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エアロゾルが気候にもたらす多様な影響

異常気象と気候変動・地球温暖化(3)エアロゾルの影響

中村尚
東京大学 先端科学技術研究センター 副所長・教授
情報・テキスト
過去の気候を再現する、あるいは将来の気候を予測する際、「エアロゾル」と呼ばれる大気中の微粒子の効果が、再現・予測のばらつきを意味する不確実性をもたらすという。エアロゾルはどのようなメカニズムで、どのような影響を気候に与えるのだろうか。(全7話中第3話)
時間:06:30
収録日:2019/03/26
追加日:2019/05/25
キーワード:
≪全文≫

●エアロゾルが気候の将来予測に不確実性をもたらす


 (前回お話しした)過去の気候の再現、あるいは将来予測において、温室効果ガス(の排出シナリオ)に加えて、不確実性をもたらすもう一つの要因があります。それが、「エアロゾル」と呼ばれる大気中の微粒子の効果です。

 上の資料は、先ほどよりも新しく、2013年に発表されたIPCCの第5次評価報告書における、気候再現の結果です。ここには大気を加熱させる、つまり気候システムの加熱に働くといった強制が全て書いてあります。そしてその加熱のほとんどが、二酸化炭素、あるいはメタンといった温室効果ガスの増加によるものであるということが分かると思います。

 一方で、図の左下にある青い部分は、気候を冷やそうとする効果を表しています。気候を冷やす効果の中で特に大きいのがエアロゾルの効果です。エアロゾルにも実は、いろいろと種類があります。後で説明するように、例えば、すすのようなものを「Black carbon」といいますが、黒いエアロゾルは逆に、太陽の放射エネルギーを吸収して大気を加熱しようとします。しかし、他のエアロゾルは気候システムを冷やす方向に働きます。

 重要なのはエアロゾルと雲との相互作用で、この相互作用が気候を冷やすように働いていると考えられます。グラフにおいて横棒で示されたのは不確実性の大きさなのですが、エアロゾルによる不確実性が非常に大きいということが分かります。ですので、エアロゾルと雲が不確実性のもう一つの大きな要因になっていることが分かると思います。なお、太陽放射の活動変動からの影響はほんのわずかです。


●エアロゾルが気候にもたらす多様な影響


 エアロゾルは、急激な重力落下をしないで空気中にある程度の時間滞留できる微粒子のことです。エアロゾルのサイズは非常に小さく、0.001マイクロメートルから20マイクロメートルです。0,001マイクロメートルとは1ナノメートルで、マイクロメートルとは1,000分の1ミリメートルです。エアロゾルは、それぐらいの非常に小さな微粒子です。例えばPM2.5(の2.5)というのは、エアロゾルのサイズ(2.5マイクロメートル)のことです。

 エアロゾルがもし大気中にあると、「フォトン」 と呼ばれる太陽からのエネルギーを運ぶ粒(光子)の進む向きが変えられるわけです。それによって地表に届く太陽エネルギーが減ることになり、大気と地表が冷却されます。これは「直接効果」ないし「直接放射強制力」と呼ばれています。

 ただし、すすのような黒っぽいものは太陽光とそのエネルギーを吸収しますので、大気は暖めますが地表は冷やすことになります。これによって実は、上の方が暖まって下の方が冷えますので、大気成層が安定化します。そうなると、上昇気流が抑えられて雲が発生しにくくなるといった方向に働くと考えられます。

 エアロゾルの影響は、これだけではありません。エアロゾルは、水滴が凝結して雲粒をつくるのに不可欠なもの(凝結核)です。これがないと、雲粒はできません。ということで、このエアロゾルが増加することで必ず起こるのが、雲の性質が変化することです。これは「間接効果」と呼ばれています。

 エアロゾルが人為的に放出されて増えたとしますと、これは雲粒になる雲核(凝結核)が増えることになります。そうなると、太陽からの放射を散乱させる、向きを変えさせる効果が強くなりますから、雲による太陽光の反射率を増やして地表を冷やす働きをします。

 エアロゾルには実は、もう一つ間接効果があります。雲が雨を降らすには、少し大きな粒が必要です。ところが、この小さなエアロゾルがたくさん増えてしまうと、その分だけ雲が大きな水滴をつくる効率が下がってしまいます。そして、降水効率が下がることによって雲の寿命が長くなります。その結果として、雲が太陽光とそのエネルギーを反射する効果が持続するようになり、気候システムを冷却する方向に働くだろうといわれています。
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