「ホメロス叙事詩」を読むために
この講義シリーズは第2話まで
登録不要無料視聴できます!
第1話へ
▶ この講義を再生
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
(会員の方に広告は表示されません)
『イリアス』の主人公アキレウスの怒りは何を意味するのか
「ホメロス叙事詩」を読むために(4)『イリアス』の世界ーその2
納富信留(東京大学大学院人文社会系研究科教授)
『イリアス』の物語では、人間同士と同様に神々も戦っている。実際に手出しをすることはないが、大事な場面で贔屓の側につき、相手を騙しにかかるのだ。混戦状態に陥った持久戦は、アキレウスとヘクトルという両英雄の戦いで決着する。息を飲む最後の場面に、人間の栄光と運命の全てが書き込まれている。(全9話中第6話)
時間:11分15秒
収録日:2020年7月3日
追加日:2020年10月4日
≪全文≫

●アキレウスの怒りゆえ混迷状態に陥る勝敗


 今回、前半で申し上げたように、『イリアス』の出発点は、アキレウスがへそを曲げて「もう俺はこんな戦争は嫌だ」「故郷に帰る」「こんな理不尽なことは受け入れられない」と、戦場に行かなくなったことでした。そうすると、アカイア方はどんどん負けてしまうわけです。押されてしまう。これはやばい。

 アカイア方もそうなのですが、アカイア方に付いている神々も困ってしまいます(ちなみに神々は自分のご贔屓に付いて、それぞれ背後からプッシュするのです)。最初の話を思い出していただくと、そもそもヘレネをこちらに連れて行ったのはアフロディテなので、トロイア方にはアフロディテが付いています。そうすると、彼女に対抗するヘラとアテナがアカイア方に付きます。

 このようにして、神々同士が自分のご贔屓で、戦いあう。戦っている英雄のなかには神様の子どももいます。アフロディテの息子のような子どもたちもいるのですが、彼らも最後には死んでしまう。そういう混戦状態のなかで、一進一退の攻防が続きます。

 アキレウスは、自分の怒りゆえに自分の味方がどんどん負けてくる。でも、「まだまだ譲れない。絶対に許せない」と言って戦場に出ない。そうすると、「仕方がない。このままだと負けてしまう」ということで、親友のパトロクロスがアキレウスの鎧や武具をつけて戦場に出て行きます。そうすると、ヘクトルに討たれてしまいます。

 アキレウスとしては、最初の思惑と違う。今度は親友パトロクロスの敵討ちをしなければならない。そこで彼は戦場に復帰して、最後はヘクトルと一騎打ちをします。

 絵に描いたような、もったいぶった流れではありますが、最後は二人の英雄が自分の全てを賭けて戦いをぶつけ合う。これが、やはり人間同士の栄光と運命を賭けた戦いの頂点になる。ただし、どちらも最後は死んでいくのです。


●栄光と運命を賭けた両雄の死闘


 こういうせっかくのクライマックスの場面は、この後ご紹介したいと思います。最後の2巻にももう少し面白いことがあるのですが、全24巻のうちの第22巻に、いよいよアキレウスとヘクトルが、トロイアの城外で二人だけで戦う場面が出てきます。

 ヘクトルは、自分がアキレウスほど強くはないということをやはり自覚しているので、なかなか出てきません。ところが、ヘクトルは女神アテナに...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
(会員の方に広告は表示されません)
「芸術と文化」でまず見るべき講義シリーズ
ルネサンス美術の見方(1)ルネサンス美術とは何か
ルネサンスはどうやって始まった?…美術の時代背景
池上英洋
文明語としての日本語の登場(1)古代日本語の復元
「和歌」と「宣命」でたどる奈良時代の日本語とその変遷
釘貫亨
数学と音楽の不思議な関係(1)だれもがみんな数学者で音楽家
世界は音楽と数学であふれている…歴史が物語る密接な関係
中島さち子
葛飾北斎と応為~その生涯と作品(1)北斎の画狂人生と名作への進化
葛飾北斎と応為…画狂の親娘はいかに傑作へと進化したか
堀口茉純
ピアノでたどる西洋音楽史(1)ヴィヴァルディとバッハ
ピアノの歴史は江戸時代に始まった
野本由紀夫
『古今和歌集』仮名序を読む(1)日本文化の原点となった「仮名序」
『古今和歌集』仮名序とは…日本文化の原点にして精華
渡部泰明

人気の講義ランキングTOP10
新撰組と幕末日本の「真実」(7)「対テロ集団」としての新撰組
京都に吹き荒れたテロを鎮圧!…物語と史実の隙間を読み解く
堀口茉純
ラフカディオ・ハーン『神国日本』を読む(5)美の裏に潜む恐ろしい側面
恐ろしい日本…常に何者かに見られ、個性が抑圧される社会
賴住光子
性はなぜあるのか~進化生物学から見たLGBT(1)有性生殖と無性生殖
なぜ雄と雌の2つの性別があるのか…「性」の謎とLGBT
長谷川眞理子
日本人とメンタルヘルス…心のあり方(2)真面目な日本人と二宮尊徳の思想
「頑張りすぎる人がうつになる」と言われるのは日本だけ!?
與那覇潤
AI時代と人間の再定義(1)AIは思考するのか
AIでは「思考の三位一体」が成立しない…考えるとは?
中島隆博
変化する日本株式市場とPEファンド(1)近年急増するPE投資
プライベート・エクイティ・ファンドとは何か…その手法は?
百瀬裕規
オートファジー入門~細胞内のリサイクル~(1)細胞と細胞内の入れ替え
ノーベル賞受賞「オートファジー」とは?その仕組みに迫る
水島昇
高市政権の進むべき道…可能性と課題(1)高市首相の特長と政治リスク
歴史的圧勝で仕事人・高市首相にのしかかるリスク要因
島田晴雄
豊臣兄弟~秀吉と秀長の実像に迫る(序)時代考証が語る『豊臣兄弟!』の魅力
2026年大河ドラマ『豊臣兄弟!』秀吉と秀長の実像に迫る
黒田基樹
数学と音楽の不思議な関係(2)リズムと数の不思議と変拍子
童歌「あんたがたどこさ」は何拍子?変拍子の不思議な魅力
中島さち子