異常気象を分析する
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地球温暖化がもたらす複合災害のリスク
異常気象を分析する(5)地球温暖化による影響
中村尚(東京大学 先端科学技術研究センター 教授)
2018年夏の異常気象に対する分析の締めくくりは、地球温暖化による影響の考察である。温暖化傾向は、顕著な自然変動と相まって、極端な気候を異常気象へと激化させる。このような地球温暖化の傾向を踏まえるならば、異常気象に由来する災害に対して、われわれはどのように備えるべきなのだろうか。(全5話中第5話)
時間:9分06秒
収録日:2019年3月26日
追加日:2019年7月30日
≪全文≫

●30年前より強い雨の雨量が10パーセント増えている


 次に豪雨に対して、温暖化の影響がどのぐらいあったかを考えてみます。

 資料左上の図は、気象庁のAMeDASのデータです。各地点における年最大の72時間降水量に関して、ここ30年の平均値との比をまず計算します。次にそれを685地点で平均していきます。そうすることで、降水量の少し少ない地点に降った極端な雨もきちんと拾えるような統計を作りました。それを、1970年代の終わりから2018年まで書いたものです。このグラフでは、基準値よりも多ければ緑、少なければ黄色で示しています。するとご覧のように、強い雨が増える傾向が長期的に顕著です。

 特に最近はほとんどが緑色ですので、強い雨が増えているといえます。過去30年の変化傾向を見ますと、大体10パーセント、強い雨の雨量が増えていることが分かります。また、右上の図を見ると、今回豪雨があった地点でもやはり、最近に向けての豪雨の増加傾向が見えていると思います。

 実は1980年以降、夏における日本の下層気温は、1度余り上昇しています。これに対応するのが、下層における水蒸気量です。理論値だと7パーセント上昇することになります。右下の図は、気象庁が持っている気象台における観測の結果ですが、上空1500メートル付近の水蒸気量の変化を示したものです。これもやはりこの30年間の基準値に対する比ですが、これを見ても、水蒸気が増えていることが明らかです。下層の水蒸気量が、大体10パーセント増えています。これも、ここ30年間における雨の傾向とほぼ対応しているわけです。

 これは、今なら400ミリメートルほど降るような気圧配置であったとしても、30年前に起きていたら、それよりも10パーセントほど少ない雨で済んだということを意味します。この10パーセントというのは実はクリティカルなもので、災害をもたらす、例えば土砂崩れを引き起こす、そういった雨量を超えるか超えないか、そういった問題に関わってきます。ですから、この10パーセントの違いは、決して無視できない量だと思います。


●地球温暖化によって梅雨前線に伴う雨が強くなっている


 以前の講義において、日本の近海が急速に温暖化していることをご説明しました。特に夏において、梅雨前線に伴う雨は基本...

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