「ホメロス叙事詩」を読むために
この講義は登録不要で無料視聴できます!
▶ 無料視聴する
この講義の続きはもちろん、
6,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
(会員の方に広告は表示されません)
ギリシア神話の基礎に不死の神と人間の死という対比がある
「ホメロス叙事詩」を読むために(2)神々と人間ーその1
納富信留(東京大学大学院人文社会系研究科教授)
ホメロスの世界を学ぶには、彼らが信仰し礼拝していたギリシアの神々を知ることが必要だ。ゼウスをはじめとする神々は人々にとってリアルな存在だったが、彼らが「不死」の存在である点は人間との大きな違いとして明記したい。不死の神々との対比によって、人間たちのつかの間の生のはかなさが際立っていく。(全9話中第2話)
時間:7分48秒
収録日:2020年7月3日
追加日:2020年9月6日
≪全文≫

●ホメロスが歌った紀元前13世紀の世界


 ホメロスの叙事詩はどのような世界で歌われ、受け継がれてきたのかということについて、さらにお話を進めていきます。

 ホメロスという詩人は、おそらく紀元前700年ぐらいに活躍したといわれていて、叙事詩も同じ紀元前8世紀ぐらいにつくられたのではないかと想像されています。しかし、彼が歌う舞台は、それよりさらに500年ほどさかのぼります。

 第1話でシュリーマンのお話をしました。発掘されたトロイアの遺跡は紀元前1250年ぐらいと言われますから、ホメロスが歌った頃より500年前という非常に古い世界のことになります。現在のわれわれが見ると室町時代でしょうか。この二つの時代は、当然かなり違う時代ですので、理解していくときに意識することが必要です。

 ミケーネ時代といわれる紀元前13世紀は、青銅器の時代でした。ミュケーナイやティリンスというところの遺跡が出てくる時代です。かたや、ホメロスが歌を歌っていた時代は、もうわれわれが知っている古典ギリシアに近い時代で、ポリスが成立している時期です。ホメロスの100年後ぐらいには哲学者のタレスなどが出てきます。私たちが知っている、あのギリシアにかなり近い時代に歌われたということになります。

 つまり、ある種のアナクロニズムというか、古典期に近いアルカイック期の詩人が、はるか昔の青銅器時代の伝説について歌っているということになります。その対象はギリシアの神々と人間の模様ですので、当然、「ギリシア神話」が背景になります。


●ギリシア神話の基礎知識を知る


 「ギリシア神話は、どういうものか」と尋ねられると、私はいつも「簡単には答えられない」と申し上げます。キリスト教やイスラムなどとは違って、「これだ」という経典が、まずありません。権威もありません。ある意味、変化自在なのです。さまざまな神々と、その逸話が、時代によって脚色されて膨らんでいったものです。

 私たちがギリシア神話の神々や星座としてなじんでいるものは、ほぼローマ時代に書かれたもので、少しメロドラマ化されているようなものになります。そういう意味では、ホメロスの作品自体も、ギリシア神話の一つの古典として考えられているものです。

 重要な点は、ギリシア神話というと、つい「物語」であるとわれわれは捉えがちですが、古代のギリシア人にとっては当然生きた信...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
(会員の方に広告は表示されません)
「哲学と生き方」でまず見るべき講義シリーズ
デカルトの存在論に学ぶ(1) 「我思う、ゆえに我在り」
「我思う、ゆえに我在り」はデカルトの専売特許ではない
津崎良典
「アメリカの教会」でわかる米国の本質(1)アメリカはそもそも分断社会
「キリスト教は知らない」ではアメリカ市民はつとまらない
橋爪大三郎
AI時代にリベラルアーツがなぜ必要か(1)AIに置き換わる仕事と人間がやる仕事
AI時代にリベラルアーツがなぜ必要か…人間がやるべきこととは?
橋爪大三郎
おもしろき『法華経』の世界(1)法華経はSFだ!
法華経はSFだ!…心を元気にしてくれる法華経入門
鎌田東二
仏教とキリスト教が照らし出す日本の宗教(1)神とは何か、そして天皇とは?
日本と世界の「神と信仰」の違いは?…そして天皇の大切な役割
橋爪大三郎
資本主義の再定義…哲学で考える(1)アダム・スミスの「市場と感情」
資本主義を哲学する…まずアダム・スミスの見えざる手と道徳感情論
中島隆博

人気の講義ランキングTOP10
編集部ラジオ2026(37)長谷川眞理子先生の公開収録!
【アンケート&公開収録】長谷川眞理子先生:男と女でどう違う?能力の高め方
テンミニッツ・アカデミー編集部
ロシア人の見る「ロシアの歴史」(2)タタールのくびきと「第三のローマ」
なぜロシアが「第三のローマ」なのか?…東ローマ帝国とモンゴル帝国の根深い影響を探る
上月豊久
『「甘え」の構造』と現代日本(1)「甘え」のインパクト
「甘え」は現代においてダメなものなのか…名著『「甘え」の構造』への2種類の誤解とは?
與那覇潤
高齢者のフレイル・認知症とその予防対策(1)老年病科と高齢者の疾患・病態の特徴
頻尿、低栄養、転倒、誤嚥、フレイル…増える老年症候群と高齢者の疾患・病態の特徴
小川純人
大統領に告ぐ…硫黄島からの手紙の真実(2)翻訳に込めた日米の架け橋への夢
アメリカ人の心を震わせた20歳の日系二世・三上弘文の翻訳
門田隆将
「満洲」から考える日本とアジア(1)「満洲」を知る意義とは
「満洲史」はなぜ現代日本でタブー視されるのか?…王道楽土の夢とアヘンなどの裏面から見えてくる現代への教訓
宮脇淳子
現代人に必要な「教養」とは?(1)そもそも教養とは何か
教養とは…本質を捉える知、他者を感じる力、先頭に立つ勇気
小宮山宏
『オデュッセイア』で読み解く神話の秘密(1)物語の構造を読み解くおもしろさ
『オデュッセイア』の面白さの秘密を神話の構造から読み解く…なぜ波乱万丈の神話が人間の創作の源泉になったか
松村一男
第二次世界大戦とソ連の真実(1)レーニンの思想的特徴
レーニン演説…革命のため帝国主義の3つの対立を利用せよ
福井義高
『万葉集』と律令社会~官僚の心得と歌宴(1)国守・大伴家持と地方社会の日常
『万葉集』でわかる奈良時代の貴族と地方豪族の関係と日常…歌人・大伴家持の歌に秘められた国守時代の苦労話
上野誠