●エアロゾルが気候の将来予測に不確実性をもたらす
(前回お話しした)過去の気候の再現、あるいは将来予測において、温室効果ガス(の排出シナリオ)に加えて、不確実性をもたらすもう一つの要因があります。それが、「エアロゾル」と呼ばれる大気中の微粒子の効果です。
上の資料は、先ほどよりも新しく、2013年に発表されたIPCCの第5次評価報告書における、気候再現の結果です。ここには大気を加熱させる、つまり気候システムの加熱に働くといった強制が全て書いてあります。そしてその加熱のほとんどが、二酸化炭素、あるいはメタンといった温室効果ガスの増加によるものであるということが分かると思います。
一方で、図の左下にある青い部分は、気候を冷やそうとする効果を表しています。気候を冷やす効果の中で特に大きいのがエアロゾルの効果です。エアロゾルにも実は、いろいろと種類があります。後で説明するように、例えば、すすのようなものを「Black carbon」といいますが、黒いエアロゾルは逆に、太陽の放射エネルギーを吸収して大気を加熱しようとします。しかし、他のエアロゾルは気候システムを冷やす方向に働きます。
重要なのはエアロゾルと雲との相互作用で、この相互作用が気候を冷やすように働いていると考えられます。グラフにおいて横棒で示されたのは不確実性の大きさなのですが、エアロゾルによる不確実性が非常に大きいということが分かります。ですので、エアロゾルと雲が不確実性のもう一つの大きな要因になっていることが分かると思います。なお、太陽放射の活動変動からの影響はほんのわずかです。
●エアロゾルが気候にもたらす多様な影響
エアロゾルは、急激な重力落下をしないで空気中にある程度の時間滞留できる微粒子のことです。エアロゾルのサイズは非常に小さく、0.001マイクロメートルから20マイクロメートルです。0,001マイクロメートルとは1ナノメートルで、マイクロメートルとは1,000分の1ミリメートルです。エアロゾルは、それぐらいの非常に小さな微粒子です。例えばPM2.5(の2.5)というのは、エアロゾルのサイズ(2.5マイクロメートル)のことです。
エアロゾルがもし大気中にあると、「フォトン」 と呼ばれる太陽からのエネルギーを運ぶ粒(光子)の...