●津波の力を解明し、リスク回避に役立てる
東海大学海洋学部の田中博通と申します。私の専門は土木工学の中でも流体力学で、特に河川工学や海岸工学が専門です。私の大学院時代の恩師が、日本でも死者が出た1960年のチリ地震津波の後、津波のシミュレーションをやろうということで、当時アナログだったコンピューターを使ったりして、苦労しているのを見聞きしていました。それから、2011年3月11日に太平洋沖で起こった東日本大震災では尊い1万9千余名の命が亡くなりましたが、家たる家が流されていくVTR映像を見て、いったい津波にはどういう力が働くのだろうかということで、研究を始めました。
津波は、「波」と書くものですから、平時の海で一般に寄せてくる波を思い浮かべる人が多いかもしれませんが、実は津波というのは、水の塊が押し寄せてくるものです。これを「段波(だんぱ)」と言いまして、それを再現して、実験しています。
一般に現在は、津波において浸水深の3倍の静水圧で設計するようにとなっていますが、流れの中にある物体には、ここに示しますように、まず、津波が物体に当たるときの衝撃波圧がかかります。それは、静水圧、動圧を含んだものです。また、流れの中の物体には、当然抗力という力が働きます。それは、流れ方向の力です。それから、流れ方向に直角に浮力も働くだろうし、揚力も働きます。こういった総合的な研究をしていくことが、津波力の解明につながるかと思います。
2011年の大震災においては、原発なども非常に大きな事故となり、15万人に及ぶ住民が避難することにもなっていますが、どう考えてみましても、般若心経にあるように、「色即是空」「空即是色」、すなわち物体は永遠ではありません。壊れます。そして、人間というものは当然ミスもします。ミスをしたときに、取り返しのつかない事故や災害に遭うことは、やはり避けるべきです。科学技術はいろいろと進歩し、その中でさまざまなものがつくられてきました。新たなものをつくったり開発したりすることも技術ですが、リスクの大きなことを避けることもまた技術であるわけです。そういうことが学問の大事な部分かと思います。
●森の活用で目指すバイオリファイナリー
特にエネルギー問題を考えますと、再生可能エネルギーには、ご存知のように、太陽光、風力、それからバイオマスや地...