければ意味がないわけですから。
そこで今、何が起こっているかというと、オンラインで伸びてきたアマゾンは必死になってオフラインの方に入ろうとしているのです。なぜ、アマゾンがアメリカでも最高峰といわれているホールフーズというスーパーマーケットを買収したのかというと、やはり生鮮品のビジネスをやろうとするば、産地との関係や調達の仕組み、あるいは物流のロジスティクス、場合によっては店舗でお客さんに見せるというところまで含めたオフラインの機能が必要であり、それが欲しかったからです。
アマゾンはそれ以外にもいろいろなオフラインの試みをしていて、アマゾン・ゴーで無人店舗をやろうとしているのは、もちろん実験という意味もあるのでしょうが、店舗でいろいろなオンライン機能をやることによって、さまざまなことができるのではないかと、考えているのだと思います。
私は自分では見に行ってはいないのですが、アマゾンの書店を見に行った人がいました。その人いわく、アマゾンのオフラインの店で印象的だったのは、オンラインの本の評価を生かしている点だったそうです。オンラインで本を注文する場合、顧客の評価があり星が4つ以上だと非常に評価が高いということになりますが、アマゾンのオフラインの書店に行くと、星4つ以上の評価の本がとても分かりやすく、棚に並べてあったそうです。これは、オンラインの上で出てきた情報価値を、オフラインの店で展開するという試みをしているわけです。ですから、アマゾンを見ていると、オンラインからオフラインにどんどん出てくるということが分かるのです。
●オンライン販売を強化して業績を伸ばしたノードストロム
実際の流通業者にとって非常に関心があるのは、オフラインの企業がオンラインに展開を広げていったときに、何ができるかということ、そしてアマゾンに対抗できるのかということです。今回見た中で強く印象に残ったのは、ノードストロムというアメリカ有数の百貨店です。
最近、シアーズ・ローバックが倒産したということもあり、いわゆる旧来の総合百貨店、総合スーパーといったところは、ビジネスが非常に厳しいといわれています。しかし、よく中身を見ると、ノードストロムとかメーシーズのような典型的な名門店のチェーンストアというのは、決して業績は悪化しておらず、むしろ少しずつ伸びているところもあるのです。
ノードストロムは日本でいう高級百貨店を想像してもらえれば分かるのですが、いわゆる重衣料である背広や女性のファッションアイテム、鞄、化粧品などを集中的に売っているところです。そのノードストロムの方と話をしていると、オンライン販売を強化しているということでした。オンラインのサイトがあって、いろいろ注文することができるようになっており、それも含めて業績が良くなっているのだそうです。しかし、実際に店に行ってみると、なんとなく閑散としており、店頭で商品を手に取って見て買う人は、前よりも減っているのです。ということは、やはりオンラ...