水と地球と人間と~日本と世界の水問題
この講義シリーズは第2話まで
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
古い地下水ほど良質だという気になるのはなぜ??
水と地球と人間と~日本と世界の水問題(8)水問題は「気持ち」の問題
沖大幹(東京大学大学院工学系研究科 教授)
なぜ水の輸入は許せず、ワインの輸入なら許せるのか。そこには非合理的な「気持ち」の問題が大きく絡んでいる。地球規模の水循環と世界の水資源に関する研究の第一人者である東京大学生産技術研究所教授・沖大幹氏の語る「シリーズ・水と地球と人間と」第8回最終話。(インタビュアー:大上二三雄氏/エム・アイ・コンサルティンググループ株式会社代表取締役)
時間:9分24秒
収録日:2015年3月19日
追加日:2016年4月28日
≪全文≫

●「水は駄目でワインなら良い」は非合理的


── 『水危機 ほんとうの話』に書かれている「水の七不思議」の中でも、「フランス産のワインと水」の話が面白かったですね。

沖 例えば、このペットボトルの水はフランスから来ていますが、これが許せないという方が多いのです。日本にもおいしい水があるのだから、わざわざフランスから持ってこなくてもいいのではないかという意見です。では、ワインはどうですか? と聞くと、ワインはフランス産の方がおいしいから、水とは違うと言います。しかし、水も嗜好品だと考えたら、フランス産の水を買ってもいいではないですか。水は駄目でワインなら良いというのは、どう考えても合理的ではありません。

 水は、自分たちの土地にもふんだんにあるのだから、よそからもらわなくてもいいという愛着が強いのでしょう。ですから、バーチャルウォーターという概念を使って、日本は食料輸入という形で多くの水を輸入しているようなものだと説明すると、皆さん驚くのです。水だけは他人に頼らず、自分たちで賄っているつもりだったのに、それほど多くを頼ってしまっているのかと感じるのです。水に関しては、他人に依存したくないという気持ちがあるのでしょう。面白いです。


●水には、公共性を強く感じる人が多い


── もう一つ、「水道事業は官がやるべきだと思いがちだ」という七不思議もありましたが、例えば蓼科では三井不動産グループが蓼科高原三井の森水道事業を手掛けるなど、民間が水事業を行う例もあります。これなども面白い話です。

沖 それは、皆さんが水に対して公共性を強く感じているからだと思います。考えてみると、昔は井戸から自分で水をくんでいました。しかし、それは、民間よりも官がやる方がそのイメージに近いのかもしれません。あるいは、水のようなもので民間企業が金もうけをしてほしくないと思っているのかもしれません。衣食住でもお互いもうけ合って世の中が成り立っているのに、水だけは駄目というのは面白いです。

── あり得ないですね。

沖 そういうものが研究対象だという自覚を持って、「合理的に考えればこうだけれども、あなたの気持ちも分かります」というところから始めないと、水問題の解決はうまくいかないと私は思っています。


●食料自給よりエネルギー自給が問題だ


── 食糧自給率よりも・・・。

沖 仮想水貿易...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「科学と技術」でまず見るべき講義シリーズ
ブラックホールとは何か(1)私たちが住む銀河系
太陽系は銀河系の中で塵のように小さな存在でしかない
岡朋治
「宇宙の創生」の仕組みと宇宙物理学の歴史(1)宇宙の階層構造
「宇宙の階層構造」誕生の謎に迫るのが宇宙物理学のテーマ
岡朋治
進化生物学から見た「宗教の起源」(1)宗教の起源とトランス状態
私たちにはなぜ宗教が必要だったのか…脳の働きから考える
長谷川眞理子
「海の哺乳類」の生き残り作戦(1)分類と海牛目の特徴
「海の哺乳類」が海の中で行った「生き残り作戦」とは
田島木綿子
本当によくわかる「量子コンピュータ入門」(1)量子コンピュータとは何か
「量子コンピュータ」はどういうもので、何に使えるのか
武田俊太郎
現在の宇宙の姿(1)星はなぜ自ら輝くのか
宇宙に関するニュースを理解するために宇宙の姿を学ぶ
岡村定矩

人気の講義ランキングTOP10
徳と仏教の人生論(1)経営者の条件と50年間悩み続けた命題
宇宙の理法――松下幸之助からの命題が50年後に解けた理由
田口佳史
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み
なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み
今井むつみ
エンタテインメントビジネスと人的資本経営(6)評価制度設計と「夢」の重要性
なぜ二本立ての評価制度が必要か…多種多様な人材の評価法
水野道訓
いま夏目漱石の前期三部作を読む(1)夏目漱石を読み直す意味
メンタルが苦しくなったら?…今、夏目漱石を読み直す意味
與那覇潤
経験学習を促すリーダーシップ(1)経験学習の基本
成長を促す「3つの経験」とは?経験学習の基本を学ぶ
松尾睦
ケルト神話の基本を知る(1)ケルト地域と3つの神話群
ケルト神話とは…ダーナ神族、アルスター神話、フィアナ神話
鎌田東二
学力喪失の危機~言語習得と理解の本質(2)言葉を理解するプロセスとスキーマ
なぜ子どもは教えられても理解できないのか?鍵はスキーマ
今井むつみ
東大ハチ公物語―人と犬の関係(1)上野英三郎博士とハチ
忠犬ハチ公で哲学する…人と犬の関係から見えてくる道徳論
一ノ瀬正樹
クーデターの条件~台湾を事例に考える(1)クーデターとは何か
台湾でクーデターは起きるのか?想定シナリオとその可能性
上杉勇司
習近平中国の真実…米中関係・台湾問題(1)習近平の歴史的特徴とは?
一強独裁=1人独裁の光と影…「強い中国」への動機と限界
垂秀夫