ギリシア悲劇への誘い
この講義は登録不要で無料視聴できます!
▶ 無料視聴する
この講義の続きはもちろん、
6,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
(会員の方に広告は表示されません)
ギリシア悲劇と喜劇の違い…ギリシア悲劇の3つの特徴
ギリシア悲劇への誘い(2)ギリシア悲劇とは何か
納富信留(東京大学大学院人文社会系研究科教授)
ギリシア悲劇は、現代の演劇やミュージカルと大きく異なる形式を持っているだけではなく、同時代に盛んになったギリシア喜劇とも、作劇上の違いがある。ギリシア悲劇に見られる特徴から、当時のギリシア社会の一端を垣間見ることができる。(全7話中第2話)
時間:12分03秒
収録日:2021年3月30日
追加日:2022年2月1日
≪全文≫

●悲劇と喜劇の語源と作劇における違い


 ギリシア悲劇とは何かについて、もう少し説明を加えていきます。なぜなら、私たちが知っている演劇とギリシア悲劇はかなり違うからです。

 その特徴を見る前に、まずこれが「詩」だということを強調しておきたいと思います。ギリシアの詩には韻律があるので、私はなかなかうまく読めないかもしれませんが、あとで取り上げる『オイディプス王』という作品の最初の3行を読んでみます。全てが非常に特殊な韻律の詩でつくられているので、普通の口語表現とは少し違います。

 では、『オイディプス王』の最初の部分のセリフを読みます。

 今3行分読んだのですが、長短といった規則が張り巡らされていて、実は作劇上でも非常に難しくなっています。観るほうはそれほど意識しませんが、全体としては普通のしゃべり言葉よりも歌に近い形になっていることが特徴の一つです。あとで少し朗読も入れます。

 “tragedy(トラジェディ)”という単語は、もともと“tragoidia(トラゴーディア)”というギリシア語で、「ヤギ(トラゴス)の歌」という意味です。悲劇の「悲」である「悲しい」という意味はありません。

 もう一つは、これと対になる「喜劇」と呼ばれている“comedy(コメディ)”です。こちらは“komoidia(コーモーディア)”という単語からきていて、“kome(コーメー)”は、「村、村落」という意味です。こちらも「楽しい」という意味はありません。

 悲劇と喜劇はセットで上演されています。日本語では中身を取って「悲劇」「喜劇」と訳されていますが、必ずしも「悲しい」あるいは「楽しい」という意味ではありません。 そのため、悲劇と呼ばれているものの中には、ハッピーエンドのものもあります。「悲劇じゃないじゃないか」と思うかもしれませんが、今言ったような意味がもとにあるのです。また、悲劇詩人がつくる中には「サテュロス劇」というものもあり、能に対する狂言のような形で、少しコミカルなものもつくっています。それも併せて悲劇とすると、悲しいものには限られないところがあります。

 悲劇と喜劇は両方とも同じ時代に盛んになったものですが、作劇上のいくつかの違いがあります。一番大きな違いは設定です。悲劇は基本的に神話を題材にしており、当時観ている観客からすると、はるか昔のおとぎ話の世界...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
(会員の方に広告は表示されません)
「芸術と文化」でまず見るべき講義シリーズ
文明語としての日本語の登場(1)古代日本語の復元
なぜ「てふてふ」が蝶々?日本語の変遷を追う…まずは万葉仮名から
釘貫亨
クラシックで学ぶ世界史(1)時代を映す音楽とキリスト教
クラシック音楽で世界史がわかる…宗教音楽からクラシックへ
片山杜秀
山上憶良「沈痾自哀文」と東洋的死生観(1)因果応報と日本仏教の課題
山上憶良が「沈痾自哀文」で問いかけた因果応報の問題
上野誠
いま夏目漱石の前期三部作を読む(1)夏目漱石を読み直す意味
メンタルが苦しくなったら?…今、夏目漱石を読み直す意味
與那覇潤
山上憶良「好去好来の歌」を読む(1)山上憶良に学ぶ国際感覚
8世紀を代表する知識人・山上憶良が感じたグローバリズム
上野誠
『太平記』に学ぶ激動期の生き方(1)なぜ今『太平記』を読むべきなのか
『太平記』は乱世における人間の処し方が学べる古典文学
兵藤裕己

人気の講義ランキングTOP10
高齢者のフレイル・認知症とその予防対策(3)孤食リスクと加齢に伴うホルモン変化
「孤食」が危ない…独身男性の一人の食事はうつのリスク2倍以上に
小川純人
現代人に必要な「教養」とは?(1)そもそも教養とは何か
教養とは…本質を捉える知、他者を感じる力、先頭に立つ勇気
小宮山宏
『オデュッセイア』で読み解く神話の秘密(1)物語の構造を読み解くおもしろさ
『オデュッセイア』の面白さの秘密を神話の構造から読み解く…なぜ波乱万丈の神話が人間の創作の源泉になったか
松村一男
「満洲」から考える日本とアジア(8)日貨排斥と満洲事変の原因
なぜ満洲事変が起きたか…激烈な日本排斥と朝鮮人迫害、さらに一方的な条約無効化に直面した日本人の決断と失敗
宮脇淳子
「進化」への誤解…本当は何か?(1)進化の意味と生物学としての歴史
実は生物の「進化」とは「物事が良くなる」ことではない
長谷川眞理子
日本の財政の真実を検証する(1)膨らむ借金の知られざる実態
日本の財政の「真実」をデータで徹底検証…国際機関の分析は?
宮本弘曉
大統領に告ぐ…硫黄島からの手紙の真実(1)ルーズベルトに与ふる書
奇跡の史実…硫黄島の戦いと「ルーズベルトに与ふる書」
門田隆将
ヒトの性差とジェンダー論(1)「性」とは何か
MLBのスーパースターも一代限り…生物学から迫る性の実態
長谷川眞理子
近現代史に学ぶ、日本の成功・失敗の本質(6)東條内閣で行われた行政改革
悲惨な末路につながった東條英機内閣での兼職と省庁再編
片山杜秀
豊臣政権に学ぶ「リーダーと補佐役」の関係(3)組織のバランスが崩れる日
豊臣秀吉が暴君になるほど影響が大きかった弟・秀長の死
小和田哲男