異常気象と気候変動・地球温暖化
この講義シリーズは第2話まで
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
21世紀末の地球の気温と降水量を予測する
異常気象と気候変動・地球温暖化(4)将来の気候シナリオ
中村尚(東京大学 先端科学技術研究センター 教授)
地球温暖化がどのように進展するかは、人間社会がどの程度温室効果ガスの排出を抑制できるかに大きく依存する。そうした中での気候科学者の役割とは、いくつかの場合に分けた気候の将来シナリオを提示して、社会が選択を行うための材料を提示することにある。地球温暖化の進展とそれによる影響には、どのようなシナリオが予測されるのだろうか。(全7話中第4話)
時間:6分36秒
収録日:2019年3月26日
追加日:2019年5月25日
≪全文≫

●気候の将来に関して複数のシナリオを示すのが科学者の役割


 今回は今までの話を踏まえて、気候の将来予測について、実際に考えてみたいと思います。

 今まで見てきたIPCCの評価報告書は、気候の将来がどうなるかというシナリオを示しているわけです。シリーズ冒頭で申し上げましたように、こういう問題提起をして社会がどのように温暖化対策を行うかによって、これから排出される温室効果ガスの量が大きく変わってきます。ですから、科学者にはこれから実際に排出される温室効果ガスの量を予見することはできません。科学者にできるのは、気候がどのように変わり得るのか、いくつかのシナリオを示して、社会に選択をしてもらう材料を提供することです。


●地球温暖化を抑制する場合と抑制しない場合のシナリオが分かれる


 上の資料の左側の図は、IPCCの第4次評価報告書のものです。これは、20世紀から21世紀まで、二酸化炭素(上段)、メタン(中段)、二酸化硫黄(下段)、この3つの物質の排出量がどうなるかを示したシナリオです。グラフの左側の黒い部分(2000年まで)は実際の観測値です。そこから先に関して排出量がどのように変わるのかは、いくつかのシナリオを用意するしかありません。

 まず、A2というグラフで示されているのは、そのままの排出が続く場合のシナリオです。二酸化硫黄の場合は大気汚染をもたらすエアロゾルですので、いずれは排出対策が執られると考えられますが、二酸化炭素やメタンの場合は、対策が十分に執られないまま引き続き増え続けるシナリオが考えられます。対して、B1というシナリオはきちんと対策がなされて排出量が抑えられた場合のものです。そして、A1Bはその中間のシナリオです。第4次報告書ではこの3つのシナリオが用意されました。第5次評価報告書でも、基本的には同じような複数のシナリオが用意されています。

 これに対して、21世紀において気温がどのように変化していくか、それを示したのが上の資料の右側の図です。温室効果気体がこれから増加しなくても、海洋を中心としてすでにシステムに蓄えられた熱が出てきますので、温暖化は急には止まりません。

 温室効果気体の増加が一番抑制されたとしても、21世紀終わりには気温が1.5度の上昇をしてしまうだろうと考えられています。もし温室効果気体の増加が抑...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「科学と技術」でまず見るべき講義シリーズ
ChatGPT~AIと人間の未来(1)ChatGPTは何ができて、何ができないか
ChatGPTは考えてない?…「AIの回答」の本質とは
西垣通
ブラックホールとは何か(1)私たちが住む銀河系
太陽系は銀河系の中で塵のように小さな存在でしかない
岡朋治
「進化」への誤解…本当は何か?(1)進化の意味と生物学としての歴史
実は生物の「進化」とは「物事が良くなる」ことではない
長谷川眞理子
性はなぜあるのか~進化生物学から見たLGBT(1)有性生殖と無性生殖
なぜ雄と雌の2つの性別があるのか…「性」の謎とLGBT
長谷川眞理子
生成AI・大規模言語モデルのしくみ(1)生成AIとは何か
10年で劇的な進歩を遂げた生成AIと日本の開発事情
岡野原大輔
ヒトの性差とジェンダー論(1)「性」とは何か
MLBのスーパースターも一代限り…生物学から迫る性の実態
長谷川眞理子

人気の講義ランキングTOP10
「アメリカの教会」でわかる米国の本質(1)アメリカはそもそも分断社会
「キリスト教は知らない」ではアメリカ市民はつとまらない
橋爪大三郎
豊臣兄弟~秀吉と秀長の実像に迫る(2)秀吉の実像と「太閤神話」
秀吉・秀長の出自は本当は…実像は従来のイメージと大違い
黒田基樹
平和の追求~哲学者たちの構想(6)EU批判とアメリカの現状
理想を具現化した国連やEUへの批判がなぜ高まっているのか
川出良枝
戦争とディール~米露外交とロシア・ウクライナ戦争の行方
「武器商人」となったアメリカ…ディール至上主義は失敗!?
東秀敏
熟睡できる環境・習慣とは(1)熟睡のための条件と認知行動療法
熟睡のために――自分にあった「理想的睡眠」の見つけ方
西野精治
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み
なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み
今井むつみ
生成AI「Round 2」への向き合い方(1)生成AI導入の現在地
生成AIの利活用に格差…世界の導入事情と日本の現状
渡辺宣彦
「重要思考」で考え、伝え、聴き、議論する(1)「重要思考」のエッセンス
重要思考とは?「一瞬で大切なことを伝える技術」を学ぶ
三谷宏治
組織心理学とは何か~『武器としての組織心理学』と概論
なぜ組織に「心理学」が必要か?多様化と個の時代の処方箋
山浦一保
逆境に対峙する哲学(1)日常性が「破れ」て思考が始まる
逆境にどう対峙するか…西洋哲学×東洋哲学で問う知的ライブ
津崎良典