異常気象と気候変動・地球温暖化
この講義シリーズは第2話まで
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
地球温暖化の加速・減速をもたらす長期気候変動
異常気象と気候変動・地球温暖化(7)長期的な気候変動
科学と技術
中村尚(東京大学 先端科学技術研究センター 教授)
地球温暖化には加速期と減速期があり、これを生み出すような長期的な気候変動も、天候のベースを決めているといえる。そのような長期的な気候変動にはどのようなものがあるのか。また、日本にどのような影響を及ぼすのか。(全7話中第7話)
時間:11分00秒
収録日:2019年3月26日
追加日:2019年5月25日
≪全文≫

●長期の気候変動も天候のベースを決める


 ここでもう一度、今までのおさらいをします。

 まず、天候のベースを決める地球温暖化は、もうすでに進行していて、今後もしばらくは続いていくと予測されるということです。さらにここに、長期的な気候の変動が乗っかってきます。これも実は天候のベースを決めており、いわゆる温暖化の加速あるいは減速をもたらすことが最近の研究で分かってきました。その二つによる天候のベースに乗っかってくるのが短期的な気候変動です。それによって、異常気象などの極端な現象が起こることが、最近は分かってきました。そこで今回は、2つ目の長期的な気候変動について、簡単に紹介しておきます。


●温暖化は加速期と減速期を繰り返している


 上の資料の図は以前にお見せしたのと同じ図ですが、地球全体の平均気温の推移を年平均で表したものです。19世紀の終わりから、ごく最近まで書かれています。先ほどまで注目してきたのは、図の中の赤い直線です。これが気候変化のトレンド、つまり地球温暖化です。大体、100年で約0.7度の気温上昇でした。

 今注目したいのは図の中の青い線(5年移動平均値)です。これを見ますと、温暖化が加速する時期と停滞する時期(減速期)を繰り返して現在に至っていることが、明らかになると思います。この減速期のことを「hiatus」とも呼ぶことがあります。

 興味深いことに、加速・減速の時期は、熱帯太平洋の中部および東部の水温偏差の時系列とよく対応しています。1970年代後半から90年代の終わりにかけた最近の温暖化の加速期には、水温が非常に上昇する傾向がありました。その後、水温が低下する傾向にありまして、それと期を同じくして、地球全体の温暖化のペースが緩んだわけです。加速期の前にも、実は停滞しています。

 ただしこれは、温暖化対策が実を結んだというわけでは全くありません。温室効果気体は着々と増えています。よって、これはあくまでも自然の気候の変動によるものです。

 その一つは、この人為起源のエアロゾルの影響です。それが、1950年代や60年代の減速期に働いていたと考えられています。しかし、より重要なことは、先ほどお話しした自然変動としての熱帯における太平洋の変動です。実は最近、また強いエルニーニョが2015年に起き、気温の上昇も再び始まり...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「科学と技術」でまず見るべき講義シリーズ
2050年のための「前向きの愛国心」(1)木造都市へのシフト
木造ビルで20階…新しい暮らしを支える森林産業の確立を
小宮山宏
ヒトの性差とジェンダー論(1)「性」とは何か
MLBのスーパースターも一代限り…生物学から迫る性の実態
長谷川眞理子
「宇宙の創生」の仕組みと宇宙物理学の歴史(1)宇宙の階層構造
「宇宙の階層構造」誕生の謎に迫るのが宇宙物理学のテーマ
岡朋治
生成AI・大規模言語モデルのしくみ(1)生成AIとは何か
10年で劇的な進歩を遂げた生成AIと日本の開発事情
岡野原大輔
未来を知るための宇宙開発の歴史(1)宇宙開発の流れを概観する
宇宙開発の歴史、そして未来へ…6枚の写真で概観する
川口淳一郎
2050年「プラチナ社会」実現への挑戦(1)「プラチナ社会」実現のルーツと現況
2025年頭所感~5つのプラチナ産業イニシアティブ創りへ
小宮山宏

人気の講義ランキングTOP10
ヒトは共同保育~生物学から考える子育て(1)動物の配偶と子育てシステム
ヒトは共同保育の動物――生物学からみた子育ての基礎知識
長谷川眞理子
未来を知るための宇宙開発の歴史(7)米ソとは異なる日本の宇宙開発
日本の弾道ミサイル開発禁止!?米ソとは異なる宇宙開拓の道
川口淳一郎
「アカデメイア」から考える学びの意義(4)学びの3つのキーワード
より良い人生への学び…開かれた知、批判の精神、学ぶ主体
納富信留
「集権と分権」から考える日本の核心(3)中央集権と六国史の時代の終焉
天平期の天然痘で国民の3割が死亡?…大仏と崩れる律令制
片山杜秀
数学と音楽の不思議な関係(1)だれもがみんな数学者で音楽家
世界は数学と音楽でできている…歴史が物語る密接な関係
中島さち子
教養としての世界史とローマ史~ローマ史講座・講演編(2)神々のささやく世界
「神々のささやく世界」では神々の声が行動を決める
本村凌二
モンゴル帝国の世界史(2)チンギス・ハーンのカリスマ性
自由な多民族をモンゴルに統一したチンギス・ハーンの魅力
宮脇淳子
知識創造戦略論~暗黙知から形式知へ(1)イノベーションと価値創造
価値創造において重要なのは未来から現在を見るという視点
遠山亮子
DEIの重要性と企業経営(4)人口統計的DEIと女性活躍推進の効果
日本的雇用慣行の課題…女性比率を高めても業績向上は難しい
山本勲
睡眠から考える健康リスクと社会的時差ボケ(5)シフトワークと健康問題
発がんリスク、心身の不調…シフトワークの悪影響に迫る
西多昌規