●地球環境の変化、激化は科学の世界では予測してきた通り
三つ目は地球環境についての問題で、2020年だけではないのですが、これは持続社会を考えるうえで最も心配な問題の一つです。しかも、この予測というのは今まで私たち(私も科学者の一部としてですが)科学の世界では予測してきた通りのことが起こっているのです。
それは、例えば気象が激しくなるということです。具体的にはどういうことかというと、乾燥していた地域はますます乾燥する、雨の多い地域はますます雨が多くなるというようなことです。それから、暑さはさらに増し、寒さもさらに増すということで、要するに気象が激しくなるのです。台風が大きくなるのもそうです。
1980年代の終わり頃からでしょうか、こうした問題のほとんどが大きくクローズアップされてきたのは。その頃から科学の世界では一生懸命予測をしているのですが、ほとんどその予測通りのことが起こっているのです。
●恐ろしいのは変化のスピードが予測したより速いこと
ただ、恐ろしいのはそのスピードが予測したより速いということなのです。これが一番の心配で、(北極の)氷の融けるスピードなどは明らかに予測をはるかに上回っていますし、台風の巨大化も同様です。2019年11月にシドニー周辺で大火(森林火災)がありましたが、火はなかなか消えませんでした。それなどは雨が降らないこと(干ばつ)が一つの要因と考えられます。オーストラリアというのは、斜めに切るとシドニー側の半分はもともとドライなのです。もう半分、地図でいうと右上の方はどちらかというと湿潤なのですが、こちらはその傾向が増えています。他のところはますます乾いてきています。こういう状況が明らかに影響しているのです。
それから、2019年夏にフランスで44度以上の気温が記録されました。ドイツでも40度を超えました。私は2019年にロンドンに行きましたが、このロンドンでも40度近くまで上がりました。彼らと話すと、こうした国々ではもともとそんな気温になることはないので、家の造りは冬の寒さに対して非常に適しているのですが、逆に冷房の設備を備えていないのです。私が話した数人は1人も家に冷房がありませんでした。「2020年は冷房を入れようと思っている」と言っていました。
ですから、オーストラリアのこともそうですし、ヨーロッパの夏の暑さもそうですが、日本で最も明確に現れているのは台風でしょうか。海水温というのは比較的、安定しているのです。水は比熱が大きいので、そんなに急に温まったり冷えたりしません。ですから、海の温度というのは比較的一定で、安定しています。気温は一気に上がったり、一気に下がったりします。それは、空気は比熱が小さいからそうなるわけです。
その海の温度が黒潮を中心として1度上がったということが、まさに今の日本の夏の台風に一番大きく影響しているのです。昔は南の方で台風が発生すると、それが日本に近づいてくる頃にはだんだんと冷えて勢力を失い、そうして日本に到達する、というのがほとんどでした。ところが、最近はむしろ発達します。
私は今、75歳ですけれども、あまりそうした台風を見た経験がないのです。もちろん、昔もありました。伊勢湾台風でしょうか、一番大きかったのは。そういう稀な例はあって、大きな台風がいきなり来るというのは、皆無ではありませんでした。だから、異常気象というのはもともとあったのですが、頻度が最近はあまりにすごいでしょう。
●異常気象が災害を誘発し、経済にも大きく影響する
しかも、日本に上陸する異常なケースとして、(数年前に1951年の統計開始以来)初めて直接東北に台風が上陸するということがありましたが、そういうことが頻発しています。
それから、台風と秋雨前線とが相乗作用を起こしてこれが大雨となり、箱根で1000ミリ以上の雨が1日で降りました。1日で1メートルの雨が降るということで、この大雨が、非常に大きな影響を千葉で与えたし、それから十数ヶ所の堤防が決壊して、これはすぐ経済にも影響してきます。というのは、低いところで水に弱いところの家や土地の資産価値が下がるからです。気象が災害に影響を与え、それが経済にもはね返るという状況が確実に来るでしょう。
●COPで見せた2つのアメリカ-離脱と「We are still in」
これに対して、どのように対応していければいいのでしょうか。ハザードマップのような形で「こうなったらこう逃げるんだ」ということも大事ですが、そうしたことだけでなく、日本の国土をどうやって維持していくかということを、きちんと計画して進めなければいけません。これが2020年において非常に重要な問題です。
アメリカは2019年、COPからの離脱を正式に通告しましたが、ここで非常に大事なことをお伝えします。トラン...