人類史的な転換点における日本人の課題
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人類史的な転換点における日本人の課題
科学と技術
小宮山宏(東京大学第28代総長/株式会社三菱総合研究所 理事長/テンミニッツ・アカデミー座長)
各所で戦争が続き自国優先のはびこる世界は、一見、まことに「愚かしい」ようにも見える。だが、一方でCOP27やSDGsのような人類全体に貢献する「理性的な」活動が大きな潮流となっている。まさに「愚」と「賢」があざなえる縄のようになっているのだ。人類史的な転換期を迎えている今、一人ひとりが地球の未来のために責任を果たしていきたい。弥縫策ではいけない。日本の大きな課題は、少子化、資源自給、人財養成の3つである。過去の知を踏襲するだけではない新たな知が、今こそ必要とされているのである。
時間:10分19秒
収録日:2022年12月8日
追加日:2023年1月1日
≪全文≫

●あざなえる縄のような現状を超えて


 あけましておめでとうございます。本年もどうぞよろしくお願いいたします。テンミニッツTV座長の小宮山でございます。

 昨今の世間の情勢を見ますと、ウクライナや中東その他、何度も戦争が起こっております。また、「アメリカ・ファースト」に始まって、「ブラジル・ファースト」「イタリア・ファースト」といわんばかりの、いわば「Me First」というようなリーダーが跋扈しております。さまざまな政府がポピュリズムに流れていて、非常に暗い気分になることが多いわけですが、一方でいいこともあります。

 例えば2022年にはCOP27(第27回気候変動枠組条約締約国会議)が、今の情勢にもかかわらず破綻することなく、行われました。先進国が途上国のための基金をつくることが決まり、どこがいくら出すかという具体化まではなされませんでしたが、COP28に申し送ることになったわけです。また、「一人も取り残すことなしに」を掲げるSDGsが、かなり大きな世界の流れになってきています。

 こうした、いわば人類史的な転換期をどのようにしていくのか、という非常に大きな人間の理性的な流れと、その流れを撹乱する戦争に代表されるような愚かさがあざなえる縄のごとく、表となり裏となって進んでいるのが現状であるように私には見えます。


●現在のため、未来のために果たすべき責任


 今までの歴史もそうでしたが、今後もそのような形で進んでいくことになるかもしれません。そのときに、われわれは大きな正しい流れを見失ってはいけません。未来をつくるのは私たち人間なのですから。地球は明確に人類が変えていますし、地球の未来をつくるのは人間です。もちろん社会の未来をつくるのは人間です。

 結局、私たちの未来は私たち自身が決めるわけです。ですから、私たちは未来のために、あるいはスピードが速いですから「現在のために」といってもいいかもしれないですが、それぞれの責任を果たす必要があるのだろうと思います。

 例えば、ポリシー・メイカーである政治家の人たちには、「もっと君たち、責任をきちんと果たせ」と叱咤激励しなくてはいけない。同時に、各個人としても、たとえ80億分の1であるとしても、未来のために自分なりに貢献をすることが、非常に大事なのだろうと思います。

 私自身は、プラチナ構想ネットワークに懸命に取り組んでいます。特...

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