「ホメロス叙事詩」を読むために
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ギリシア神話の基礎に不死の神と人間の死という対比がある
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2700年前のホメロスの叙事詩が感動を与え続ける理由
「ホメロス叙事詩」を読むために(1)ホメロスを読む
納富信留(東京大学大学院人文社会系研究科教授)
「ホメロス叙事詩」といえば、西洋古典中の古典。あまりの名高さに本棚にあっても「積ん読」してしまっている方も多いのではないだろうか。このシリーズ講義では、さまざまな勘どころ・読みどころを押さえ、日本語で読む『イリアス』『オデュッセイア』の世界を案内する。(全9話中第1話)
時間:16分31秒
収録日:2020年7月3日
追加日:2020年8月30日
≪全文≫

●ホメロスの感動をソネットにした夭折の詩人ジョン・キーツ


 それでは、これから6回の講義を行っていきます。タイトルは「ホメロス叙事詩を読むために」。1回目の今日は、「ホメロスを読む」というお話をさせていただきます。

 ホメロスというギリシア最古の詩人の名前は聞いたことがあると思います。彼の作品で、現在まで残っている『イリアス』と『オデュッセイア』について、皆さんにご紹介していきます。

 少し時代は下りますが、18世紀末から19世紀初めにイギリスで活躍したロマン派の詩人、ジョン・キーツの詩を一つ、最初にご紹介します。この人の名前もご存じの方が多いと思いますが、若くして亡くなった詩人です。彼が21歳ぐらいのとき友人の家を訪れて、夜明けまでかかってホメロスの『オデュッセイア』を読んだ、その感動をそのまま詩にしたものがあります。

 "On First Looking Into Chapman’s Homer"(チャップマンのホメロスを初めて見て)というソネット(14行詩)です。このチャップマンというのは、シェイクスピアと同じ時代に活躍した詩人ジョージ・チャップマンのことで、ホメロスの詩を英語に訳した人です。それを若きキーツが読んで、感動の詩にしたということです。

 14行ありますが、最初の2連を音読してみます。

Much have I travell'd in the realms of gold,
And many goodly states and kingdoms seen;
Round many western islands have I been
Which bards in fealty to Apollo hold.

私は、黄金(こがね)なす領域をたくさん旅した。
数多くの立派な有様や王国を目にした。
西方の島々を数多く経めぐったが、それは
吟遊詩人たちがアポロンへの忠義で保持するもの。

 これは、オデュッセウスの旅を自分も経験して、それを詩にしたということで、この詩自体が英文学の一つの傑作に数えられているものです。


●2700年前の詩人が時代を超えた感動を与え続ける理由


 このお話は、ホメロスという古代ギリシアの詩人が、西洋の文学を通じて、どの時代にも新たな感動とインスピレーションを与えてきたことの一例です。初めてホメロスを読んだ20歳過ぎのキーツは、夜明けまで読み耽り、朝10時までに詩をつくって友人のもとへ送り届けたと言われています。そうした感動を伝えてくれると思います。

 キーツが読んだホメロスという詩人の作品は、古代ギリシア最古...

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