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近年、なぜ異常気象の連鎖が起こっているのか

異常気象と気候変動・地球温暖化(1)異常気象の背景

中村尚
東京大学 先端科学技術研究センター 教授
概要・テキスト
異常気象の原因を理解するには、地球温暖化という長期的な気候変化の傾向と、年ごとの激しい気候変動との、両方を理解する必要がある。それは、この2つの影響が重なったときに異常気象が発生するからである。(全7話中第1話)
時間:09:34
収録日:2019/03/26
追加日:2019/05/25
≪全文≫

●近年、異常気象の連鎖はなぜ起こっているのか


 皆さんこんにちは、東京大学先端科学技術研究センター(通称、先端研)の中村でございます。今回は、異常気象、気候変動、地球温暖化、これらについて詳しくお話をしてみたいと思います。

 2018年の夏、日本では西日本の豪雨、それに続く記録的な猛暑、そして台風の異常な振る舞い、特に強い勢力の台風が上陸をするといったことが続きました。こういった異常気象の連鎖によって、日本は多くの災害に見舞われました。

 その辺りは、皆さんのご記憶に新しいところだと思います。私は、気象庁の異常気象分析検討会の会長として委員の皆さんと分析をした結果、おそらくこれには地球温暖化も影響しているのではないかということで、特に西日本豪雨については初めてそういった見解を示したわけです。そのことにつきましても、この講義で詳しく解説したいと思います。


●異常気象の背景1:地球の温暖化傾向


 まず、その異常気象を考える上では、どういった変動が大気の場、あるいは気候の場に起こっているかということをきちんと理解する必要があります。上の図は、気象庁の観測による、世界と日本域における、地表の平均気温です。6月から8月の平均について、前世紀の初め、つまり1900年頃から2018年までを描いたものです。

 個々の灰色の線が各年の値になります。0という値はいわゆる平年値を示しており、1980年代、90年代、2000年代、この30年間の平均値となります。それを基準として、それより高ければ正の値、低ければ負の値になっています。そうすると明らかに分かることとして、この100年以上の間に明瞭な温暖化傾向が見られます。これは世界も、あるいは日本も共通です。

 世界で見ますと、100年で大体0.7度の温暖化の傾向があるということになります。この温暖化傾向は、図の赤い直線で示されています。もちろん個々の年にはばらつきがあります。青い線で示したのが、これは5年の移動平均値で、長期的な変動を示したものです。これを見ましても温暖化傾向は明らかですが、後ほど説明するように、温暖化のペースは必ずしも一定してはいません。

 ここで、世界と日本域における気温の変化、変動の具合を比較しますと、大きく違った様相が見えてきます。それ...
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