「ホメロス叙事詩」を読むために
この講義シリーズは第2話まで
登録不要無料視聴できます!
第1話へ
▶ この講義を再生
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
(会員の方に広告は表示されません)
行方不明だったオデュッセウスの帰郷に待ち受けるドラマとは
「ホメロス叙事詩」を読むために(6)帰郷する人間ーその1
納富信留(東京大学大学院人文社会系研究科教授)
トロイア戦争とその後の漂流を合わせて20年間も家を後にしていた英雄オデュッセウス。その帰郷は「帰ってきたぞ」「お帰りなさい」と単純には進まない。長年の領主不在の間に、その地位と妻を狙う求婚者たちが彼の屋敷に住み込んでいた。妻はなんとか知略を用いて返事を先延ばしにしているが、それも風前の灯火となってくる。(全9話中第8話)
時間:11分24秒
収録日:2020年7月3日
追加日:2020年10月18日
≪全文≫

●行方不明だったオデュッセウスの帰郷と波乱


 ホメロスの叙事詩『オデュッセイア』の主役である英雄オデュッセウスは、数々の冒険を経て、ようやく彼の故郷であるイタケ(Ithake)という島に戻っていきます。小さな島で、今でも論争があるようですが、ギリシアの西のはずれのほうにある小さな島がそうではないかと言われます。彼は、そこの領主だったのです。

 戦争が始まって20年たって帰って来るというのはどういうことなのだろう。それ自体が面白いテーマですね。彼は行方不明者で、故郷イタケにいる人々からすると、戦争が終わってもうずいぶん経っているのに音沙汰もないため、途中で死んでしまったにちがいないと思われていました。今でも災害による行方不明者はよくありますが、似たような状況だとご想像ください。

 当のオデュッセウスはそんなことは知らず、とにかく必死で生き残るということになるわけですが、とりわけイタケの島に着いた途端「ああ、よかった」「10年たって帰ってくるとは」と迎えられるハッピーエンドかと思うと、そこから新しい苦難が始まります。ここからは「変身」や「変転」がテーマになっていきます。

 皆さんにもご想像いただけると思うのですが、10年間留守にしていた領主が戻ってくるというのは、政治的にそれほど単純な問題ではありません。多くの人が、「もう彼はいない」という前提でさまざまなことを進めてしまっているわけです。いきなり「俺が」と言って現れると、もしかすると自分を邪魔だと思う人たちによって殺されるかもしれない。そういう状況が、もう現に起こっているわけです。

 そこで、智略に優れたオデュッセウスは、着々と地盤を固めて、最後は自分の領主の座を取り戻す、つまり自分の家に復帰するという、通常では考えられないぐらい慎重かつステップを踏んだ物語になっています。


●故郷の人々の中へ「乞食」姿で入っていく領主


 帰ってきても、「おーい、帰ってきたぞ」という単純な話ではない。むしろ自分は帰ってきてうれしいにもかかわらず、乞食の格好に身をやつし、よそ者だとして人々の中に入っていく。しかも、相手はみんな昔知っていた仲間たちです。

 ちょっとあり得ないのではないかと思う人もいるかもしれませんが、ここはギリシア神話なので、彼のご贔屓のアテナという女神が彼の姿を...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
(会員の方に広告は表示されません)
「芸術と文化」でまず見るべき講義シリーズ
古関裕而・日本人を応援し続けた大作曲家(1)恩師との出会い
六甲おろし、栄冠は君に輝く、長崎の鐘…古関裕而の魅力
刑部芳則
『源氏物語』ともののあはれ(1)雅な『源氏物語』の再発見
『源氏物語』の謎…なぜ藤壺とのスキャンダルが話のコアに?
板東洋介
宮沢賢治『銀河鉄道の夜』を読む(1)あらすじと賢治の原稿
未完の長編『銀河鉄道の夜』の魅力と宮沢賢治の思想に迫る
鎌田東二
数学と音楽の不思議な関係(1)だれもがみんな数学者で音楽家
世界は音楽と数学であふれている…歴史が物語る密接な関係
中島さち子
いま夏目漱石の前期三部作を読む(1)夏目漱石を読み直す意味
メンタルが苦しくなったら?…今、夏目漱石を読み直す意味
與那覇潤
ルネサンス美術の見方(1)ルネサンス美術とは何か
ルネサンスはどうやって始まった?…美術の時代背景
池上英洋

人気の講義ランキングTOP10
編集部ラジオ2026(25)《老子の神髄》を学ぶ
【10min解説】田口佳史先生×堀江重郎先生《老子の神髄》
テンミニッツ・アカデミー編集部
老子の神髄(1)「絶対自由の境地」を求めて
『老子』が求める「絶対自由の境地」とは?…そして創造長寿へ
田口佳史
教養としての「ユダヤ人の歴史とユダヤ教」(1)ユダヤ人とは誰のことか
ユダヤ人とは?なぜ差別?お金持ち?…『ユダヤ人の歴史』に学ぶ
鶴見太郎
昭和の名将・根本博…内蒙古・終戦後の戦い(4)決断のかげにあった深い葛藤
情報を基にいかに決断するか…その深い葛藤と「南泉猫を斬る」
門田隆将
中国史概説~『皇帝たちの中国』を読む(1)なぜ「中国史はつまらない」のか?
驚きの中国史~「中国史はつまらない」という通説の裏の波乱の真実
宮脇淳子
日本の財政の真実を検証する(6)「経済成長3つの源泉」の具体策
現代日本で「経済成長3つの源泉」の具体的プランを考えると?
宮本弘曉
組織心理学とは何か~『武器としての組織心理学』と概論
なぜ組織に「心理学」が必要か?多様化と個の時代の処方箋
山浦一保
近現代史に学ぶ、日本の成功・失敗の本質(6)東條内閣で行われた行政改革
悲惨な末路につながった東條英機内閣での兼職と省庁再編
片山杜秀
AI時代と人間の再定義(1)AIは思考するのか
AIでは「思考の三位一体」が成立しない…考えるとは?
中島隆博
宮沢賢治『銀河鉄道の夜』を読む(1)あらすじと賢治の原稿
未完の長編『銀河鉄道の夜』の魅力と宮沢賢治の思想に迫る
鎌田東二