異常気象を分析する
この講義シリーズは第2話まで
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
なぜ異常な猛暑となったのか…ジェット気流の蛇行との関連
異常気象を分析する(3)異常高温とその原因
中村尚(東京大学 先端科学技術研究センター 教授)
2018年の夏は、豪雨に加えて記録的な猛暑に襲われた夏でもあった。夏の期間全体で見れば、東日本で歴代1位、西日本で歴代2位の暑さであった。今回の講義では、この異常な猛暑の原因をジェット気流の蛇行と気候のグローバルな構造から解明する。(全5話中第3話)
時間:9分55秒
収録日:2019年3月26日
追加日:2019年7月30日
≪全文≫

●2018年夏は歴代で見ても記録的な猛暑だった


 今度は、2018年夏全体の気温の話に移ります。上の図は、6月から8月までにおける、気温偏差の推移を示しています。正の赤い所が高温で、負の青い所が低温です。夏の期間を取りますと、東日本は歴代1位の暑さでした。西日本は歴代2位です。特に7月に切り替わるところ、ここがちょうど西日本豪雨があっと時期なのですが、その直後に広い範囲で梅雨明けになって、記録的な猛暑になっています。それから東日本は、もうその前から気温が高くなっていました。そして8月も、それなりに気温が高くなりました。ただし北海道では、8月の気温がかなり低くなっていて、雨も多い状態でした。

 次の資料の右上の図は、7月の平均気温偏差を表しています。これは平年の気温からの偏差ですが、やはり東日本を中心に異常な猛暑だったことが分かります。左下の図は、6月から9月までの全国におけるAMeDASの観測地点で、猛暑日となる最高気温35度を超えた地点を積算していきます。つまり、これは延べ日数です。

 点線で示したのが、今までで一番暑かった2010年の夏です。しかし、それをはるかに超えて、2018年の夏は累積の地点数が圧倒的に多かったわけです。しかも、気温が上がる立ち上がりが早い、つまり、梅雨が早く明けたということです。右下の図を見ますと、41.1度を記録した熊谷をはじめ、名古屋も含めて多くの地点で40度以上の気温が観測されて、それまでの記録が塗り替えられました。それくらい極端な高温になったというわけです。


●2018年の異常な猛暑は、ジェット気流の蛇行と関連している


 そしてこの高温も実は、上空のジェット気流の蛇行と関連しています。資料右側の図は、7月の梅雨明け以降2週間における大気の平均状態ですが、上空12キロメートルにおいて亜熱帯ジェット気流が地中海からユーラシア上空、そして日本上空にかけて蛇行していることが分かります。

 西日本豪雨の時とは異なって、日本の西つまり朝鮮半島の上空で、偏西風が特に強く北に蛇行していることが分かります。これによって、豪雨の起こりやすい状態が終わったわけです。その結果、日本付近は下降気流になり、天気も良くて高温になったということです...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「科学と技術」でまず見るべき講義シリーズ
航空機事故ゼロをめざして(1)フラッター現象とは何か
零戦の開発段階で起きたフラッター現象…事故の教訓とは
鈴木真二
水から考える「持続可能」な未来(1)気候変動の現在地
最悪10メートル以上海面上昇…将来に禍根残す温暖化の影響
沖大幹
ChatGPT~AIと人間の未来(1)ChatGPTは何ができて、何ができないか
ChatGPTは考えてない?…「AIの回答」の本質とは
西垣通
海底の仕組みと地球のメカニズム(1)海底の生まれるところ
地球上の火山活動の8割を占める「中央海嶺」とは何か
沖野郷子
ヒトの性差とジェンダー論(1)「性」とは何か
MLBのスーパースターも一代限り…生物学から迫る性の実態
長谷川眞理子
培養肉研究の現在地と未来図(1)フェイクミート市場とリアルミート研究
食肉3.0時代に突入、「培養肉」研究の今に迫る
竹内昌治

人気の講義ランキングTOP10
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み
なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み
今井むつみ
ケルト神話の基本を知る(1)ケルト地域と3つの神話群
ケルト神話とは…ダーナ神族、アルスター神話、フィアナ神話
鎌田東二
エンタテインメントビジネスと人的資本経営(5)「チーム戦と新規ビジネス」の要点
「土地勘のあるところ、自分たちの武器を持っていく」
水野道訓
学力喪失の危機~言語習得と理解の本質(2)言葉を理解するプロセスとスキーマ
なぜ子どもは教えられても理解できないのか?鍵はスキーマ
今井むつみ
徳と仏教の人生論(1)経営者の条件と50年間悩み続けた命題
宇宙の理法――松下幸之助からの命題が50年後に解けた理由
田口佳史
経験学習を促すリーダーシップ(1)経験学習の基本
成長を促す「3つの経験」とは?経験学習の基本を学ぶ
松尾睦
「集権と分権」から考える日本の核心(1)日本の国家モデルと公の概念
日本は集権的か分権的か…地理と歴史が作る人間の性質とは
片山杜秀
いま夏目漱石の前期三部作を読む(1)夏目漱石を読み直す意味
メンタルが苦しくなったら?…今、夏目漱石を読み直す意味
與那覇潤
教養としての「人口減少問題と社会保障」(1)急速に人口減少する日本の現実
毎年100万人ずつ減少…急降下する日本の人口問題を考える
森田朗
ショパンの音楽とポーランド(1)ショパンの生涯
ショパン…ピアノのことを知り尽くした作曲家の波乱の人生
江崎昌子